カネボウ化粧品×スペースシャワー対談 データドリブンに変わるには
あらゆる企業において、データドリブンなビジネスの進めかたが求められる時代。コロナ禍で従来どおりの対面ビジネスが困難になったこともあり、その傾向はますます加速している。
膨大なデータを迅速に分析し、専門外のメンバーにもわかりやすくビジュアライズし、次のアクションのヒントを導き出すのに重宝するのがBIツールだ。数あるBIツールの中でもDomoは、分析を専門に行うアナリストのためのものではなく、ビジネスリーダーが意思決定を行うために開発されたソリューションであることから、大規模な企業のさまざまな部門で広く活用されている。
今回は、Domoユーザーであるカネボウ化粧品の堀哲之介さん、スペースシャワーネットワークの大崎ななみさんに、データドリブンにマーケティング、そしてビジネスを進めていくための取り組みについて対談してもらった。
アナログで伝えていた価値をデジタルでも PDCAの高速化で挑む
堀(カネボウ化粧品) 私は、営業を経てマーケティング部門に異動し、今年で3年目になります。出稿先であるウェブプラットフォームやメディアとの窓口を担当しながら、各ブランドがウェブプロモーションのPDCAを回していく支援をしています。Domoを活用しているのは、PDCAのとくに「Check」のステップです。具体的には、化粧品のブランドごと、店頭の売上やSNSでのクチコミ、ECの売上、広告のデータをまとめて閲覧できるダッシュボードを作成しています。
当社では従来、マスメディアを活用し、広く認知されるような施策を打って、店頭を含め売り場を盛り上げるというやりかたが勝ちパターンでした。しかしここ数年で、デジタルを活用する機会が増え、経営層からもデータドリブンなマーケティング、ビジネスの進めかたが求められています。
これまで店頭で伝えていた化粧品の価値を、いかにデジタルで伝えられるか。2、3年をかけて変化し、答えが見えてくるのではと考えていたのですが、コロナ禍により半年間で一気に加速したと感じています。音楽業界はいかがですか?
大崎(スペースシャワーネットワーク) 私も営業職からスタートし、3年目からはライブイベントや特別番組のプロモーションを担当、4年目となる今年からデジタルプロモーション業務などを担うマーケティング部に異動しました。専任チームが作成したDomoのダッシュボードを見て、コミュニケーション施策のPDCAを回していくのが仕事です。Domoのダッシュボードは、メールで週報のように配信され、誰もが見ることができます。今朝もちょうど、ダッシュボードを見ながら打ち合わせを行ってきました。
私が見ているアーティストごとのダッシュボードには、最上部に売上を、その下に各サブスクリプションサービスごとの配信結果や、CDの販売状況、SNSのクチコミ等を表示しています。これらのデータから、さらに売上を上げていくにはどうしたらいいかをアイディアを出し、施策を実行していきます。
音楽業界では、早くからデジタル配信に移行したこともあり、ダウンロードやサブスクリプション等の形式への対応が求められました。デジタル化によりデータ取得は容易になりましたが、マーケティングやビジネスのやりかたをすぐにデータドリブンに切り替えるのは難しいですよね。従来の定例会議は、Excelやスプレッドシートで作成したグラフをプリントアウトして持ち寄るというアナログなやりかたで、データを見ても次のアクションへとつなげるスピードが遅かったんです。社員の数字への意識を高めるためにも、リアルタイムに数字を見てスピーディーにPDCAを回していくため、Domoのようなツールの活用は必須だと思います。
誰もが見たくなるダッシュボードで次のアクションを先送りしない
堀 私たちもデータ分析はExcelから始めました。人を介して価値を伝えるのが強みだった時代と比較すると、デジタルは比較にならないほど膨大なデータを扱うことになります。そして、それをどう解釈するかは多くの企業が悩んでいるのではないでしょうか。当社も、オプト様のようなパートナー企業様に入っていただいてお力添えいただいています。
一方で、各部署がそれぞれ特化したツールを持ち、データが点在しているという悩みもありました。それぞれのツールを用いればデータを取得することはできるのですが、その都度作業が必要になり、部署をまたいで全体を見るのが難しくなる。それをまとめるためにも、Domoの活用を広げていきたいと考えています。
大崎 当社は、Excelやスプレッドシートの次がDomoでした。私のように現場で働く者からするとDomoは本当に便利です。毎回Excelでグラフを作り、セルがズレたら修正して、プリントアウトして……を繰り返していた時間を、別の業務に使えるようになりとても助かっています。他のメンバーからも、「すぐにアクションが起こせる」との声を聞いています。
今日、ある特定の曲が急に売れているのはなぜだろう。地上波で取り上げられたからだ。それなら今すぐ追い風になるようSNSで盛り上げよう、といったことがリアルタイムに行えます。紙の資料を持ち寄っていた頃は、次の週報を待つようなスピード感だったのでとても大きな変化だと思います。
このように会社全体がデータドリブンになっていくには、データに強い者、Domoのようなツールにすぐに馴染める者以外のメンバーを支援することが重要ですよね。
堀 かっこいいダッシュボードを作りたいのではなく、マーケティングのPDCAを早く回したいという目的でDomoを選びましたが、Domoには誰もが見たくなるかっこ良さがあり、それは重要なことだと思っています。Excel職人やパワポ職人のように、得意な人だけがそのスキルに磨きをかけるのではなく、誰が作ってもある程度見た目が良くて、もっと見たくなるようにしていきたい。それができるのがDomoだと思っています。
多くのメンバーがDomoを見るようになると、役割ごとに求められるものも変わりますよね。たとえば、施策を担当する現場と、施策の結果をまとめて見る経営層はひとつのダッシュボードを見ていますか?
