生活者はオンオフの使い分けに疲れ始めている?
この数年で、生活者による購買行動の変化を実感しているEC事業者も多いだろう。コロナ禍がその大きな要因であることはいうまでもない。2023年は、生活者の多くがリアル回帰し、街の活気や人手も平常化しているように見える。
しかし、近年のEC需要拡大を背景に電通デジタルが実施した「EC・店頭をまたぐ購買行動実態調査2023」によると、生活者は完全にオフラインに戻ってきたわけではないという。
「2023年は生活者の購買行動に変化が起こると予測していましたが、実際には、オフラインでの購買需要が急激に増加することはありませんでした。デジタルシフトが緩やかに進み、商品の比較検討では、ECモールや企業の公式サイトなど、オンラインチャネルが活発に利用されています」(齊藤氏)
一方、注目したい購買行動の変化もある。購買のスマート化だ。
ECの浸透は、生活者の購入方法の選択肢を広げた。2022年の同調査では、24.4%の生活者が、オンラインとオフラインの両チャネルで商品の購入・検討をしていると判明した。商品カテゴリーによって、ECサイトで商品情報を閲覧してから店頭で購入する、店頭で見かけた商品をECサイトで購入するといったように、生活者によるECと実店舗の行き来が目立ったが、2023年はそれが18.5%に減少している。
齊藤氏は、「購買チャネルが増えたために、生活者の購入方法も複雑化すると考えていたが、むしろシンプル化された」と話す。たとえば、食品は店頭で確認してその場で購入するなど、商品のカテゴリー別にどこで比較検討し、購入するのかといったパターンが確立されつつあるのだ。
また、曽篠氏は「生活者の検索疲れ」を指摘する。
「現代の生活者は情報に囲まれています。『この情報はここで確認する』と決めることで、購買のスマート化を図っているのでしょう」(曽篠氏)
情報発信の手段として、SNSは非常に便利なツールだが、自社商品が認知される場所は本当にSNSなのか。自社ECのみで販売している、モールにも出店している、実店舗でも販売しているなど、事業形態は様々あるが、本調査の結果は自社商品に適したチャネルを見極める必要があると示している。