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ソーシャルコマースとは?種類やメリット・デメリット、活用事例を紹介


 ソーシャルコマースはEコマースとSNSを組み合わせたマーケティング手法のことで、商材を販売する目的で活用できます。今回は、ソーシャルコマースの基本的な特徴やメリット、どのような使い方をしていくべきかを紹介します。

 ソーシャルコマースは、ソーシャルメディア(SNS)とEコマースをかけ合わせて、商品やサービスを販売する仕組みのことを指します。SNSをファンとの交流やブランドの認知度を高めるためだけに用いるのではなく、「購入」にまで踏み込んでとらえていくのがソーシャルコマースだといえます。

 この記事では、ソーシャルコマースの基本的な特徴やオンラインショップとの違い、活用事例などを解説します。

ソーシャルコマースとは?

 ソーシャルコマースについて正しく理解するには、まずは基本的な特徴をおさえておく必要があります。市場規模の拡大やオンラインショップとの違いなどを踏まえて、ソーシャルコマースが持つ特徴を理解してみましょう。

ソーシャルコマースの基本的な特徴

 ソーシャルコマースとは、InstagramやFacebookなどのSNSとオンラインショップを組み合わせた販売チャネルのことです。SNSの投稿画面から商品の購入ページに移動してもらい、そこから販売を行う手法のことで、SNSから直接的にユーザーのアクションを引き出せる点に特徴があります。

 従来のSNSにおけるマーケティングは、どちらかといえば認知の拡大やブランドイメージ向上などをおもな目的としており、実店舗やオンラインショップに集客するためのステップとして活用されていました。

 しかし、現在ではSNS上で公式アカウントを持つ企業とユーザーが相互的にコミュニケーションを図る機会も増えつつあります。 そうしたなかで、SNSからショップに移動する手間を省略し、より直接的に商品の購入ができるような仕組みとして、ソーシャルコマースが導入され始めているのです。

ソーシャルコマースの市場規模

 経済産業省の調査によれば、2021年の物販分野におけるEC化率は、BtoC-ECで8.78%(前年比0.7ポイント増)、BtoB-ECで35.6%(前年比2.1ポイント増)といずれも増加傾向にあります。前年同様に巣ごもり需要による物販系分野の伸び率は高く、今後も商取引の電子化は引き続き進展していく見込みです。

 当然ながら、商取引の電子化が加速すればインターネット上での商品販売のチャネルも拡大していきます。コミュニケーションツールとして扱われていたSNSも例外ではなく、マーケティングにおける重要性が高まっているといえるでしょう。

従来のEコマースとの違い 

 すでに自社のオンラインショップが充実している場合、無理に新たな仕組みを導入する必要はないと考えられる場合もあるでしょう。しかし、ソーシャルコマースはオンラインショップの単なる発展形ではなく、大きく異なる性質を持ったシステムだといえます。

 ソーシャルコマースの特徴は、「企業・顧客間」「顧客・顧客間」で“双方向型のコミュニケーション”を図れる点にあります。そのため、自社商品やブランドが持つ世界観についての情報発信を行いつつ、顧客と深いリレーション(関係性)を構築することが可能なのです。

 従来のEコマースの場合、自社からの一方的な情報発信が主流になりがちであり、ユーザーは企業から発信された情報に受け身で触れることとなります。

 一方、ソーシャルコマースではユーザーとの最初の接点が「商品を購入する場」ではなく、「コミュニケーションをとる場」になります。

 さらに、ソーシャルコマースではユーザー間のコミュニケーションも発生する可能性があるため、既存顧客がまだ見ぬ潜在顧客に自社商品の魅力を発信してくれることも期待できるでしょう。

