自律制御システム研究所(以下、ACSL)とVFRは、国内で本格的に社会実装が可能なドローン物流用機体の共同開発に着手したことを発表した。
経済産業省が公開する「空の産業革命に向けたロードマップ 2020」によれば、2022年度には、都市部での目視外飛行(Level 4)を実現し、物流分野においては都市を含む地域における荷物配送サービスの開始を目指すことが示されている。両社の知見や技術的な強みを掛け合わせることで、そうしたドローン物流の現場で活躍できる水準の機能・性能に最適化されたドローンを早期に開発していくことを目指す。
ACSLは、高性能なドローンの開発から販売までを担う企業として、これまで物流現場でのドローン活用に関するさまざまな実証実験を行ってきた。2018年11月には、日本郵便と補助者なし目視外飛行(Level 3)の承認を得て、福島県の郵便局間の輸送を行った。また、2019年から2020年にかけて、ANAホールディングスと長崎県における離島間物資輸送を実施し、羽田空港からの遠隔操縦に成功している。
こうした各社との実証実験を通して、Level 4が実現した際に、車や船などよりもドローン活用により効率的に輸送ができる場所(山間部や離島など)におけるドローン物流の社会実装を推進するためには、現状の機体よりもペイロードを大きくし、5kg程度の輸送を可能にすることかつ飛行距離が20km程度あることが重要であることが判明。そのため、同社は2020年8月発表の中期経営方針「ACSL Accelerate FY20」において、中型物流ドローンの開発と量産化を戦略のひとつとして挙げ、検討を進めてきた。一方で、こうした要件を満たすドローン機体の開発・製造には技術的な課題が多く存在しているという。
ACSLとVFRは2020年5月より産業用ドローンの本格的な普及のための課題解決を目指して協業を開始。すでにACSL の既存機体(PF2、Miniなど)のアップデートに取り組んでいる。並行して用途特化型の新機体の共同開発に向けてディスカッションを重ねるなかで、労働力不足解消に向けて非常にニーズの高い物流用機体の開発を行うことを決定。VFRの親会社であるVAIOのPC事業で培った高度な設計・製造技術や国内外のサプライチェーンのマネジメント能力などの強みやEMS事業におけるドローンの本格的な量産などから得られた知見を、共同開発における技術的な課題の速やかな解決に向けて活用していく考え。