SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

ECzine Day(イーシージン・デイ)とは、ECzineが主催するカンファレンス型のイベントです。変化の激しいEC業界、この日にリアルな場にお越しいただくことで、トレンドやトピックスを効率的に短時間で網羅する機会としていただければ幸いです。

最新イベントはこちら!

ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

おさえておきたいEC・通販先進企業

DXと体制改善で巻き返しを図る三越伊勢丹ホールディングスの取り組み


 日本最大級の百貨店事業を手がける株式会社三越伊勢丹ホールディングスは、近年DX分野での活躍が著しく、既存事業の改善と新たな顧客体験の提供に注力しています。今回は、同社基本情報やビジネスモデル、DX戦略、近年の取り組みなどを紹介します。

 EC市場が活況を迎える一方、実店舗小売に依存している企業は厳しい環境にさらされており、顧客離れに歯止めをかけるのが難しい状況です。

 そんななか、株式会社三越伊勢丹ホールディングスは百貨店事業という実店舗小売業を主軸としながら同社ならではのサービスのあり方を見直し、DX(デジタルトランスフォーメーション)を敢行することで、新しい顧客体験価値の創出に成功しています。

 本記事では株式会社三越伊勢丹ホールディングスのDX施策に注目しながら、同社が掲げる次世代の百貨店戦略について紹介します。

株式会社三越伊勢丹ホールディングスの企業情報

 まずは、株式会社三越伊勢丹ホールディングスの基本的な企業情報や事業内容について、確認しておきます。

株式会社三越伊勢丹ホールディングスの企業情報

 株式会社三越伊勢丹ホールディングスの企業情報は、以下のとおりです。

社名 株式会社三越伊勢丹ホールディングス
本店所在地 東京都新宿区新宿5-16-10
設立年月日 2008年4月1日
代表者名 取締役 代表執行役社長 CEO 細谷 敏幸
株式公開 東証プライム市場上場
資本金 510億円
おもなグループ会社

株式会社三越伊勢丹
株式会社丸井三越
株式会社岩田屋三越
株式会社エムアイカード など

株式会社三越伊勢丹ホールディングスの事業内容

 三越、伊勢丹、岩田屋、丸井今井という4つののれんを有する株式会社三越伊勢丹ホールディングスの主要事業は、グループ売上高の約8割を占める百貨店業です。そのほかにも、グループ内のクレジット会社である株式会社エムアイカードや株式会社エムアイ友の会が行うクレジットカード・金融・友の会事業などを展開しています。

 また、ホールディングス全体で保有する不動産価値の維持や、リノベーション事業などを扱う不動産業も手がけています。さらに、人材派遣・紹介サービスや情報システム、物流サービス、旅行、投資など、多様な事業を展開しているグループです。

株式会社三越伊勢丹ホールディングスの沿革

 こちらの表は、株式会社三越伊勢丹ホールディングスの沿革をまとめたものです。

年月 沿革
2008年4月 株式会社三越伊勢丹ホールディングス設立
2010年11月 シンガポール伊勢丹 セラングーン店オープン
2012年5月 クアラルンプール伊勢丹 ONE UTAMA店オープン
2014年4月 三越ショッピングバッグが「実り」にリニューアル。同年9月に第32回毎日ファッション大賞「話題賞」受賞
2015年1月 三越伊勢丹グループの新しい企業メッセージ "this is japan." 発表
2016年6月 ラグジュアリーオンラインストア「NOREN NOREN ISETAN MITSUKOSHI」(現「ISETAN MITSUKOSHI LUXURY」)オープン
2018年4月 三越伊勢丹グループの目指す姿「私たちの考え方」制定
2019年10月 求人・求職者情報のオンライン提供を行う(株)ワンデイワーク設立
2020年6月 三越伊勢丹オンラインストア・三越伊勢丹アプリ公開
2021年9月 中国・天津にショッピングミュージアム「仁恒伊勢丹(A館)」グランドオープン

