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2024年8月27日(火)10:00~19:15

おさえておきたいEC・通販先進企業

「農家のコンビニ」コメリが構築する独自の多店舗展開戦略とは


 ホームセンター事業を主力とする株式会社コメリは、農村地を含む全国に業界最多の1,200店舗以上を出店しているほか、自社ECも運営しています。今回は、「農家のコンビニ」とも評価される同社の取り組みについて、事業内容やビジネスモデルと併せて解説します。

 株式会社コメリは、ホームセンター事業を主力としている企業です。全国に1,200店舗以上を展開しており、業界最多の店舗数を誇ります。また、実店舗に加えて、ECサイト「ホームセンター通販コメリドットコム」も運営しており、ネットで注文した商品を店舗取り置きサービスなども提供しています。

 この記事では、同社の事業内容やビジネスモデル、事業の強み、最近の取り組みについて解説します。

株式会社コメリの企業情報・事業内容の概要

 まずは、株式会社コメリの基本的な企業情報を確認しておきましょう。

株式会社コメリの企業情報

 株式会社コメリの基本的な企業情報は、次の表のとおりです。

社名 株式会社コメリ
本社所在地 新潟県新潟市南区清水4501-1
設立年月 1962年7月
代表者名 代表取締役社長 捧雄一郎
株式公開 東証プライム市場上場
資本金 188億200万円
おもなグループ会社
  • 北星産業株式会社
  • 株式会社ビット・エイ
  • 株式会社コメリキャピタル
  • 株式会社ムービータイム
  • 株式会社ライフコメリ  など

株式会社コメリの事業内容

 株式会社コメリのおもな事業内容は、ホームセンター事業です。そのほかの事業としては、インターネット事業やリフォーム事業、カード事業、ホームファッション事業、農業事業を行っています。

 ここでは、主力であるホームセンター事業とそのほかの事業に分けて解説します。

ホームセンター事業

 株式会社コメリの主力であるホームセンター事業では、以下4つの形態の店舗を出店しています。

  • 低価格と圧倒的な品ぞろえの「パワー」
  • 利便性を追求する「ハード&グリーン」、
  • インテリア用品の専門店「アテーナ」
  • 資材・建材・工具・金物の専門店「PRO」

 「パワー」は、豊富な品ぞろえと低価格が強みの店舗です。たとえば、他社よりも価格が高い場合、同一型番商品を他社税込価格よりも10%程度安く販売していることなどが特徴です。

 「ハード&グリーン」は、アクセスしやすい利便性を重視した店舗で、46都道府県に1,114店舗(2022年3月期)を展開しています。

 「アテーナ」は、インテリア用品に特化した形態の店舗です。オーダーメイドや家具組み立てにも対応しています。「PRO」は、職人向けに資材や建材、工具、金物を販売する専門店です。

そのほかの事業

 そのほかの事業としては、以下が挙げられます。

  • インターネット事業
  • リフォーム事業
  • カード事業
  • ホームファッション事業
  • 農業事業

 インターネット事業としては、ECサイトの「ホームセンター通販コメリドットコム」を運営しており、工具や金物、農業資材、生活用品、インテリア用品、家電など、さまざまな商品を取扱っています。ECサイトで注文し、近くの店舗に取り置きするサービスも行っています。

 ほかには、カード事業として、コメリカードやアクアカードといった会員カードを発行しています。カードの会員数は444万人(2022年3月末時点)と、多くのカード会員がいることがうかがえます。

株式会社コメリの沿革

 次の表では、株式会社コメリのおもな沿革をまとめています。

年月 沿革
1952年4月 米穀商米利商店創業
1962年7月 株式会社米利商店設立
1973年1月 株式会社米利に商号変更
1977年4月

ホームセンター事業参入

新潟県三条市に1号店となるHC三条店開店

1983年9月 新潟県新発田市にハード&グリーン1号店開店
1985年7月 株式会社コメリに商号変更
1997年9月 東京証券取引所市場第1部に指定
2000年3月 売上高 1,000億円達成
2000年4月 インターネット販売開始
2002年4月

