見直されるメールマーケティングの効果
InstagramやX、TikTokなど、SNSが発達したことで事業者から顧客への情報発信のハードルは下がった。一方、メールによるアプローチは時代遅れだと思ってはいないだろうか。『メールマーケティング 嫌われないメルマガのすべて』(エムディエヌコーポレーション/田中森士、三友直樹 著)によると、欧米ではメールマーケティングの効果が見直され始めているという。田中氏は、アルゴリズムが変わることでリーチできる顧客層も変わるなど、顧客との関係性が安定していないSNSに対し、メールは仕組みが大きく変わらず安定感があると指摘している。
ただし、メールマーケティングは比較的、成果を得るまでに時間がかかる手法だといえる。その分、顧客と長期的な関係性を築くには適している。集客や購入までに時間がかかる、継続的に商品を購入してもらう必要がある商材を扱っている事業者は、1度試す価値があるだろう。
属性と「検討行動」の把握がメール作りのコツ
興味のないメールが何度も届いてうっとうしい。メールの通知が煩わしくてメルマガの配信を停止した。誰しも、こうした経験があるはずだ。メールを受け取る顧客を理解できていなければ、的外れなコンテンツを配信してしまう。
三友氏は「性別・年代や職業といった属性データをかき集めるだけでは足りない。相手の困りごとを具体的にイメージできないからだ(P.37)」と説明する。そこで注目すべきなのが、顧客の「検討行動」だ。
一般的に単価が高く複雑なプロダクトであれば、念入りな情報収集や検討行動が発生しやすい。(中略)反対に消費財をはじめ、価格が安い上にどのブランドを買ってもあまり差がないと認知される場合であれば、検討行動はほんの一瞬で終わるかもしれない。(中略)前者の念入りな検討者が相手なら、コンテンツによるていねいな情報提供がありがたがられるかもしれないが、後者の検討者には必要とされない可能性も高い。(P.50-51)
本書は、検討行動の種類として、「念入り検討」「うきうき検討」「せっかち検討」「いやいや検討」の四つを提示。103ページ以降で、各検討者に向けたメール訴求の方法を伝えている。
そのほか、メールテキストは「お酒を飲んで酔っている相手でも理解できるくらい明確に書く(P.119)」などメール制作のノウハウ、メールの成果を計測する方法、戦略の練り方、体制作りといった、メールマーケティングに必要な要素を網羅する一冊だ。