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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

おさえておきたいEC・通販先進企業

通信販売とスポーツ事業の両輪で進化し続けるジャパネットの経営戦略


 「ジャパネットたかた」でおなじみの株式会社ジャパネットホールディングスは、今や通信販売事業に限らず、スポーツ事業にも参入し、影響力を拡大しています。今回は、株式会社ジャパネットホールディングスの事業の強みやビジネスモデル、近年の取り組みなどを紹介します。

 テレビ通販「ジャパネットたかた」を通じて知名度を上げた株式会社ジャパネットホールディングスは、通信販売の現場がECに移った今でも、確かな存在感を発揮しています。

 今回はそんな同社がいかにして顧客を獲得し、高い水準で業績を維持しているのかについて、近年の取り組みなどを参考にしながら解説します。

株式会社ジャパネットホールディングスの企業情報と事業内容

 まずは、株式会社ジャパネットホールディングスの基本的な情報やおもな事業内容について確認しましょう。

株式会社ジャパネットホールディングスの企業情報

 株式会社ジャパネットホールディングスの基本的な企業情報は、次のとおりです。

社名

株式会社ジャパネットたかた

本社所在地 長崎県佐世保市日宇町2781
設立年月日 1986年1月16日
代表者名 代表取締役社長 髙田 旭人
株式公開 非上場
資本金 3億円
おもなグループ会社

株式会社ジャパネットたかた
株式会社ジャパネットサービスイノベーション
株式会社ジャパネットメディアエージェンシー など

通信販売事業

 株式会社ジャパネットホールディングスは、通信販売事業をおもな事業として手がけています。事業展開においては、以下に則ったサービス展開を軸に、単なる通信販売にとどまらないサービスの提供を実現しています。

  • 良いモノを選び抜く
  • 伝わるように伝える
  • 渾身のアフターサービス

 同社は「仕入れからアフターサービスまで責任を持ち、自信を持ってお客様に商品を薦められるか」という精神に基づいて商品を選定し、幅広い媒体を複合的に活用して多くのお客様に商品を伝えることをモットーとしています。

 また、1日あたり100件以上の修理業務を担い、フィードバックをメーカーに伝えるなど、メーカーとともに商品開発に取り組む姿勢も同社の特徴といえるでしょう。

スポーツ・地域創生事業

 株式会社ジャパネットホールディングスは、通信販売事業だけでなく、スポーツビジネスを主軸とする地域創生事業にも積極的に取り組んでいます。

 本社所在地である長崎県をホームタウンとするプロサッカーチーム「V・ファーレン長崎」の運営と、スタジアムを中心としたまちづくりを行う「長崎スタジアムシティプロジェクト」の2つの地域密着型事業を手がけています。

 ビジネスと感動の両立を実現すべく、通販事業で培った「徹底したお客様想像力」をスポーツの領域で存分に発揮しています。

株式会社ジャパネットホールディングスの沿革

 続いて、株式会社ジャパネットホールディングスの沿革を確認していきましょう。これまでの同社の歩みを、次にまとめています。

年月 沿革
1986年1月

たかたカメラグループより分離独立し、株式会社たかたを設立
カメラ店ソニーショップとして事業展開

1990年3月

NBC長崎放送で第1回ラジオショッピング開始
通販事業開始

1994年6月 30分深夜番組「ジャパネットたかたテレビショッピング」でテレビショッピング事業開始
1999年5月 社名を「株式会社たかた」から「株式会社ジャパネットたかた」に変更
2001年3月

CSデジタル放送「スカイパーフェクTV!」に専門チャンネル「ジャパネットスタジオ242」を開局
生放送など全国放送開始

2005年12月 インターネット専用の生放送ショッピング「WEBスタ!」開始
2007年6月

株式会社ジャパネットホールディングス設立
株式会社ジャパネットたかたを完全子会社化

2010年7月 営業の拠点としてスタジオを兼ねた東京事務所を開設
2011年4月 スマートフォンショッピングサイト開設
2017年5月 V・ファーレン長崎をグループ会社化
2020年9月 長崎初プロバスケットボールクラブ立ち上げのためのBリーグ参入準備株式会社(現:株式会社長崎ヴェルカ)設立

 元々はカメラ販売店だった本社から独立する形でスタートした株式会社ジャパネットホールディングスですが、1990年のラジオ通販の開始以降、事業は軌道に乗ることとなります。深夜のテレビ通販番組にはじまり、衛星放送経由で全国的な通販会社として知名度を上げていきました。