 ホールディングスとしての歴史はまだ20年にも満たないものの、三越をはじめとする各百貨店ブランドの歴史をひも解くと、その創業は300年以上も前にさかのぼります。

 2015年頃までは店舗主体の海外展開を進めてきた同社ですが、2016年のラグジュアリーオンラインストアの開設など、デジタルを使った新しい取り組みにも着手してきました。新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年には、三越伊勢丹の公式オンラインストアとアプリを開設し、本格的なデジタル進出が進んでいます。

株式会社三越伊勢丹ホールディングスのビジネスモデルとDX戦略

 株式会社三越伊勢丹ホールディングスは、全国の百貨店を主軸とした強力なブランド力を有していますが、これを活かしたビジネスモデルの確立や、巧みなDX戦略を展開することで、顧客体験価値の向上に努めています。

ビジネスモデル

 近年、株式会社三越伊勢丹ホールディングスが力を入れているのが、デジタルを活用したリモートショッピングやパーソナルサービスといった、新しい顧客体験の提供です。

 スマートフォンを通じて店舗スタッフの丁寧な接客が受けられる独自のサービスは、従来の常連顧客はもちろん、これまで百貨店のサービスを利用したことがなかった人の関心も呼ぶ新規性の高いサービスといえます。

 ただ接客を受けるだけでなく決済までワンストップで行える利便性の高さと、一般的なECサイトとは異なる実店舗を活かした購買体験を強みとしており、さらなる集客につなげています。

 また、ぴったりの一足が見つかるサービス「YourFIT365」では、一度靴のサイズを計測すればアプリ内にサイズが記録されるので、オンライン・実店舗を問わずシームレスな購入体験が可能です。店頭ではシューカウンセラーなどの専門家が顧客データやニーズに基づいて最適な一足を選び出すなど、百貨店ならではのサービス提供につなげています。

DX戦略

 株式会社三越伊勢丹ホールディングスでは、次の3つのコンセプトを軸に積極的なデジタル活用が進んでいます。

  1. 自社の業態・自社の特性を改めて明文化する
  2. 自社の特性・強みをベースにして顧客への提供価値を再定義する
  3. 価値提供を成り立たせる、抜本的な仕事のやり方を変更する

 単にデジタルを取り入れるのではなく、同社の得意領域である店舗、人、商品の存在が最大限に活かせるデジタル施策を企画することで、効率良く成功率の高いプロジェクトの遂行を実現させています。

 たとえば、三越と伊勢丹のECサイトを統合させることで、オンライン上でも三越のおもてなしと伊勢丹の商品提案力を融合させ、より質の高い顧客体験を提供しています。

 また、従来のオフライン業務を主体とした事業形態に依存するのではなく、オンラインサービスを踏まえた抜本的な社内体制の改革にも力を入れています。具体的には、現場が課題を調査し、EC運営やシステム管理を担う部門とスピード感を持って連携するなど、各部門が一体となって開発を進めることで、日々顧客体験を向上させています。

 得意なことだけに依存せず、時代に沿った正しい価値を提供することを大切にし、創造性を持ってDXに取り組んでいる企業といえるでしょう。

近年の大きな取り組み

 ここでは、株式会社三越伊勢丹ホールディングスが手がけた近年の大きな取り組みについて紹介します。

伊勢丹新宿店の全商品をネットで接客・販売

 旗艦店である伊勢丹新宿店の商品のネット販売も進んでおり、2021年には100万点の品揃えを達成することを目標に、2020年より同企画が実施されています。

 専用アプリを通じてスタッフによる丁寧な接客や商品のレコメンドを受けられるなど、オンライン上での顧客体験の付加価値提供に努めています。

新宿・日本橋の再開発に着手

 2021年6月、株式会社三越伊勢丹ホールディングスは同社の旗艦店である伊勢丹新宿店と日本橋三越本店の再開発に着手することを発表しました。

 店舗そのものだけでなく、店舗周辺で保有する不動産を含めた一体開発を視野に入れており、東京を代表する2つの商業施設を核とする、新しい街づくりを進めていくとしています。

 両店の合計売上は三越伊勢丹の百貨店事業の約4割を占めているものの、インバウンド需要の消失や消費者のアパレル離れからその損失を現状で埋めることは難しく、再開発によって再集客をかけることが狙いです。

