今、eコマースと切り離せない物流業界では、課題が山積みとなっています。「社会問題だ」と外野から眺めていては、流れに乗り遅れてしまうかもしれません。
特に、消費者目線でのECカートやモールにおける利便性は、改善が必要だと指摘されています。満足度の高いEC運営に直接影響するといっても過言ではありません。物流の今を知り、消費者ニーズや課題を乗り越えるための手法を考えてみましょう。
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納品遅れや運賃高騰の懸念 宅配クライシスの再来か
eコマースと非常に関わりの深い宅配便。昨今、人手不足により「宅配クライシスの再来ではないか」とささやかれています。宅配クライシスとは、物流の需要と供給のバランスが崩れ、納品の遅れや運賃の高騰を招く状態のことです。
現に運送業界では運賃の値上げが始まっており、ヤマト運輸に至っては外部環境に応じて毎年運賃の見直しを検討する意向を発表しています。
この背景には、「EC市場の拡大」と「燃料費の高騰」があります。
ここ数年の巣ごもり需要にともない、EC市場は右肩上がりに拡大してきました。2021年度の宅配便取扱個数は、49億5,323万個を記録しています。これは前年度と比較して1億1,676万個多く、約2.4%の増加を示します。
外出の機会が増えてきた2023年以降は横ばいに落ち着く可能性も耳にしますが、海外のEC市場と比較すれば日本のEC市場にはまだ発達の余地があるため、今後の伸びはやはり考慮すべきでしょう。宅配で運べる物量を増やす必要があり、対応が間に合わなければ「物流クライシス」に陥る可能性も指摘されています。
さらに追い討ちをかけているのが、燃料代の高騰です。国際情勢にともない大きく跳ね上がっているにも関わらず、ドライバーへ賃金として還元されていない実情があります。大前提として、個人宅への配送ドライバーにはガソリン代が自腹の個人事業主が多いのです。適正運賃が支払われない状況が続けば、ドライバー人材の流出や人手不足対策が手遅れになることも危惧されます。
実際に人手不足の傾向として、Amazonの配送ではドライバー1人あたりが負担する荷物量が年々増加傾向にあります。そのため、地域に根ざした自営業者が副業として近所に自転車や徒歩で配達をする「Amazon Hubデリバリーパートナープログラム」が、2022年12月に公開されました。
Amazon以外でも無人宅配ロボットの実証実験が進められたり、2022年10月には軽貨物事業における規制緩和(軽乗用車でも事業が可能に)が発表されたりと、対策が進んでいます。