口コミを信頼する消費者 UGCの活用は必至に
まず山崎氏は、UGC(User Generated Contents)が爆発的に増加した背景と、消費者の購買行動において不可欠な存在となり始めている経緯を説明した。
「UGCの増加は、インターネットやSNSの登場に加え、一般消費者がスマートフォンを手にしたことによる影響が大きい」と山崎氏。スマートフォン登場以前の消費者は、メディアや企業からの一方的な発信を、アナログメディアやパソコンなど、固定された環境から受信するのが主だった。
そこから、消費者一人ひとりが常にスマートフォンを携帯するようになり、いつでもどこでも双方向な情報のやり取りが可能になった。企業視点で言えば、マーケティング活動の活性化だ。
そして、企業よりも圧倒的に数が多い消費者が情報発信者となったことで、今やインターネット上でやり取りされるコンテンツの大半が、UGCになりつつある。
「ニュースなどの一次情報にコメントをつける二次的な情報を含め、消費者からの発信により情報量は爆発的に増えました。今では、UGCはいわゆるビッグデータのような状態になっています。その質は玉石混交ではありますが、“玉”にあたる情報を企業がいかに活用していくかが問われています」
買い物で失敗したくない消費者は、商品購入の判断の際に他の消費者によるUGC、すなわち口コミを参考にする傾向にある。ECサイトにフォーカスすれば、レビューやQ&Aがその役割を果たしている。
近年、情報の発信者に対価を支払うことで、UGCを企業にとって有利に操作しようとするステルスマーケティングの規制強化が行われている。その反響の大きさは、消費者がいかにUGCを信頼し、求めているかを示している。
UGCの有効活用には商品情報整備が欠かせない
商品と消費者をつなぐUGCについて、視点を変えれば「メタデータになり得る」と山崎氏は言う。メタデータとは、アパレルなら色やサイズ、人気度合いや価格、旅行サービスなら旅館の所在地、温泉の有無、食事といった商品を把握するための付随情報である。
「UGCを増やしてデータとして蓄積し、誹謗中傷などのネガティブなコメントを除くといった処理をすれば、有用な集合知が生まれます。その集合知を有効に活用するには、商品情報の整備が不可欠です」
商品情報の整備は、アパレルならSKUのような仕組みがよく知られている。在庫や価格など、部署をまたいで管理されているものを統合。書籍なら、出版社別に管理されていた著者情報をまたいで統合することもあり、労力のかかる作業になる。
EC商品検索・サイト内検索エンジン「ZETA SEARCH」を主力製品とするZETAでは、様々な業種・業態の商品情報を組織横断で統合し、活用できる状態に整備してきた実績を持つ。
「商品情報が整備されている前提でメタデータとしてUGCを活用すれば、消費者へさらに有益な情報の提供が可能になります」
多様に進化するUGC
「将来的には、ECサイトのコンテンツの大部分が口コミやレビューなどのUGCになる」と山崎氏は言う。企業側が掲載する正式な商品情報にUGCが大量に紐づけられ、日々蓄積・更新されるイメージだ。
「レビューなどECサイト上のUGCは、有益なオーガニックコンテンツと言えます。SEOのロジックも精緻になっていく中、日々更新されるコンテンツを保有するページの優位度は高まっていくと考えられます」
レビュー機能の活用で複数価値を持つように
有用性が示されたとはいえ、UGCは消費者が自発的に投稿するもの。企業は、投稿の促進はできても、思いのままにコントロールすることはできない。だが、昨今はレビュー機能が進化しており、一つのレビューで様々な消費者の属性確認が可能となっている。それにより、一つのUGCに複数の価値を持たせることができるのだ。
「ゴルフ製品を例に挙げると、体力のある上級者と体力に自信のない初心者とでは、同じ製品でも評価が異なります。そのため近年は、属性ごとに必要な情報が得られるよう評価軸を多様化するなど、レビューも進化しています。これにより、レビューと接したときの、消費者の属性によるギャップを軽減できます。UGCを参考にして購買行動に至った消費者のCX向上が期待できます」
インタラクティブなやり取りでCV向上につなげるQ&A
Q&AもECサイトにおけるUGCの一つだ。従来の形式では、サポートセンターの負荷を軽減するための、固定されたFAQのイメージがあるだろう。しかし、現在はQ&Aも進化を遂げている。
「Q&Aを介して回答を得られた消費者のコンバージョンは、98%増加するとのデータもあります。大手モールのレビュー欄を見ると、消費者同士の自発的なやり取りで疑問が解決されていることもあるでしょう。消費者は納得感を持って商品を購入でき、ひいては返品率の低下にもつながります」
ハッシュタグがUGCをつなぎCX向上へ
さらにハッシュタグが、レビューやQ&AなどのUGCや商品と消費者を結びつける。
「ハッシュタグを付与することで、商品とUGC、SNSへの投稿と連携しやすくなるのはもちろん、レビューから新たなハッシュタグが生まれて回遊性が高まることもあります。特にZ世代はハッシュタグの活用に慣れていますから、ハッシュタグをキーにマーケティングが有機的につながり始めています」
満足度の高い購買体験ができた消費者が、新たなUGCを生成し、別の消費者の良質な購買体験へとつなげていく。UGCをメタデータとして整備し、有機的に活用することで、CX向上のスパイラルが生まれる。
ポストCookie時代を見越しECサイトのメディア化へ
山崎氏は、「商品情報と連携したUGCを豊富に蓄積するECサイトは今後、消費者にとって有益な情報を提供するメディアになっていく」と語る。メディアとしての価値が高まれば、単に商品を販売するだけでなく、広告掲載を行うリテールメディアとしての機能を担う可能性もある。現に、eコマースの王者として知られるAmazonでは、eコマース事業とともに、リテールメディアの広告収益も大きな収入源となっている。
「ポストCookie時代には、サードパーティCookieとは別の手法で従来型の広告を配信しようとする動きもありますが、メディアが集客の窓口の一つになるとも考えられます。口コミやハッシュタグで賑わうECサイトは、眺めているだけで楽しく、買い物がしたくなるような気持ちが湧いてくるでしょう。また、UGCなどの信頼できる情報が豊富なメディアは、実店舗においても購買行動の後押しに役立ちます。実店舗で買い物する場合でも、多くの消費者がスマートフォンでUGCを検索するからです」
ECサイトのメディア化を見越して、UGC活用を取り入れている企業も増えているが、商品情報の整備が疎かになっているケースは少なくない。質の良いUGCを集め、より効果的に活用するために、まずは商品情報の整備に着手してみてはいかがだろうか。
最後に山﨑氏は、UGC活用によるCX向上など、企業を支援するためにZETAが提供しているソリューションを紹介し、セッションを締めくくった。
「EC商品検索・サイト内検索エンジン『ZETA SEARCH』は、当社の主力製品であり、国内でもトップクラスのシェアがあります。これに加えて、今、最も導入数が増加しているのが、レビュー・口コミ・Q&Aエンジンの『ZETA VOICE』です。また、ハッシュタグを使って商品と顧客との偶発的な出会いを促すハッシュタグ活用エンジン『ZETA HASHTAG』、実店舗やECサイトなどチャネルをまたいで情報を管理できるOMO・DXソリューション『ZETA CLICK』なども用意しています。興味がある方はぜひ、当社にお問い合わせください」
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