販促強化で売上伸ばす各モール 楽天グループは新セレクトEC運営へ
2021年夏から秋にかけての動向として、羽田野さんは「自身がウォッチする店舗では、各モールともに8月は伸び率が鈍化する様子が見られたが、9月からは売上を伸ばしている」と話す。
「9月の売上伸長要因としては、急激な気候の変化によ って冬物商品の需要が増えたことや、多くの都道府県で発出された緊急事態宣言による外出自粛などが影響していると推測しています。こうした消費者動向に加え、各モールが行った販促施策がより効果を発揮したと言えるでしょう。国際的なスポーツの祭典が無事に終了したことも、変化の一因と考えられます」
楽天市場は「楽天スーパーセール」を9月4日から11日まで開催し、同セールにおける過去最高の売上を記録。 Yahoo!ショッピングでは、「5のつく日キャンペーン」に合わせた販促イベントが功を奏した。また、前号の定点観測で紹介したQoo10も、9月1日から9日にかけて実施した「メガ割」、および10日の「いいショッピングQoo10の日」の効果によって、過去最高の流通総額となっている。
続いて羽田野さんは、楽天グループが新たに展開を進めている「Premium Food Select」について紹介した。同ショップは、「全国に眠る魅力的な商品を、楽天が販売することで、日本の食文化の可能性を広げてゆくショップ」とトップページに記載があるように、楽天グループが運営を実施。洋和菓子や外食チェーン店の自宅食セットなど、さまざまなジャンルの商品が並んでいる。
「あくまで私の憶測ですが、こうした取り組みは楽天グループが事業者と新たな形での付き合いかたを模索していると考えることができます。食品ECは、温度管理が必要な商品が多く、冷蔵・冷凍便を使用することで配送コストがかさむことから、ほかのジャンルに比べて参入障壁が高いと感じている事業者も存在します。社内のリソース不足から出店を諦める事業者に対し、仕入れ(在庫管理)や運用を楽天グループが担うことで、モール参入のハードルを下げようとしているのではないでしょうか」
Premium Food Selectでこうした課題解決ができれば、食品EC市場の活性化もより進むだろう。2021年12月2日時点では22ブランドの取り扱いだが、今後同ショップがどう拡大・進化を遂げるのか要注目である。