Zendeskは、カスタマーエクスペリエンス(CX)の成熟度に関する調査をEnterprise Strategy Group(ESG社)と共同で実施、結果を発表した。
ESG社は、CXリーダーの特徴と優れている点を明らかにするために、日本の208名を含む世界の3,250名のCX意思決定者を対象にアンケート調査を実施。調査結果をまとめたレポートでは、CX成熟度評価を策定し、組織を「スターター」「エマージング」 「ライザー」「チャンピオン」の4つに分類した上で、CX成熟度が最も高い「チャンピオン」と成熟度の低い組織を分けている共通のパターンと行動を特定。また、企業がCX成熟度を高めるために必要な施策もまとめている。
コロナ禍でも増加するチャンピオンの割合
本調査によると、この1年で、CX成熟度評価が「チャンピオン」に分類される中堅~大規模企業の割合は、世界で8%から12%に増加。日本においては、2020年は0%だったのに対し、2021年は2%に増加した。一方で、オーストラリア(6%から12%に増加)やシンガポール(3%から9%に増加)などでは、チャンピオンの割合がさらに大きく増加している。
CX成熟度の高さが、顧客満足度(CSAT)の向上、応答時間の短縮、効果的なカスタマーサービスの実現といった効果をもたらすことが引き続き明確になっている。CX成熟度とビジネス成長や収益向上との関連性は、注目すべき点のひとつ。
- 中堅~大規模企業のチャンピオンは、その他のレベルと比較して、過去6ヶ月間に顧客数を増加させた割合が3倍、顧客単価を上げることに成功した割合が6.1倍高くなっている。
- 中堅~大規模企業のチャンピオンは、デジタル・インタラクションが主要な顧客接点となっている今、組織内でのカスタマーサービスの役割も変えている。チャンピオンは、カスタマーサービスから直接発生する収益が運用コストを上回るような収益性の高いサービスチームを運営している割合が、スターターに比べて2.3倍高くなっている。
- 全体の結果を見ても、海外では、自社のサービスチームは直接の収益が運用コストを上回る「プロフィットセンター」だと回答する企業が多く、例えば米国では61%がそのように回答。日本では32%の企業にとどまっている。
CX主導のイノベーションは、ビジネス競争上の差別化要因である
世界の回答者の大多数(89%)は、競合他社から自社のビジネスを守るためには、CX主導のイノベーションが必要であると考えている。カスタマーサービスをビジネスの差別化要因と捉えている中堅~大規模企業は、日本では2020年は15%だったのに対し、2021年は49%に急増した。しかし、過去1年間にCXプロジェクトを加速させた日本企業は37%にとどまり、米国(71%)、韓国(67%)、オーストラリア(65%)など世界の国々よりもはるかに少ない傾向にある。
また、このイノベーションを推進するために世界中で多くの企業がデータの価値を見出している。世界の87%の企業が売上拡大のためにサポート部門のデータを利用しており、そのうち76%の企業が大きな効果を実感。さらに、世界では51%、日本では65%の回答者が、販売機会の拡大やビジネスの成長のため、顧客データをもっと活用できるはずだと認識している。
チャンピオンは、CX分野における継続的なイノベーションとカスタマーサービスから得られるデータの活用を率先して推進している。
- チャンピオンは、 サービス部門のデータを広範囲に利用している割合が、9.1倍高い。
- サービス部門のデータの利用がより良い結果につながる。チャンピオンは、売上の増加に与える影響を「ゲームチェンジャー」と捉えて、重視している割合が10.4倍高い。
- CXの主要な取り組みを加速させていると回答したチャンピオンの割合は、2.4倍高い。
より強固な顧客関係を築くのは、チケット処理ではなく対話である
世界のほぼすべてのチャンピオン(87%)が、顧客との対話を重視したサービスを提供することがチームの重要な目標であると考えている。
- チャンピオンは、より深い顧客関係を築くことができる対話型のCXを提供することを優先する割合が2.5倍高い。
- チャンピオンは、平均して8.2のコミュニケーションチャネルで顧客とかかわっているが、スターターの平均は6.3。
多くの企業は、顧客の好みや変化もシフトし続けると予測している。日本では、37%の企業が、現在すでにチャットやソーシャルメディアが顧客に最も利用されているコミュニケーションチャネルだと回答し、今後3年でそうなるだろうと予測している企業は61%にも上った。海外と比較すると、例えば米国では65%が現在すでにそうなっていると回答しており、現状には大きな開きがある。
CXへの投資がオペレーターの定着率向上につながる
過去1年の間に投資および注力すべき分野として挙げられたのが、オペレーターの定着率、トレーニング、働き方の柔軟性、メンタルヘルス/ウェルビーイングだった。そのため、特にチャンピオンは、コロナ禍においてもサービスチームを支援するツールの導入を迅速に進めた。
- 世界の4分の1以上の企業(27%)が、オペレーターの定着率が引き続き課題であると回答しており、2020年の16%から増加。一方で、日本は35%から20%に減少。
- コロナ禍が収束した後も、在宅勤務のオペレーターの数が21%増加すると予測。
コロナ禍の初期段階でチャンピオンが行った主な投資や仕組みの改善は次のとおり。
- オペレーターのモバイルデバイス使用の増加(55%)、日本では32%。
- パブリッククラウドサービス利用の増加(56%)、日本では24%。
- より柔軟な労働時間の提供(53%)、日本では37%。
- 新しいコラボレーションツールの採用(58%)、日本では31%。
- メンタルヘルス/ウェルビーイングへの取り組みの拡大(36%)、本では30%。
- チャンピオンは、コロナ禍でCXへの投資を加速させ、サービスポリシーの変更に対応することで、正しい投資とポリシーの決定を行い、ビジネスの回復力を最大限に高めたとする割合が9.6倍に。
- チャンピオンは、オペレーターの定着率が優れている割合が4.2倍高い。
調査方法
ESG社は、2021年4~6月にかけて、カスタマーサービスの運用に責任を持つ3,250名(日本の208名を含む)の意思決定者を対象に、二重盲検法(ダブルブラインド)を用いたアンケート調査を実施。この調査は、小売、消費者および企業向けサービス、金融、医療、教育、テクノロジー業界などのすべての市場セグメントにおける、中小企業から大企業までの組織を幅広く対象としている。