ソーシャルコマースの種類

 ソーシャルコマースは、次のように大別できます。

  • CtoC型
  • SNS・ソーシャルメディア型
  • レコメンド型
  • ユーザー参加型
  • グループ購入・共同購入型

 以下より、それぞれの詳細を解説します。

CtoC型

 CtoC(C2C)とは「Consumer to Consumer」の略で、ベンダー側がプラットフォーム内に用意した環境下で一般ユーザー同士が取引を行うタイプのソーシャルコマースです。

 企業側はあくまで“環境を整えるのみ”であり、ユーザー同士の取引には基本的には介入しません。ユーザーにとっては、貴重な商品であっても安価で手に入れやすい点がメリットです。

代表的なサービス

  • メルカリ
  • Amazonマーケットプレイス
  • Yahoo!オークション など

SNS・ソーシャルメディア型

 SNS・ソーシャルメディア型のソーシャルコマースは、その名のとおりSNSを取引のプラットフォームとして活用します。SNSの普及に伴って、近年は活用機会が増えており、アカウント内のプロフィールや投稿欄、ライブ配信などで商品紹介を行う形でのプロモーションが可能です。

代表的なサービス

  • Instagram
  • Facebook
  • Pinterest など

レコメンド型

 「レコメンド型」のソーシャルコマースでは、ユーザーによって投稿される商品レビューや口コミ、評価を参考にして更なる商品購入を促します。Cookieを利用した「おすすめ商品」などのポップアップ表示なども、このタイプに分類されます。

代表的なサービス

  • Amazon
  • アットコスメ など

ユーザー参加型

 ユーザーが“買う側”としてだけでなく、商品企画や投資の募集など、“売る側”としても参加するのが「ユーザー参加型」のソーシャルコマースです。

 商品は従来、企業が予算と時間をかけて作り上げるものでした。しかし、クラウドファンディングサービスなどの登場により、個人でも商品企画や投資に参加できるようになったことから、近年そのハードルは下がりつつあります。

代表的なサービス

  • Makuake
  • CAMPFIRE など

グループ購入・共同購入型

 「グループ購入・共同購入型」のソーシャルコマースは、ユーザーが共同で購入するクーポンサービスのことを指しています。ユーザーはあらかじめ指定された人数で商品を購入すれば、割引クーポンを利用できる仕組みです。

 日本ではあまり盛んなタイプではなく、かつては「グルーポン」「ポンパレ」といったサービスが多数存在しましたが、現在は多くがサービス終了しています。

ソーシャルコマースの代表的なプラットフォーム

 日本国内でソーシャルを実施する場合、頻繁に利用される代表的なプラットフォームは以下のとおりです。

  • Instagram
  • Facebook
  • TikTok
  • Pinterest
  • Amazon

 ここからは、それぞれの特徴について概説します。

Instagram

 メタ・プラットフォームズにより運営されている「Instagram」は、ソーシャルコマース市場内でも利用ユーザーが多いのが特徴です。特に若い世代の間では、コミュニケーションツールとしても親しまれています。

 アプリ内「Instagramショッピング」を開設して商品を登録すれば、フィード投稿やリール、ストーリーズなどで商品をタグ付けしたり、アプリ内から商品を購入できるようにしたりすることも可能です。

Facebook

 「Facebook」も、ソーシャルコマースではInstagramと同程度利用されているSNSです。データに基づくマーケティングが可能であり、2020年には、Instagramアカウントとも連携を取れる「Facebookショップ」の提供が開始されました。

 Facebookでは、ユーザー同士はコミュニケーションアプリ「メッセンジャー」を使ったやり取りが可能です。

TikTok

 中国発のショート動画配信プラットフォーム「TikTok」は、近年やっとソーシャルコマース市場へ進出しました。日本でも10~30代の若者を中心に、1,000万人以上の登録者を誇っています。

 中国ではショップ機能が実装済みで、中国以外ではまだテスト段階ではあるものの、今後は商品のアップロードからフルフィルメントまでTikTok内で管理できるようになる予定が立てられています。