株式会社アクア設立

アクアカード、ビジネスカード、プロカード発行

2004年8月 インターネット上に農産物や特産品を販売するコメリ産直市場開設(現:旬や米利)
2010年7月 ホームセンター業界初の1,000店舗到達

 コメリの発祥は、1952年4月の米穀商米利商店の創業にさかのぼります。その後、1962年7月に株式会社として米利商店を設立しました。1977年4月には現在の主力事業であるホームセンター事業に参入しています。

 1985年7月に株式会社コメリに商号変更してからは、1997年9月の東京証券取引所市場第1部への指定、2000年3月の売上高 1,000億円達成など、大きな発展を遂げました。

 2000年4月にはインターネット販売を開始し、実店舗だけでなくオンライン事業も展開しています。そして2010年7月にはホームセンター業界初の1,000店舗を達成するなど、コメリはホームセンター事業として国内最大級のポジションを確立しているといえるでしょう。

株式会社コメリの強みや特徴

 続いて、株式会社コメリの強みや特徴を解説します。

株式会社コメリのビジネスモデル

 株式会社コメリのビジネスモデルは、おもに以下の3点が特徴的です。

  • 専門化・標準化された店舗づくりによる多店舗展開
  • 地域特性に適した出店を行えるよう複数の店舗フォーマットを展開
  • 商社や問屋・卸売業を経由せずに自社内で商品開発から販売までを行う「マス・マーチャンダイジング・システム」を構築

 コメリは、生活に不可欠な商品を提供する標準化と農業用品などの専門商品を取りそろえる専門化を兼ね備え、これまで1,200店舗以上を展開してきました。国内最大級のホームセンター企業であることから、地域を支える社会インフラとしての役割を担うことを目指しています。

 さらなる店舗拡大を目指すために、地域特性に応じた複数の店舗フォーマットを展開していることも特徴です。メガホームセンターの「パワー」や中小規模の商圏をカバーする「ハード&グリーン」、プロニーズに特化した「PRO」など、地域に合わせた出店を行っています。

 また、商社や問屋・卸売業を経由せず、自社内で一貫して商品開発から販売までを実施する「マス・マーチャンダイジング・システム」を構築している点も、コメリならではのビジネスモデルであるといえるでしょう。

株式会社コメリの事業の強み

 株式会社コメリの事業の強みとしては、まず業界最多の店舗数が挙げられます。全国に1,200店舗以上を出店し、ホームセンター事業として日本国内屈指の地位を確立しています。

 加えて、メーカーとの直接取引や物流・情報システムの自社グループ運営による独自の流通システムを構築し、コスト効率化を実現している点も強みです。スケールメリットとコスト効率性を兼ね備えていることで、他社が参入しにくい建築資材や農業資材などの取り扱いリスクの高い商品も提供可能です。

 さらに、独自の流通システム網で低コストに農業資材を扱えることから、人口が少ない農村地への出店が可能な点も強みといえます。他社が採算性などの問題でなかなか出店できない小商圏もカバーできるため、「農家のコンビニ」との定評を獲得しているのです。

株式会社コメリの最近の取り組み

 ここでは、株式会社コメリの最近の取り組みをいくつか紹介していきます。

海外出店を加速

 株式会社コメリは海外出店を加速する方針を打ち出し、特にメコン川流域国のタイやベトナムに集中出店する予定です。将来的には3桁の店舗出店を目指しています。

 最近では、2021年6月にタイへ初出店し、2022年5月には2号店を出店しています。経済成長を続けるアジア新興国の需要拡大に対応することに加え、資材の調達先としての連携を図るものとみられます。

