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2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

[ECzine Press Summer 2022]CXのプロ3社に聞く!DX時代のCX(AD)

DX時代のCX第一歩は顧客の声を集めて統合し、活用すること

 消費者によるデジタルチャネルの活用機会に寄り添うといっても、場当たり的にデジタルチャネルを増やしても顧客満足度は上がらない。危機感を持ちながらも全体的な戦略を持ってDX、そしてCXを成功に導くには何から始めれば良いのか。アビームコンサルティング 竹谷伸一氏に話を聞いた。

CXのためのDXとCXを創出するEXのためのDX

━━企業のデジタル化が進む中で、CX(Customer Experience)領域での改革が注目されています。とくに全社的にDXが進んでいる中で、求められているCX対策とは、どのようなものでしょうか。

 私は、コンサルテーションやITデリバリーを提供するサービス部門でCRM領域を担当し、コールセンターの改革に取り組んできました。当社ではDXの取り組みのひとつとして「CX X(CX Transformation)」を示しているところです。従前からCXに関しては実にさまざまな解釈があり、「顧客との接点を、どのようなチャネルでどのようにもつか」という考えのもと施策に取り組んできましたが、ここ数年でDXに対応する部分を切り出して、一気にイノベーションをかけていこうとしているわけです。

 背景には、社会の大きな変化があります。従来型の一例として「テレビで集客し電話番号を表示してコールセンターで注文を受け、その後はカタログで……」というように、一定の動線が決まっており、各ポイントについて最適化を行えばよかった。それが、インターネット、さらにはスマートフォンが普及して、誰もが、いつでもどこからでも容易に情報を得ることができ、しかもSNSや広告などあらゆるメディアでプッシュされるようになりました。企業側でもインターネット事業部などを組織してECサイトの構築やウェブ広告の配信など、顧客接点ではデジタル化が進んでいます。

 しかし、企業の業務プロセスでは、商品の受注から在庫確認、発注や仕入れなどアナログのままのところが多く、エンドツーエンドのデジタル化には至っていません。

 デジタルチャネルから注文が来ても、バックヤードがアナログのままでは効率が悪く、顧客体験を大きく損ねるボトルネックになっている。これでは折角のECサイトも台無しです。さらに、インターネットでグローバルに商圏が広がってもリソース面において制約が生じたまま多くの課題を抱えることになります。昨今の人材不足なども相待って、アナログなバックヤードはすでにボトルネックになっているというのが企業の実状だと思います。そこを抜本的にエンドツーエンドで変えていこうというのが、「DX時代のCX」というわけです。

 その象徴と言えるのが「ECによる小売改革」で、デジタル前提で注文口から届け先まで最適化を図り、ロボットやAIなどの最新テクノロジーも貪欲に導入しています。これはひとつのモデルです。皆さんもご経験のとおり、顧客体験は以前のものとは異なるものへの変わってきています。たとえば店舗はショールームになり、デジタル上の接点も単に情報やコンテンツを出すだけではなく、さまざまな仕掛けを作って集客し、体験を提供する場になってきています。

 またCXに限った話ではなく、事業を支える側の従業員についても同様のことが言えます。「人材不足」にある環境の中、企業が優位性を維持・向上し続けるには、働きがいのある環境が担保されていなければ、ビジネスそのものが成り立たない。顧客を理解するDX人材が居心地良く働き続けるためのインセンティブが必要です。そのための快適さ、効率性、生産性の向上のためのDX時代のEXも検討が必要です。

 こうしたCX(Customer Experience)そしてEXのために、全体的にアプローチしていこうというのが、私たちが目指しているDXであり、そのひとつがCX(Customer Transformation)と位置づけています。

顧客の声に耳を傾け有効なチャネルを統合していく

──お話しいただいたCX施策について、それぞれどのような手順で進めることが望ましいのでしょうか。

 まず、誰もが常に企業とデジタルチャネルでつながっている世界観が当たり前になっていて、消費者はすでに「トランスフォーメーションされている」ことを強く認識していただきたいですね。今はインターネットとスマートフォンの組み合わせが主流ですが、たとえば自動車や家で、スマートスピーカーなどで行く場所や食事をする場所を決めるというライフスタイルがもうそこまで来ています。その時に、今のままでは「認知されない」「相手にされない」可能性があることを知ったうえで、危機感を持って進めていただくことが大切だと思います。

 そうなると、「アプリを導入しよう」「ネットで対応しよう」といった発想になりがちですが、単にチャネルを増やすだけでは場当たり的になりがちです。チャネルが増えたことを歓迎する消費者は一定数いるでしょうが、企業としては増えたチャネルに人やコストを当てなければならず、リソースが分散してしまいます。結果として、丁寧な対応やユーザビリティを損ねたり、チャネルごとバラバラの対応をしたりと、結果としてCSを損ねることにもなりかねません。リソース不足で、せっかく立ち上げたチャネルを閉じざるを得ないということもしばしば見受けられます。

 そこで大切なのが、戦略を考えてから取り組むことです。 CX施策の方向性としては、ふたつあると考えています。まず、既存の商品やサービスの認知から販売、アフターケアまでの接点における、チャネルやコミュニケーションの改善・最適化です。これは、現在のCXの“高度化”と言えるでしょう。そしてふたつめは、商品やサービスが提供するCXを変えるというものです。後者については、事業価値そのものの変革であり、イノベーションと言えるでしょう。

