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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

ECホットトピックス

ECサイトの離脱に伴う機会損失の防ぎ方


 ECサイトの運営において、「ECサイトで本来購入してくれるはずのユーザーが、購入にいたらなかったこと」(機会損失)をどの程度考慮しているでしょうか。機会損失が発生することが好ましくないのは誰もが理解していることですが、現実にはサイトを訪問したユーザーが、何らかの理由で購入にはいたらず機会損失が発生しているケースは少なくありません。こうした機会損失を減少させたり、回避したりする手立てはあるのでしょうか。本コラムでは、長年EC決済サービスに携わってきた筆者の知見をもとに、機会損失の発生しやすい「決済」というステップにスポットライトを当てて、不正対策を講じながら、正当なユーザーによる売上を増加させる重要性を前編・後編の2回にわたって解説します。

サイト訪問から決済まで、機会損失を防ぐために着目すべきポイント

 EC事業者がコンバージョンにおいて着目すべきポイントは、一般的に次の4ステップだと言われています。

①サイト集客
②商品ページ
③カート(買い物かご)
④決済

 このステップは、サイトを訪れたユーザーが購入までに辿る道のりに従っています。これら4ステップのどこで機会損失が発生しているかを確認し、それぞれを最適化していくことが、コンバージョンを高めることにつながります。

 EC事業者の多くは、①サイト集客や、②商品ページのステップでは、マーケティング担当者や商品担当者などの専任担当者を置き、機会損失が起こらないよう目を光らせています。これらのステップでは、コンバージョンを高めるための施策は多岐にわたり、効果検証のフローが確立されていることが多いはずです。ウェブ接客ツールやカスタマーエンゲージメントツール、プッシュ通知サービスなどの外部ツールを駆使して、より多くのユーザーとエンゲージメントを高めようとしているのもその一例です。サイト集客や商品ページには人材面でも、資金面でも十分な投資を行い、機会損失を回避してコンバージョンを高める取り組みが積極的に進められています。

見落としがちなカートや決済における機会損失

 一方で見落としがちなのが、③カート(買い物かご)や、④決済のステップにおけるユーザーの離脱です。これらのステップではそもそもコンバージョンを高めるための施策を実施していなかったり、専任担当者を置いていなかったりするケースも見られ、①サイト集客や、②商品ページに比べるとPDCAを検証していないケースが見受けられます。多くの場合、①サイト集客や、②商品ページは積極的に取り組む一方で、③カートや④決済のステップの対策を後回しにしている傾向があります。

 デジタルマーケティングを駆使してサイトにユーザーを集め、せっかく良い商品の見せ方を工夫しても、④決済という最後のステップで離脱してしまうのは本当にもったいないことです。

 イー・エージェンシーの調査によると、カートに商品を入れたのに購入に至らない、いわゆる「カゴ落ち」の金額は実際の売上の2.5倍を記録するというデータも出ています。つまり、④決済のステップでどれぐらいユーザーが離脱し、あるいはコンバージョンを行っているのかについてしっかりチェックし、適切な対策を講じることで、全体のコンバージョンを高められる可能性が高いのです。

決済時にユーザーが離脱する深刻な理由

 ユーザーが③カート(買い物かご)、④決済のステップで離脱してしまう理由として考えられるのは、「会員登録を求められた」「送料が高く予想外に合計金額が高くなってしまった」「入力項目の多さや配送の遅さを感じた」ことがあげられます。入力に失敗した際に、再度1から入力させるサイトも少なくありません。また、利用したい決済オプション(決済手段)が用意されていないという理由で購入を諦めてしまうケースが多いのも実情です。

 SBペイメントサービスが実施したアンケート調査によると、普段よく利用する決済オプション(決済手段)を選択できない場合、60%以上がECサイトから離脱し、別のサイトで購入するという結果も出ています。「自分の持っているカードブランドがECサイトで使えない」「コンビニ支払いに対応していない」などの理由で、決済のステップまで進んだのに購入を諦めるといった話をよく聞きます。

 せっかくカートに商品を入れたユーザーがこのステップで離脱してしまうと、コンバージョンが悪くなってしまうばかりか、ユーザー体験を損ない、今回の購入だけでなく次回以降の購入にも悪い影響を及ぼしてしまいます。商品を見つけてくれた利用者に最後までどうストレス無く購入まで到達してもらうか。それがユーザー体験の維持・向上にも、コンバージョンを高めることにも効果的に働くといえます。

 にも関わらず、サイト集客や商品ページ改善に比べて、決済のステップに投資するEC事業者が少ないのはなぜでしょうか。そのひとつの理由としては、離脱率や機会損失額などのデータが取りづらいことがあげられます。サイト訪問者や購入金額、購入率などを計測するツールは充実していますが、決済ステップの成果を計測するツールがほとんどなかったり、予測しづらかったりという課題があります。

決済への投資はコンバージョンを左右する

 しかし、近年では決済の認知も高まっており、決済オプションを簡単に拡充できる事業者や、個人情報の入力を簡略化できるウォレット決済などの登場によって利便性も高まってきました。集客のためのマーケティングや広告宣伝に投資する以上に、ユーザーの離脱や機会損失を回避する方が、費用対効果が高いケースもあります。それは必要な決済手段を用意する、入力項目を減らす、など機会損失のボトルネックとなっている部分が明確で改善しやすいからです。

 いくらサイト訪問者が増えても、最終的には決済のステップをクリアしてこそコンバージョンは成立します。決済のステップに進んだユーザーは、すでに「購入する意思決定をした」ということに他なりません。せっかく購入の意思決定をしたユーザーが離脱するのは、非常にもったいないことです。最後の決済ステップでコンバージョン率は大きく左右されるため、決済については可能な限り摩擦を避け、購入の意思決定をしたユーザーを取りこぼさない様、なめらかなUXを提供することが重要です。

 したがって、ECサイトのコンバージョンアップのためには、ファネル上流にあたるサイト訪問や商品ページのステップへの投資のみならず、決済のステップにも適切に投資して、最適化されているかしっかりチェックすることが肝要です。これについては、後編で国内事例を交えながら詳しく説明します。 

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この記事の著者

Forter 日本担当カントリーマネージャー 野田陽介(ノダヨウスケ)

日本担当カントリーマネージャーとしてForterに入社。Forterの日本事業を拡大すべく、市場開拓戦略を推進。これまでエンタープライズ向けセールスを15年以上経験しており、決済や小売業の分野で幅広い知識を持つ。前職は、PayPalにてエンタープライズセールスチームを率い、事業成長をけん引。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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