Pinterest

 「Pinterest」は、Web上で見つけた画像・写真を「ボード」に集めて、他ユーザーとシェアするためのサービスです。Pinterestでは「ピン」した画像からリンク元に遷移させられる機能を活用し、販売ページへの導線を引くことで、ソーシャルコマースを実施します。

 SNS・ソーシャルメディア型に該当するプラットフォームで、日本国内でも2022年よりECサイト向けショッピング機能が搭載されました。Shopifyなどと連携させることで、ショップタブを追加したり、Pinterest上で商品を紹介して購入ページに遷移させたりできます。

Amazon

 Amazonでもソーシャルコマース実施可能です。Amazonに商品を出品する「Amazonマーケットプレイス」を活用すれば、CtoCタイプ型のソーシャルコマースを展開できます。

 Amazonマーケットプレイスでは、商品販売から決済まで、一貫してプラットフォーム内で行うことが可能です。

中国におけるソーシャルコマース市場

 ECが発達している中国におけるソーシャルコマース市場、代表的なプラットフォームも含めて解説します。

中国のEC市場の1割以上を占めるソーシャルコマース

 デジタルマーケティング会社「eMarketer(イーマーケター)」による2021年の調査によれば、世界のEC市場で最も大きいのは中国(2兆4,886億ドル)で、市場全体の約52%を占めています。一方、2位のアメリカEC市場は全体の約19%でした。

 また、中国インターネット情報センター(CNNIC)発表の「第50回中国インターネット発展状況統計報告」によると、2022年時点の中国のネットユーザーは10億5,100万人を突破し、ネット普及率とともに上昇したとされています。

 このような中国EC市場の成長を支えている「WeChat」や「小紅書」について、次項で見ていきましょう。

代表的なプラットフォーム

 「WeChat」は、中国における最も大きなソーシャルコマースのプラットフォームで、月間のアクティブユーザー数は約11億人といわれています。WeChatのなかで自由にストアを開設できるだけでなく、広告の出稿やインフルエンサーを活用した集客に関する施策を行うことも可能です。

 また、2020年4月からは映像で商品を紹介しながら販売ができるライブストリーミング機能が追加され、カルティエなどのハイブランドが参入するなど、大きな盛り上がりを見せています。

 「小紅書(RED)」は、おすすめ商品の共有機能やコミュニティ機能が特徴的なソーシャルコマースのプラットフォームです。小紅書では35歳以下の女性をメインターゲットとしており、ブログとインフルエンサーを組み合わせて商品の販促効果を高めることにつなげています。 プラットフォーム内から気に入った商品を直接買えるなど、利便性の高いサービスといえるでしょう。

ソーシャルコマースを利用するメリット

 ソーシャルコマースを活用することで、さまざまなメリットを受けられます。ここでは、代表的な2つのメリットについて見ていきましょう。

顧客の囲い込みを行いやすい

 ソーシャルコマースは、商材を販売した後もSNSを通じて顧客とのつながりを保ちやすいといった特徴があります。顧客との関係を継続できるので、オンラインショップと比べて顧客の囲い込みを行いやすくなります。

 ソーシャルコマースでは、自社のブランドや商品に込められた想い、コンセプトなどを長いスパンにわたってユーザーに届けることができます。リアルタイムでの更新も可能で、ユーザーも情報にアクセスしやすいため、自社のブランディングを強化したり、価格以外の部分で他社との差別化を図れたりするのも大きなメリットといえるでしょう。

コストや手間をかけずに手軽に始められる

 新たにサービスを立ち上げる場合、オンラインショップをスタートするよりも、ソーシャルコマースのほうが導入ハードルは低いといえます。SNSが提供している販売機能やASPカートを利用することで簡単に始めることができ、オンラインショップの作成にかかるコストや手間を省けます。

 また、ソーシャルコマースでは、集客施策と管理を1つにまとめられるのもメリットです。SNS上で広告を出稿すれば、そのままユーザーを購買層に転換できるため、効率的な運用がしやすいといえます。