 また、2010年代からは関東を中心に全国展開を進めるとともに、2010年代後半以降はスポーツビジネスを通じて地域活性化事業にも着手するなど、両輪での経営が進みました。

株式会社ジャパネットホールディングスの強みや特徴

 株式会社ジャパネットホールディングスが一大通販事業者となった背景には、他社の追随を許さないビジネスモデルと事業の強みがあることが挙げられます。

厳選集中

 現在、株式会社ジャパネットホールディングスは通販事業の主戦場ともいえるEC市場に力を入れていますが、同社のEC戦略を支えているのが「厳選集中」です。

 顧客が本当に求めている商品だけを提供することで、需要のない商品の展開にかかるコストを大幅に削減することに成功しているだけでなく、売上の向上も実現しました。

 また、一度に取り扱う商品数は777点までと上限を設け、売上が一定の基準に満たないものや、顧客からのレビュー評価の低いものを定期的にチェックし、ラインナップのアップデートを行っています。

自前主義

 自前主義は、商品企画からアフターフォローまで、全ての責任を自社で負うという覚悟を持ち、ホールディングス全体であらゆるサービスをカバーするものです。

 他社に業務委託することなく、最大限ホールディングス内で完結させることにより、品質の向上に努めます。

徹底したお客様想像力

 徹底したお客様想像力とは、常にお客様に感動を届けるための想像力をフル回転させる取り組みです。

 顧客第一のマインドセットからもたらされるものは大きく、 分割金利手数料負担やセット販売、下取りサービスなど、数々の話題と評判を呼んだサービスを企画・実現してきました。その結果、長年利用してもらえるリピーターだけでなく、新規顧客の獲得にもつなげています。

チャネルミックス

 テレビやラジオ、インターネットと発信媒体を問わず、お客様との接点をさまざまな形で持つ「チャネルミックス」も同社の強みです。

 テレビ通販のイメージが強い同社ですが、マスメディアのネットワークに依存しない、幅広いチャネルに対応する姿勢は、ECにおける成果にもつながっています。

近年の大きな取り組み

 強い成長意欲がうかがえる株式会社ジャパネットホールディングスは、ここ数年だけでもさまざまなプロジェクトに着手しています。

スターフライヤーと資本業務提携

 株式会社ジャパネットホールディングスは、2022年8月に航空会社の株式会社スターフライヤーとともに、機内エンターテインメントサービスや物販事業、旅行事業での連携強化などを目的とした、資本業務提携を発表しました。

 ジャパネットの通販事業認知度拡大効果はもちろんのこと、スターフライヤーにとっても新たな顧客体験創出のきっかけになるとして期待が寄せられています。

「BSJapanext」の開局

 株式会社ジャパネットホールディングスのグループ会社「株式会社ジャパネットブロードキャスティング」は、2022年3月に独自の衛星放送を開局しました。

 「BSJapanext」と名付けられた同放送局は、通販番組だけでなく、クイズ番組「パネルクイズ アタック25 Next」の放映も進めるなどして、5つのスタジオとロボットカメラを導入し、多様なコンテンツの放映を予定しています。

ジャパネット「生産者応援プロジェクト」開始

 株式会社ジャパネットたかたは、新型コロナウイルスによる極端な生産者売上の低下を受け、2020年4月に生産者から直接商品を買い上げ、テレビショッピングなどを通じて販売を行う「生産者応援プロジェクト」を推進しています。

 第1回目では三重県産の「養殖マダイ」「松坂牛」「熊野地鶏」を全国ネットで紹介し、消費の急速な減退による市場への悪影響を食い止める役割を果たしました。

 新型コロナウイルスを単に悲劇と捉えるのではなく、新しい商品との出会いの場と考え、視聴者に感動を与えながら、生産者への還元も行う取り組みといえるでしょう。

目を通しておきたい株式会社ジャパネットホールディングスのトピックス

 株式会社ジャパネットホールディングスに関連する、目を通しておきたいトピックスを紹介します。

2024年2月2日:ジャパネットアメリカ設立と旅行販売開始のお知らせ

 ジャパネットホールディングスは、米国での旅行販売、長崎スタジアムシティのスポンサー営業・イベント誘致を担う会社として「Japanet America Inc.(ジャパネットアメリカ)」を設立した。同社は、日本周遊クルーズ旅行の取り扱いや「長崎スタジアムシティ」への海外向けスポンサー営業やイベントの誘致活動も実施する。

