タイパとコスパでは消費目的が大きく異なる
近年、何かと注目を集める「Z世代」。彼らをターゲットにした商材・サービスを展開している企業も多いはずだ。しかし、本当にその消費行動を理解できているだろうか。
Z世代の特徴として、「タイムパフォーマンス(タイパ)」を重視する点が挙げられる。似た言葉に「コストパフォーマンス(コスパ)」があるが、『タイパの経済学』(幻冬舎新書/廣瀬涼 著)では、「コスパという概念とタイパの概念は、効用の最大化のために消費の最適解を検討するという点では大きく類似しているが、その目的は大きく異なる(P.8)」とされている。
友人同士の会話を思い出してみてほしい。Z世代でなくても、ドラマや映画、テレビ・雑誌で紹介されたスイーツなどのコンテンツが話題となっていることは少なくない。SNSが発達した現代は、会話のもととなるコンテンツが溢れている。それらすべてを細かく把握することは至難の業だ。タイパが重視される背景には、こうした環境の変化がある。
ラーメンをコスパよく食べたいという目的は、ラーメンを食べること以外では達成できない。しかし、例えば動画視聴におけるタイパの追求は「観た状態」=「そのコンテンツを媒介にコミュニケーションができる状態」になればいいだけなので、必ずしもその動画を観なくてもいいのであり、その目的を達成しうる手段の効率や費用対効果を比較することがタイムパフォーマンスの本質といえるだろう(P.110)
気を付けたい落とし穴とは?
タイパを意識するあまり、消費者の選択の幅を狭めている商品・サービスも存在する。例えば、「これだけで○○の世界がわかった気になれる」などの訴求方法をしているもの。「これだけ観ておけばあなたも映画オタク」「これだけ押さえておけばワインの世界がわかる」のようなキャッチコピーを目にしたことはないだろうか。
売り手が、「これをきっかけに自社商品に深く興味をもってもらおう」という狙いで訴求したとしても、受動的に情報と接している消費者であれば、「大体わかったからもう十分」と判断する可能性がある。
タイパを重視する心理を理解していないと、誤った訴求方法を選択してしまうかもしれない。Z世代に商品・サービスを売りたいのであれば、その特徴を売り手自身が理解しておく必要があるだろう。