社会的な信頼を得るための上場
クラダシが2023年6月30日、東京証券取引所グロース市場へ新規上場を果たした。同社のビジョンは、「日本で最もフードロスを削減する会社」。3分の1ルールによって回収された、または規格外やパッケージ変更などのために通常の販路で売られなくなった食品などを買い取り、割引価格で販売するECサイト「Kuradashi」を運営している。
3分の1ルールとは、賞味期限の3分の1を過ぎる前に商品を小売店へ卸さなければならないという食品業界の商習慣のことだ。このルールでは、賞味期限が残り3分の1を切った商品は、小売店からメーカーに返却される。そして、返却された商品の多くはこれまで、最終的に廃棄されてきた。Kuradashiには、主にこうした「ワケあり」商品が出品されている。
2014年に設立されたクラダシだが、2022年6月期の売上は20.7億円、2023年6月期は29.1億円に達した。累計パートナー企業数は1,400社、累計会員数は47.7万人と、順調に成長を続けている(2023年6月末時点)。
そんな中、同社の執行役員CTO 兼 CPOである城前圭毅氏は、「社会的な信頼を得るために3年半前から目指していた上場に踏み切った」と話す。クラダシの提供するサービスは、食品メーカーを大きく巻き込む必要がある。上場することで、まずは企業としての信頼性を高めるとともに、EC事業以外にも事業の幅を広げていくという。
「当社は、フルフィルメント事業『Kuradashi Base』、マーケティング支援を行う『Kuradashi Stores』、実店舗などオフラインチャネルの事業『Kuradashi Hub』、データを活用し商品開発や需要予測を行う『Kuradashi Forecast』の4事業の展開を考えています。これらは、基本的にKuradashiに出品しているメーカー向けのサービスです。上場で信頼を獲得し、パートナー企業が増えれば出品数も増えます。そこに4事業を展開することで、主力であるEC事業が伸びていくはずです」(城前氏)
上場をきっかけに、社会・企業・消費者の三方良しへ前進するクラダシ。とはいえ、商品を購入する側のユーザーに焦点を当てると、現状はまだまだアーリーアダプターに支えられている。事業推進本部 マーケティング部 部長の小手川大介氏は、「今はまだユーザーのフードロスに対する課題意識が低くても良い」と言い切る。
「早くからSDGsやフードロスに対する取り組みに関心を持っている消費者もいますが、ユーザー全員が同じレベルで課題意識を持っているわけではありません。最初は、『お得に安く買える』を理由にKuradashiを使ってもらっても良いと思っています。意識の高い人たちだけを集めると、ユーザーの母数はどうしても少なくなります。『ちょっと良いことをしたい』と思っている層を増やしていくことが、将来的には大きなフードロス削減につながります」(小手川氏)