定着せず9割が撤退した第1次ライブコマースブームの要因は?
EC(オンライン販売)とライブ配信を組み合わせたライブコマースは、2016年頃から中国を中心に広がりを見せていた販売形態です。一方で、日本においては、当時多くの企業がライブコマースという新たな販売手法を導入し、市場に続々参入したものの、最終的には消費者の日常的な購買手段として定着させることができず、新規参入企業の9割以上が撤退していきました。結果として、数年前のタイミングで日本におけるライブコマース市場は定着しなかった要因は、大きくふたつあると考えられます。
1. 「集客」の問題
スマートフォンの普及などもあり、ライブ配信自体を視聴する文化は浸透し始めていたものの、販売のために立ち上げられた配信の場へ新たに消費者の往来を確保することが困難だったのが当時の実情でした。また、今でこそInstagramなどを活用したCtoCのライブコマースが日本でも増えていますが、当時はECの主な購買層とSNSのユーザー層にギャップがあり、ターゲットにリーチすることが難しいという側面もありました。
2. 「購買のハードル」の問題
爆発的な集客ができなくとも、購買単価やコンバージョン率が高ければある程度の売上や収益を確保できるのがECです。しかし逆を返せば、視聴数が増えてエンターテインメント性あるコンテンツとして成功したとしても、購買が発生しなければビジネスとしては成立しないということでもあります。
当時新しい販売手法として登場したライブコマースでは、消費者がその場で商品を購入する「ゴール(=コンバージョン)」に行き着くために企業も時間とコストをかけ、足の長いサービス設計をする必要がありました。しかし外出自粛要請などが続き、消費者とのリアルの接点が減少したコロナ禍を契機にあらゆるビジネスがオンラインに移行したことや、影響力のある個人(インフルエンサー)によるビジネスの市場が拡大した影響などを受け、直近はZホールディングスや楽天グループ、ジャパネットたかたや百貨店など、さまざまな企業がライブコマース事業への本格参入を発表しています。いわば「第2次ライブコマースブーム」とも呼べる、新たな市場形成に向けた企業・消費者の動きが日本、そして世界において見られるのが現状です。