2023年9月21日:ジャパネットたかた、専任チームを立ち上げ新グルメ通販ブランド「たべる。ジャパネット」始動へ

 ジャパネットたかたは、通信販売事業において食品専任バイヤーが選び抜いた全国各地のグルメや健康食品、ウォーターサーバーなどを取り扱う新ブランド「たべる。ジャパネット」の展開を開始した。

2023年2月27日:ジャパネットとスターフライヤーが機内販売提携開始~機内での通信販売サービスをスタート~

 スターフライヤーとジャパネットホールディングスは、スターフライヤーが運航する国内5路線全便で、機内販売システムをフルリニューアルした。業務提携したジャパネットが独自開発した機内販売システムによりモバイルオーダー化し、販売商品の選定から配送までを連携して運営する。

2023年1月27日:体験価値の最大化を目指し、自社開発のICTソリューションを展開開始

ジャパネットホールディングスのグループ会社で新規サービス事業を担うジャパネットサービスイノベーションは、長崎スタジアムシティプロジェクトでのさらなる顧客体験の向上を目的としたICTソリューションを自社開発した。

2022年12月21日:スクラムベンチャーズ設立のファンドに約6.5億円出資

ジャパネットホールディングスは、米国シリコンバレーを拠点にグローバルに投資活動を展開し、スタートアップに投資を行うスクラムベンチャーズが組成したベンチャーキャピタルファンド「Scrum Sports and Entertainment Fund I」に、約6.5億円の出資をすることが決定したことを発表した。

2022年12月19日:ジャパネットとソフトバンクが長崎スタジアムシティプロジェクトで連携

ジャパネットホールディングスとソフトバンクは、ジャパネットグループが2024年の開業を目指してスタジアムを中心とした複合施設の開発に取り組む「長崎スタジアムシティプロジェクト」において、ICT(情報通信技術)領域で連携することを発表した。

2022年8月26日:スターフライヤー、ジャパネット 資本業務提携のお知らせ ~航空業界における新たなサービス・付加価値を創造

スターフライヤーとジャパネットホールディングスは、機内エンターテインメントサービス・物販事業・旅行事業における連携強化等を目的とした資本業務提携を行うことを2022年8月26日(金)に決定した。

2022年8月3日:ジャパネットグループが完全キャッシュレス化の街を実現!大型複合施設「長崎スタジアムシティ」に導入【EC NOW】

ジャパネットホールディングスは、2024年9月に長崎市で開業予定のスタジアムやアリーナ、商業施設などが入る大型複合施設「長崎スタジアムシティ」において、かねてより進めていた「長崎キャッシュレスプロジェクト」を本格導入する。

2022年7月11日:長崎スタジアムシティに大学院 長崎大学、情報科学分野

ジャパネットホールディングスと長崎大学は、サッカー場を核とした複合施設「長崎スタジアムシティ」(長崎市)のオフィス棟に、同大学の大学院が入居すると発表した。

2022年2月9日:ジャパネット、カンパニー制を導入 スポーツ部門強化

ジャパネットホールディングスの高田旭人社長兼最高経営責任者(CEO)は、カンパニー制を3月に導入することを発表した。

2021年9月24日:ジャパネットたかたライブコマース展開開始のお知らせ 視聴者と生産者をつなぐ天の声として、西川貴教さん・藤本美貴さん・山中秀樹さんが登場

ジャパネットたかたは、2021年9月27日(月)より視聴者がリアルタイムでショッピングに参加できるライブコマースを本格展開する。

2021年5月20日:ジャパネット、「ふるさと納税」の展開開始 ~ふるさと納税をわかりやすく伝える番組も自社制作~

ジャパネットホールディングスのグループ会社で、新規サービス事業などを行うジャパネットサービスイノベーションは、ふるさと納税の展開を開始した

2020年11月12日:東京オフィスの一部機能を福岡に移転

ジャパネットホールディングスは12日、福岡市天神に新拠点を設け、都内のオフィスからグループ経営機能の一部を移転すると発表した。

まとめ

 株式会社ジャパネットホールディングスは、通販事業のパイオニアとも呼ばれる存在として一躍有名になった企業です。テレビ通販が下火になるなか、EC事業への積極展開やスポーツ事業への参入を進めるなど、高い成長意欲を抱き続けています。

 2022年には独自のBS放送も開始し、通販番組にとどまらないコンテンツ発信に力を入れるとともに、地域密着型事業も本格化してきました。

 マルチチャネルの実現や商品を見抜く審美眼、お客様ファーストの理念を武器に、同社は顧客満足の追求を続けています。

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この記事の著者

EC研究所(イーシーケンキュウジョ)

ECについての情報を調べ、まとめてお届けします。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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