大崎 経営層が見るものと現場が見るものは分けて作っています。経営層にはパッとひと目でわかりやすいように、現場は掘り下げてアイディアが浮かぶようなつくりになっています。
堀 理想を言えば、誰もがひとつの画面を見ることで完結させたいところですが、過渡期には柔軟な対応も必要になりますよね。
変化する販売、問われるROI データドリブンな環境づくりへ
堀 当社では、ECのデータはDomoでダッシュボード化しています。やはりECは施策から売上まで一連の流れが早く、データもすぐに上がってきますよね。データドリブンなビジネスを行っていくうえで、ECでマーケティングの高速なPDCAを回していくことは、とても参考になると思います。
大崎 当社にはさまざまなECサイトがあるのですが、広い視野でECを見れば、音楽業界は課金形式のライブ配信が流行しています。当社ではオンライン・ライブハウスとして「LIVEWIRE」というサービスを提供し、アーティストのライブ配信を行っています。すでにニーズがあることがわかっていますし、ライブ配信だけでなく当社で運営するYouTubeチャンネルと連携してオリジナル動画を投稿するなど、さまざまな取り組みを行っているところです。将来的には、これらライブ配信での成果や、サブスクリプションの再生数、物販の売上データなどを掛け合わせることで、さらにデータドリブンを加速させていければと思っています。
堀 ライブと言えば、化粧品業界ではライブコマースがブームで、とくに中国では日本よりも活発です。ECに限らず、リアルな店頭で商品の価値を感じていただくためにも、動画を活用したコミュニケーションへ積極的な投資を加速させています。
従来は、あるプロモーション施策を実施し、PV等の成果と、売上への貢献を示すことが私たちの仕事でした。しかし、コミュニケーションや販売の場がデジタルに移行していることから、ますますROIが問われていると感じています。データドリブンな取り組みで、売上やブランド価値向上に貢献していくためにも、必要なデータをきちんと取得することと、その分析結果がわかりやすく視覚化されることは重要ですよね。
大崎 わかりやすく言うと以前は、マスメディアに広告を出した結果、CDが何枚売れたといった粒度でしかマーケティング施策の成果が見えませんでした。それがデジタル化により、たとえばSNS広告に出稿したらこれだけのエンゲージメントが出たといった、1施策ごとのデータが取得できるようになりました。前回の数値と比較した結果、今回の目標はこうしようと、数値目標を掲げて実行できるようになったのは良いことだと考えています。
対談を終えて
堀 今日は、実際のダッシュボードを差し支えない範囲で見せていただきありがとうございました。Domoの活用やデータドリブンにしていくことは会社にとっても必要なことだと信じ、頑張ってやっていこうと思っているのですが、さまざまな障害があって心が折れそうになることもあります。同じようにDomoの活用や、アナログに強みがあった企業でデジタル化に取り組んでいらっしゃる大崎さんとお話しできて、励まされました。
大崎 堀さんが作成された画面を拝見し、また意見交換もさせていただいて、もっと頑張らなければいけないと刺激を受けました。マーケティング部門として、Domoの使いかたやデータの解釈のしかたなどについて、社内のほかの部署のメンバーから頼りにしてもらえるのはやりがいがありますよね。すでに、施策や売上の数字がDomoを活用することで伸びていますが、これからもますます活用し、社内の数字意識を高めていきたいと思います。