記録的な円安が続く2022年秋。こうした時代背景を踏まえ、昨今の海外顧客は日本製品に熱い視線を注いでいます。これまでの日本製品は品質の高さや安全性について高い信頼度を獲得する一方で、越境ECで商品購入する際の国際配送料が高く、結果的に購入価格が高くなってしまうことが企業・ブランド、顧客双方にとってハードルとなっていました。
しかし、現在の円安は越境ECの利用者目線で言えば、欲しかった商品が常にセールになっている状況です。こうした背景から購入者の増加につながっており、日本の企業・ブランドにとっては越境ECに取り組む好機と言えるでしょう。本連載「一歩踏み込んで掴むオンライン海外市場」、連載11回めとなる今回は越境ECに取り組む寝具の老舗メーカー 西川株式会社のShopeeマレーシア出店および、通販サイト「西川公式オンラインショップ」の事例をご紹介します。
自社ECの越境化で既存顧客のニーズに対応 新規開拓はShopeeで
同社は、布団や枕、シーツなど睡眠にかかわるあらゆる寝具を揃え、456年の歴史を持つ老舗寝具メーカーです。現在は、前出のようにShopeeマレーシアへの出品と西川公式オンラインショップの越境EC対応というふたつの方法で越境ECに取り組んでいます。
同社では、コロナ禍以前より「海外へ商品を送ってほしい」というご要望を来店した訪日顧客からいただいていました。そこで、顧客のニーズにお応えするために西川公式オンラインショップとBuyee Connectとの連携、自社ECの越境対応を実現。Buyee Connect連携は、すでに「西川」というブランドや商品の魅力を知っている海外顧客の要望を叶えるだけでなく、インバウンド需要のオンライン化に対応するものと言えます。また、入国制限の緩和とともにインバウンド需要が回復した際に、すでに訪日後の「リピート買い」を可能にする環境が整っている状況とも言えます。
加えて西川は、Shopeeマレーシアへの出店も行っています。同社はかつてマレーシアで実店舗を運営していましたが、出店していた商業施設の閉館にともない実店舗もクローズ。しかし、店舗運営時にマレーシアの人々の国民性や習慣、ターゲット層などの知見や情報を十分に蓄積していたこと、マレーシアには日本製品が好きな顧客が多いことを鑑みて、現地代理店や倉庫の確保、在庫リスクを負う必要のない越境ECでのマレーシア再進出を決めました。
自社ECの越境化は、すでに認知のある顧客の購入窓口を広げることにつながりますが、新規でマーケットプレイスに進出して成功を収めるには、現地での認知獲得が必須です。商品を実際に試す場がない中で、いかに商品価値を伝えるかが課題となりました。