ブランドとの協業でD2C支援の事業を本格化

 百貨店の革新的な取り組みは都心部だけでなく、地方活性化にも影響を与えています。三越銀座店では2022年3月より、山口県山陽小野田市のブランド化事業を受託し、同市ブランドの情報発信やECでの販売を開始しています。

 知名度が課題となりがちな地方のブランドが三越伊勢丹グループという伝統ある大手企業とコラボレーションすることにより、ブランドの再解釈や価値の発見などにつながることが期待されています。

 店舗では期間限定で出店ブースを用意し、リアルの場で消費者との接点を提供するなどして、ブランドの支援に取り組んでいます。

目を通しておきたい株式会社三越伊勢丹ホールディングスのトピックス

 最後に、株式会社三越伊勢丹ホールディングスの近年の気になるトピックスについても紹介します。

2022年11月30日:三越銀座店・スタジオアルタxソニーグループのフロンテッジ・SoVeCが協業、XRを活用した新たな広告事業「GINZA XR Media」をリリース

三越伊勢丹の三越銀座店は、スタジオアルタ、フロンテッジ、SoVeCと協業し、XRを活用した新たな広告事業「GINZAXR Media」をリリースした。

2022年10月19日:フィリピン・マニラでの大型複合開発プロジェクトにおける商業施設『MITSUKOSHI BGC』2022年11月18日(金)先行オープン 〜三越伊勢丹グループの商業施設がフィリピンで初開業〜

三越伊勢丹ホールディングスと野村不動産は、フィリピン・マニラに商業施設である「MITSUKOSHI BGC」を2022年11月18日(金)に先行オープンした。なお、同施設のグランドオープンは2023年春頃を予定している。

2022年10月3日:三越伊勢丹が運営するデジタルベース「ISETAN STUDIO」が、BtoB向け撮影サービスをスタートしています

三越伊勢丹が運営するデジタルベース「ISETAN STUDIO」が、新たにBtoB向けの撮影サービスをスタートした。

2022年09月01日:大手百貨店/8月売上高5社そろって大幅増、高級品・衣料品が好調

三越伊勢丹ホールディングスは9月1日、8月の売上速報を発表、国内百貨店計は前年同月比46.5%増となった。

2022年6月16日:西友や三越伊勢丹、非正規の待遇改善 人手不足に危機感

小売各社で非正規社員の待遇を改善する動きが広がっており、三越伊勢丹ホールディングスは正社員と同様の扶養家族手当を一部グループ企業で導入した。

2022年5月17日:三越伊勢丹HDのEC売上は372億円で18.1%増(2022年3月期)、3年後は600億円の計画

三越伊勢丹ホールディングスの2022年3月期のEC売上は前期比18.1%増の372億円となった。

まとめ

 株式会社三越伊勢丹ホールディングスは、百貨店事業という実店舗小売の代表格ともいえるビジネスを展開していますが、新型コロナウイルス感染拡大以降は本格的なデジタル活用にも着手してきました。

 DXの必要性を自社の立場から的確に解釈し、創造性を持って自社の強みを活かせる戦略を模索することで、時代の波に取り残されたり振り回されたりすることなく、確かな顧客体験の創造を実現しています。

 コロナ前と比較して実店舗の客数が少ない機会を活かして、社内体制の改革やデジタル部門への注力、多様な事業展開などを進めていることからも、時代に柔軟に対応している企業といえるでしょう。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
おさえておきたいEC・通販先進企業連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

EC研究所(イーシーケンキュウジョ)

ECについての情報を調べ、まとめてお届けします。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事をシェア

ECzine(イーシージン)
https://eczine.jp/article/detail/11900 2023/03/09 16:24

Special Contents

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

ECzine Day(イーシージン・デイ)とは、ECzineが主催するカンファレンス型のイベントです。変化の激しいEC業界、この日にリアルな場にお越しいただくことで、トレンドやトピックスを効率的に短時間で網羅する機会としていただければ幸いです。

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング