EC市場は急加速
品物をインターネット(Webサイトやアプリ)を通じて販売するEコマース(以下、EC)は、最近急激に拡大しています。海外の調査になりますが、米国のコンサルティング会社マッキンゼーの「eコマース動向調査」では、2009年からの10年間と同程度の成長が、2020年の第1四半期、つまり3カ月間で達成されています。コロナ禍によって店舗での対面販売を避ける傾向にあるため、この成長速度はさらに加速しているものと考えられます。
日本でも同じようにECの取引額が増加を続けていますが、世界で同時に発生しているコロナ禍の影響を受けるのは、日本も同じです。日本では、より短期間でさまざまなことに対応しなければならない状況なのではないでしょうか。
老朽化したECサイトはリニューアルしたほうがいい
コロナ禍でこれから新しくECサイトに取り組もうという事業者もいらっしゃるでしょうが、ここではそれなりに歴史のあるECサイトの課題について考えてみたいと思います。弊社Sitecoreはデンマークで創業し、現在27の国と地域で事業を展開する外資企業ですので、海外の事例を元に説明します。
まずは、Bachman'sというフラワーショップ、いわゆる街のお花屋さんの事例です。店舗での販売と、Webサイトでオーダーするとお花が配送されるECの両方をやっていて、ECサイトがスタートしたのは1998年、つまり20年以上の歴史があるECサイトです。
ECサイトだけでなく、ブランドサイトやコーポレートサイトでも同じですが、Webまわりの技術は日進月歩ですから、ある程度時間がたったものはリニューアルする必要があります。一応使えているからと、そのままにしておくのはよくありません。
Bachman'sの場合、まずサイトの表示が遅いという課題がありました。他にECをやっているお花屋さんがない時代ならともかく、表示が遅いのはショッピングエクスペリエンスとしてよくありません。さらに、GoogleはWebサイトにおけるユーザー体験の評価にコアウェブバイタル(Core Web Vitals)を使うという方針を表明していますので、SEO的にも避けるべきでしょう。
もうひとつが、例えば決済サービスや配送に関するサービスなど、外部サービスと連携したいと思っても、時間とコストがかかりすぎるという課題です。使える決済方法が多いほど、お客さんにとっては便利ですから、例えばクレジットカードだけでなくQRコード決済など、新しい技術もどんどん取り組んだ方が売上増につながります。ただ、昔ながらのがっちりと作り込んだECサイトでは、それが難しかったのです。
「ECサイトは重いもの」から脱却しよう
ECサイトは、商品データベースから情報を抽出し、ページを生成して、アクセスしてきたお客さんに表示します。データベース連携があるため、ECサイトはそもそも重いものだと言われてきたわけです。ただし、表示の遅さは、ECサイトの仕組みを変えると解消できます。
従来の、いわゆるECパッケージと言われるツールでは、商品データベースとコンテンツを管理してページを生成する機能、そしてWebページとしてお客さんに表示する機能が、1台のサーバの中にきっちり組み込まれた状態でインストールされています。これをITエンジニアの用語では、「モノリシックな構成」と呼びます。
一方、新しい方式として登場したのが「ヘッドレスな構成」のツールです。これは、データベースやページを生成するバックエンド機能の部分と、Webサイト表示(フロントエンド)の機能を分離し、APIで繋ぐという方法をとります。Sitecoreのソリューションの場合は、バックエンド(データベースとCMS)がクラウドサービスとして提供されています。
このヘッドレス構成では、バックエンドはそれに適したサーバでページ生成に専念し、できたHTMLファイルをAPIでWebサーバに投げるだけ。Webサーバの方ではユーザーからのアクセス処理に専念し、HTMLファイルを表示すればいいだけなので、動作が軽快になります。