NEC、エブリセンスジャパン、日立製作所、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所、ザイナスは、分野を超えてデータの発見と利用ができる仕組み「CADDE」の普及に向けた実証を実施した。また、CADDEの利用ユースケースや具体的なサービス利用方法を理解するための「外部仕様書」を新たに作成し、3月31日に公開した。
実証では、CADDEと産業・商業向けデータ基盤、スマートシティ向けデータ基盤などを相互接続したデータ利活用を検証。分野を超えたデータ連携の加速に向け、実装面での課題を抽出し、解決策を取りまとめた。実証で得られた成果は、CADDEの主要機能の外部仕様書などへ反映しており、一般公開することでその普及と利活用拡大を目指す。
CADDEを活用したフィールド実証
本プロジェクトでは、CADDEの活用が想定される企業とともに、具体的な業態、業務、データの提供、データの利活用を想定した4つの実証を、2022年11月から2023年2月にかけて行った。
1.産業・商業で利用されるデータ基盤技術との相互接続性実証
クラウド型調達・購買システムであるSAP Ariba Networkを活用し、中小企業のグローバルな調達案件への参入可否を検証することで、CADDEの社会実装に向けた課題を抽出した。
実証に参加したSAP Ariba Networkのユーザー企業は、CADDEのデータ連携機能に対する指摘はなく、商取引へのCADDEの活用が可能であると示した。そのため、国内の調達・購買システム事業者、ECサイト事業者などによる、CADDEの実装が期待できるとのこと。
2.オープンソースのデータ基盤技術との相互接続性実証
札幌市のデータ連携基盤として利用されているFIWARE OrionとCADDEを相互運用した。本実証では、不動産ディベロッパーや飲食店が、人流データ、気象データ、イベントデータなどの複数のデータを取得し、リアルタイムに可視化するアプリケーションからデータ活用の可否を検証することで、データ流通における課題を抽出した。
その結果、CADDEにおけるID管理の方法や、マーケティング・業務の最適化につながるデータの詳細化・多様化といった面で課題を確認した。
3.データ取引で利用されるデータ基盤技術との相互接続性実証
社会におけるデータの流動性を高めるため、データ利用権およびデータを取引の対象とするデータ利用権取引市場システムを開発し、実証を行った。
データ利用権取引市場への上場申請完了後の、「データ提供者によるデータ生成」「データブローカーによるデータの受領」に該当するデータ収受にCADDEコネクタを利用。データセットが適切なタイミングで遅滞なく、かつ真正性、完全性が保証された状態で収受できるか検証した。
本実証には6社が参加し、実際に利用権証の生成、売買、利用権の行使が可能であることを確認。実証後のアンケートではすべての回答者が、本システムが現在のデータ取引における課題の解決に資すると回答した。
4.スマートシティで利用されるデータ基盤技術との相互接続性実証
実証1~3の複数分野のデータ連携基盤とスマートシティのデータ連携基盤を、CADDEを介して接続。相互連携したデータを用いたユースケースを三井住友海上火災保険とともに検証し、地域のスマートシティの現場を踏まえた技術的課題を抽出した。
横断検索機能により検索取得したデータカタログからCADDEコネクタを用いてデータを収集、BIツールを用いて分析・可視化。保険商品の開発や保険におけるリスク判定へのデータ活用の可否を検証した。
複数分野のデータ連携が効率的に実施できることを確認したほか、事業者がデータ取引を出口とすることで新たにデータの提供側となることへの有意性も確認できたとのこと。