Zendeskは、全世界を対象に調査を実施した「カスタマーエクスペリエンス(CX)に関する年次トレンドレポート(2024年版)」を発表した。
今回のレポートでは、日本のCXリーダーの半数以上(56%)が、生成AIのようなツールを活用してカスタマージャーニーを再構築していることが明らかに。世界的に見るとこの割合は70%であり、日本における生成AIを採用する動きが世界レベルに迫りつつあることがわかっている。
なお、サポート担当者が生成AIツールを使い始めてからプラスのROIが見られたと報告するCXリーダーの割合は、75%にものぼり、この事実はAIの導入がCXを成功させる新たな基準となることを裏付けているといえる。同レポートはさらに、インテリジェントなCX時代を定義するいくつかの要素にも焦点を当てている。
人間のサポート担当者の対応に近いやり取りを実現する「デジタルエージェント」としてのチャットボット
生成AIと進化したチャットボットを組み合わせることで、企業はインタラクティブな体験を遅延なくパーソナライズしながら提供可能に。レポートでは、この新たな手法が企業と消費者の関わり方を一新させると分析されている。
顧客体験を再定義する、スマートでスピード感のあるインタラクション
同レポートでは、より魅力的でインタラクティブな体験を期待する消費者のニーズに応えるため、CXリーダーは対話型コマース、ライブストリーミング、音声通話などのツールを充実させる必要があると見解が述べられている。
データプライバシーの保護強化というCXリーダーの新たな役割
データプライバシーへの取り組みは、IT部門ではなくCXリーダーが主導で推進する必要があり、便利な体験を損なうことなく強固なセキュリティ機能をカスタマージャーニー全体にシームレスに組み込むことが不可欠と解説。
チャットボットは真のデジタルエージェントに進化する
調査対象となったCXリーダーの半数以上(53%)が「チャットボットは顧客とのより深い感情的なつながりを構築できると思う」と回答。これは主に、AIチャットボットが熟練のサポート担当者に近い対応を実現する「デジタルエージェント」へと進化し、カスタマーサービスと顧客体験の全体で重要な役割を果たすためと見られている。ブランド哲学を表現し、顧客の感情を分析して要望を汲み取るAIチャットボットの能力によって、顧客1人ひとりに合わせた的確な対応が可能となる。
加えて、57%もの消費者が「チャットボットは熟練の人間のサポート担当者と同レベルの専門知識と対応品質を持つべき」と回答。デジタルエージェントへと進化を遂げるチャットボットは、消費者の高まる期待に合致しているといえる。
また、消費者の半数以上が、高度なボット機能によってスピーディに回答を得られることを期待。企業はチャットボットの機能をデジタルエージェントのレベルにまで高めることを重要視しており、それをできるだけ早い段階で実現できるようにAIへの投資計画を強化しているという。
スピード感のあるスマートなインタラクションがCXを再定義する
いまや消費者は、従来の「サポート」を超えた「真の体験」を求めており、「企業との関わり方は2年以内に一変すると思う」と回答した消費者の割合は、全体の半数以上にのぼった。
そこで注目を浴び始めているのが、チャットで会話をしながら商品を販売する「対話型コマース」だと同レポートでは説明されている。消費者がライブストリーミングセッションを通じて、リアルタイムのアドバイスを受けながら購入できる「ライブコマース」の需要も高まりつつある。
このニーズに応えるため、世界のCXリーダーの72%が「対話型コマースを実装するために外部のベンダーや専門家と提携している」と回答。一方、日本で同様の回答をしたCXリーダーの割合は54%に留まり、改善の余地があるといえる。企業は同様に、SNSや実店舗におけるインフルエンサーを活用した販売にも力を入れている。これは新規顧客の獲得や、自宅で買い物をしたい消費者に有効なアプローチだとしている。
データプライバシーの保護強化というCXリーダーの新たな役割
AIによるパーソナライゼーションが求められると同時に、プライバシーへの懸念も高まりつつある。今後、データプライバシーへの取り組みにおいては、CXリーダーが中心的な役割を果たすようになると予想。実際、CXリーダーの約3人に2人(67%)が、「顧客データの安全性の確保には自らが責任を負っていると思う」と回答している。また「データ保護とサイバーセキュリティ対策はカスタマーサービス戦略の最優先事項である」と回答したCXリーダーも、同じ割合だった。
今日のCXリーダーは、データプライバシーの意思決定プロセスで積極的な役割を果たしており、AIを導入しながらデータを保護するソリューションを提供することで、顧客1人ひとりにパーソナライズされた体験を安全に届けられると考えられる。調査で「オンライン不正行為の脅威に常にさらされていると思う」と回答した消費者の割合は、全体の半数以上にのぼり、企業がデータセキュリティへの取り組みに積極的であることが認識されれば、消費者は安心して個人情報を提供できるようになるだろう。同レポートでは、これにより信頼関係が強まり、顧客ロイヤルティも向上すると言及されている。
調査概要
- 調査時期:2023年7月から8月
- 調査対象:世界20ヵ国2,818人の消費者/小規模企業から大規模企業まで世界のさまざまな組織でカスタマーサービスとCXに携わる計4,441人のリーダー、サポート担当者、テクノロジーバイヤー