 どちらにおいても重要なのが「お客様の声」です。前者では、あらゆるチャネルで声に的確に対応し、満足度を上げることが企業価値を高めることになり、後者では、その声をデータとして収集し、そこから新しい価値を生み出すビジネスを創出していく。CXの施策としては、「顧客の声を集めて統合し、いかに活用するか」が第一歩であり、ベースになると思います。

 具体的なアプローチについては企業によっても異なるため、当社にご相談いただければ……という話になるのですが、あえて順番をつけるなら、まずは既存のチャネル、たとえばコンタクトセンターにおける顧客の声の聞きかた、拾いかたから見ていくことが多いです。お困りごとの解消や部門に閉じた課題の拾いかたについては整えられているのですが、事業全体につながるアイデアともなると、出てきても聞き流されてしまっている場合が多いのです。そこを一段あげて、事業や経営につながる対応の仕方、情報のとりかたをしっかり考えていく。そのうえでチャネルの新設、統合を計画していくべきと考えています。

 インバウンドで寄せられた「お客様の声」についての対応だけでは、CXの視点では十分ではありません。いまやお客様のほうが商品の使いかたの工夫や良かった点、体験などを自らSNSなどで発信し、それが他の消費者に影響を与えるようになっています。企業が発信する情報よりも、分量・質の面で影響力が大きいかもしれません。100%はむずかしくとも、これらの声をしっかりととらえていきましょう。明確な「誰か」がわからなくとも、顧客の傾向として仮説にはなります。また、顧客の間で情報がやり取りされている様子を見て、欠けている情報などをアクティブサポートという形で企業側から発信することも可能になるかもしれません。

真のDX人材の武器となり事業改革の起点となるCXを

──こうした「顧客の声」を捉えるために、有効なツールや考えかたがあればご教示ください。

 なかなか「銀の弾丸」はないんですよね。今自社が持っているチャネルの中で、「顧客の声」を聞きながら、仮説を立てて突破口を開いていく他ないと思います。それによって、これまで見えていなかったお客様とデジタル上でコミュニケーションを取っていくことが大切です。

 たとえば電話で問い合わせが来たとしても、きっかけはウェブサイトのあるコンテンツを見たから、それはこのキーワードで検索したから、検索のきっかけはSNSの投稿から……、とソースを追いかけることができたとしたら、問い合わせするほど何が魅力的だったのか、もしくは不満なのか、顧客のインサイトをトレースすることが可能です。それも、匿名性を保ちながら顧客像として分析したうえで、適切な施策を打つことができます。それがかなえば、電話での問い合わせや炎上対応も減り、お客様ともっと建設的な話ができたり、クロスセルの提案ができたりするようになるかもしれません。日本ではサイレントカスタマーが多く、問い合わせをしてくる人は商品やサービスに愛着があって、要望やアイデアを持っていることが多いのです。アクションを起こしてくださる方々への対応に重要な人的リソースを当てることによって、会社や事業にとって重要な情報をすくい取ることができるようになるでしょう。

 よく「DX人材の育成」というと「デジタルに強い人」と思われがちですが、そうではなく、社会や顧客の変化を敏感に汲み取って、それを事業や商品、サービスなどを改革していける人のことを本来は指すはずです。「デジタルを使える」というのは、発想力や推進力といった能力と並列になるスキルのひとつに過ぎません。逆の発想をすれば、使いやすいデジタルツールを提供すれば、その能力を少し高めることができる。ツールはそのような観点で選定すれば良いと思います。もちろんマインド面の影響も大きいため、「顧客の声」に近いところにいる人たちにそうした気づきを与えることについても、当社のミッションとしてご相談に乗っています。

 CXに限った話ではありませんが、トライ&エラーは重要ですが、そう何度もコストは掛けられないし、一度始めたことをやめるのは信用の面で問題になる場合があります。そのため「できるかどうか」に議論が終始してしまい、「何のために何をやるべきか」といった本質的な議論ができなくなるケースがあります。そのような事態を防ぐべく、クラウド上で一気通貫にCXに関するすべてが実現できるプラットフォームである「NICE CXone」なら、「できるかどうか」が検証済みですから、その議論はしなくても良くなります。たいへん有用なプラットフォームだと評価しています。

 実は以前、CXソリューションを構築するために、当社でさまざまなサービスやツールを選定して苦労して組み合わせていたことがありました。そこにナイスジャパンの「NICE CXone」が登場し、それまでバラバラに存在していた機能を統合・活用するソリューションを、クラウド上で一気通貫にできるようになりました。PoCで構築したシステムは、そのまま規模を拡大するだけで使用できるため、スピードもコストも最適化できます。

 顧客企業では、部分的に保守期限切れや投資回収の問題があって、一気に変えられないことも多く、計画を立てて段階的に置き換えることを推奨しています。「NICE CXone」であれば、部分にばらしてAPIでつなぎながら柔軟に対応ができるため、マイルストーンを組みやすいのです。もちろん1つひとつの機能についても優れているのですが、全体的なシナジー効果、現実的な導入といった部分に大きな価値を感じています。それはそのまま顧客企業にも同じ価値を感じていただけると思います。

アビームコンサルティング 竹谷伸一氏

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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