スマホ決済サービス「コッコPay(コッコペイ)」の提供を開始

 株式会社コメリは、2022年秋からスマホ決済サービス「コッコPay(コッコペイ)」の提供を開始しました。「コッコPay」は、コメリの会員カードである「コメリカード」やコメリの会員アプリと連動しています。コメリカードなどで貯めたポイントを利用しながら、キャッシュレスでの買い物が可能です。

 商品のお得情報やポイントサービスなどの付帯機能をコッコPayにまとめて搭載し、利用者数1,000万人(コメリカード会員数の約2倍)を目指すとのことです。

JAおきなわと農業振興連携

 株式会社コメリは、沖縄県農業協同組合(JAおきなわ、那覇市)と農業振興に関する協議を開始しました。沖縄県は、農業者の高齢化や資材価格の高騰といった課題を抱えており、農業者の利便性向上を図るために協働する構えを示しています。

 沖縄県は、コメリが47都道府県のなかで唯一店舗を出店していないエリアです。持続可能な農業支援モデルの構築を行うことで、エリアカバーも図るものとみられます。

株式会社コメリの気になるトピックス

 そのほか、株式会社コメリの気になるトピックスを取り上げていきます。

2023年1月31日:伊勢農業協同組合との協業開始のお知らせ

 株式会社コメリは、伊勢農業協同組合との間で、これまでJA購買事業の具体的な協業形態に関する協議を行ってきた。2023年2月1日より、これまで伊勢農業協同組合が取り扱っていた肥料・農薬等の農業関連商品の取り扱いを順次開始した。

2022年12月1日:コメリリフォーム オリコン顧客満足度®調査「戸建てリフォーム ホームセンター部門」3年連続で第1位を受賞いたしました。

 株式会社コメリは、お客様の住まいの困りごとを総合的に解決するため、全国1,200以上のコメリ店舗でリフォームサービスや住まいのメンテナンスサービスを受け付けできる体制を整備。その結果、2022年オリコン顧客満足度®調査 戸建てリフォーム ホームセンター部門にて、3年連続で第1位を受賞した。

2022年10月7日:長年にわたるコメリの環境保全の取り組みがグッドデザイン賞を受賞!

 株式会社コメリは、社会貢献活動の一環として緑化活動や農業支援の取り組みを行う「公益財団法人コメリ緑(みどり)育成財団」への寄付を通じ、環境保全への取り組みを支援している。この度支援活動が評価され、公益財団法人日本デザイン振興会主催の2022年度グッドデザイン賞を受賞した。

2022年2月25日:ネットで注文、店舗で商品の受け取りができるコメリの「取り置きサービス」がPayPayモール出店の「コメリドットコム」に「実店舗在庫サービス」として連携

 株式会社コメリは、ヤフー株式会社が運営するオンラインショッピングモール「PayPayモール」の「実店舗在庫サービス」を利用し、同モールに出店中の「コメリドットコム」において、取り置きサービスの提供を開始した。

2022年2月18日:ネットで注文!店舗で受け取り!「KOMERI PICK UP LOCKERS」を千葉県へ拡大します

 株式会社コメリは、店頭に設置した専用ロッカーで好きな時間にいつでも商品を受け取りできる「KOMERI PICK UP LOCKERS(コメリピックアップロッカーズ)」サービスを、2022年2月21日より千葉県内のコメリパワー四街道店、コメリパワー野田店の2店舗にて開始した。

まとめ

 株式会社コメリは、ホームセンター事業で国内最大級の規模を誇る企業です。さまざまな店舗形態を46都道府県で合計1,200店舗以上展開しています。

 また、コメリは実店舗だけでなく、ECサイト「ホームセンター通販コメリドットコム」も運営しており、ネット注文した商品を近隣店舗で取り置くことも可能です。

 コメリの強みは、業界最多の店舗数および自社独自の流通システムにあるといえます。他社が予算の関係などで出店できない農村地への出店もできるため、「農家のコンビニ」としての定評も獲得しています。

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EC研究所(イーシーケンキュウジョ)

ECについての情報を調べ、まとめてお届けします。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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