ソーシャルコマースを利用する注意点

 ソーシャルコマースの活用は集客に効果的ですが、一方で気をつけておきたい点もあります。ここでは、特に注意しておきたい点を解説します。

運用には一定のリソースが必要になる

 ソーシャルコマースを活用するためには、SNSでの定期的な情報発信が欠かせません。そのため、ある程度のスパンにわたって、運用のために一定のリソースが必要です。

 特にInstagramなどの写真データが主流なコンテンツになるSNSを利用する際には、品質の高い画像や映像を発信する必要があるため、高い技術力や品質を備えた人的リソースが必要になることもあります。

売上として反映されるまで時間がかかる

 ソーシャルコマースの導入による効果が発揮されるまでには、ある程度の時間がかかります。すぐに安定的な売上を立てられるケースは少なく、中長期的な視点での取り組みが求められるため、運用コストにもきちんと目を向けておかなければなりません。

 すでにオンラインショップや自社メディアを構築している場合は、それらと組み合わせながら運用すると効果が出るまでの時間を短縮することが可能です。 また、SNS上での購入時に特典を設けるなど、利用を促すような仕組み作りも行うとよいでしょう。

ソーシャルコマースの活用事例

 ソーシャルコマースについて学ぶには、実際に導入をして成功している企業の事例を参考にすることも重要です。ここでは、3社の事例について解説します。

ルイ・ヴィトン

 「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」は、ハイブランドとして初めて小紅書でライブストリーミングによるキャンペーンを行い、15万回以上再生されるなど視聴者の関心を引きつけることに成功しました。

 新型コロナウイルス感染症の拡大から、世界中で外出が制限されるなか、消費者に対して新しい形で購入体験を提供する試みであったといえます。

グラフィット

 glafit株式会社は、ペダルの付いた原動機付自転車を販売している新興メーカーです。同メーカーはハイブリッドバイク「glafit(グラフィット)バイク」の開発費用を「Makuake(マクアケ)」というクラウドファンディングを通じて募集し、約50日間で1億円以上の出資を集めることに成功しています。

 短期間で多くの資金を集められた理由として、FacebookなどのSNSを通じて積極的に情報発信を行っていた点が挙げられます。ハイブリッドバイクがどのようなコンセプトの商品で、ライフスタイルをどう変えるのかといった部分をSNS上で継続して伝えていたため、資金を集めるだけでなく目標としていた予約注文数も達成しています。

 同社はSNS上にショップページを設けており、商品に関するユーザーからの質問にも丁寧に対応しているため、ファンの獲得につながっているといえます。

バルミューダ

 バルミューダ株式会社は、デザイン性の高いオーブンレンジなどを手がける家電メーカーで、自社のECサイトだけでなく各種メディア展開も積極的に行っています。 具体的には、製品開発に関する記事「ストーリーズ」を通じて顧客の潜在的なニーズを掘り起こすなど、多くのファンを生み出すきっかけづくりにも力を入れています。

 InstagramやTwitterでは、同社の製品が暮らしのなかにどう溶け込んでいるかを伝える投稿が多く、ユーザーが気に入った投稿ページからそのままECサイトの製品ページにアクセスできるので、販売の機会をうまく生み出しています。

まとめ:ソーシャルコマースを活用して顧客と良い関係を築こう

 ソーシャルコマースを活用することで、Webサイトだけでは得られない、ユーザーのさまざまな情報を入手できます。自社のSNSアカウントを訪問してくるユーザーとの交流を深め、しっかりと信頼関係を築いていきましょう。

 EC市場の拡大に伴って、ソーシャルコマースは今後ますます成長していくことが期待されています。基本的なポイントを踏まえたうえで、自社に適した形で展開していくことが重要です。

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この記事の著者

EC研究所(イーシーケンキュウジョ)

ECについての情報を調べ、まとめてお届けします。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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