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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

ECzine Day 2019 KANSAI レポート(AD)

アパレル特化型AIで次のクリエイションの原資を生む ニューロープの挑戦

 アパレル業界で新たにユニークなサービスが注目を集めている。ニューロープの「#CBK scnnr(カブキスキャナ)」がそれだ。掲載商品を提携ECサイトで購入できるスナップメディア「#CBK」を2014年から運営していた同社が、蓄積してきた商品やコーディネートのデータをもとに開発したアパレル特化型AIは、ニッセンや講談社、アダストリアなど大手企業のECサイトに導入されている。2019年10月25日に「ECzine Day 2019 KANSAI」にて行われたセッションでは、代表取締役の酒井聡氏のほか、導入企業であるニッセンの木室嘉之氏も登壇し、サービスの全容やファッションテックのありかたについて語った。

スナップメディア運営の挫折をバネにアパレル特化型AIを開発

株式会社ニューロープ 代表取締役 酒井聡氏

 ファッションAIサービス「#CBK scnnr」を提供するニューロープ。アパレル専門家の知識やモデルのセンスを人力でデータ化し、AIに覚え込ませることでスタイリング提案やトレンド予測が行えるサービスだ。

 サービスの原型は2014年に作られたスナップメディア「#CBK」にある。掲載されたモデルのスナップ写真から気になる商品を提携ECサイトで買える仕組みだったが、キュレーションメディア全盛期だった当時、思うように収益を伸ばすことができなかった。

 #CBKで蓄積した大量の教師データをもとにAIの開発をスタートさせ、2017年春にリリースした#CBK scnnrはアパレル各社から多くの注目を集めるサービスとなった。大手ファッション通販サイトの「MAGASEEK」には、インスタグラマーのスナップなどから類似商品をわずか1秒で検索できるビジュアルサーチの機能を提供。集英社が運営するモール「FLAG SHOP」では、#CBK時代に蓄積されたコーディネートデータを活かしたスタイリング提案によって複数点買いを促した。

 従来型のレコメンドが購入履歴に基づいて行われていたのに対し、#CBK scnnrの特徴はアイテムの類似性や着合わせを軸にレコメンドが行われ、それまでにない新しい切り口でユーザーの購買を後押しできる点にある。

 早くからアパレル特化のAI開発に注力してきたニューロープ。その理由について酒井氏はこう語った。

「医療や自動車の分野とは違い、使い方によっては良い意味で80%くらいの精度でも社会実装できるのがアパレルAIの強みだと思っています。加えてアパレルの分野には膨大なデータが存在しているので、AIとは相性が良い。私たちはこのドメインから革新を起こしていきたいと考えました」

実店舗の接客支援まで ECだけにとどまらないアパレルAIのマルチな活用事例

 ここで、実際に#CBK scnnrを導入しているニッセンの木室氏が壇上に呼ばれた。木室氏はニッセンが運営する日本最大級のアウトレットモール「BRANDELI(ブランデリ)」の事業責任者を務めている。600を超えるブランドのA品だけを取り扱い、ブランド側が倉庫に商品を納めるだけで、ささげから商品撮影までをBRANDELI側が代行してくれる。

株式会社ニッセン セールス本部サイト開発部 BRANDELIチーム マネージャー 木室嘉之氏

 BRANDELIはアウトレットという特性上、扱う品番数が3万と多い一方で1品番あたりの奥行きがないため、商品ページの作り込みがしにくいという課題を抱えていた。そこで#CBK scnnrが提供する「類似アイテムプラグイン」という機能を導入した。この機能は、AIが商品画像を認識し、画像に写り込んだ全アイテムの類似商品を自動でレコメンドできるというものだ。

「一般的なレコメンドのように、よく閲覧される商品が表示されるのではなく、画像に写り込む靴やカバンなどすべての商品が幅広くレコメンドされる点に魅力を感じました」(木室氏)

 毎日新着アイテムが更新されるBRANDELI。メルマガも毎日配信されており、商品やキャンペーンの案内が主な内容となるが、コンテンツのマンネリ化が悩みの種だったという。そこで、ニューロープが運営するマガジンサイト「#CBK magazine」の記事内で紹介されたアイテムに似た商品をBRANDELIで購入できるよう新たな導線を作った。木室氏は実施の手応えをこう語った。

「当該記事はメルマガでも取り上げているので、会員に最新のトレンド情報をお届けしつつ購買へもつなげることができています。パラメーターを設定するだけなので運用が楽な点もポイントが高いです」

 酒井氏は他にもディノス・セシールとのユニークな取り組みを紹介した。カタログ通販で知られる同社だが、#CBK scnnrのAI技術によって顧客の購入データとInstagramの投稿などから抽出した旬のコーディネート例を掛け合わせ、顧客別にパーソナライズされた小冊子を発行している。この取り組みは第33回全日本DM大賞でグランプリを受賞した。

 #CBK scnnrの技術はECだけにとどまらない。実店舗に来店した顧客のコーディネートをデジタルサイネージで捉え、そのコーディネートにマッチするアイテムを画面上に提案する接客支援も行うことができる。また、監視カメラの映像から来店客のコーディネート、表情、年齢などを分析してマーケティングを支援することも可能だという。他にも、AIにファッションアイテムの柄を大量に学習させてオリジナルの柄を生成するなど、可能性は広がるばかりだ。

AIで生んだ利益を次のクリエイションの原資に ニューロープが目指すファッションテックのありかた

 酒井氏は、近年問題視されている衣服廃棄にも#CBK scnnrの技術が有効だと語った。

「売れ残った大量の衣服は焼却処分されています。このことは自然環境への負荷はもちろん、企業の収益性にも大きく影響しています。そこで、たとえば#CBK scnnrを通してSNS上のコーディネート画像を分析し、トレンド予測を行うことで商品開発の段階から売れ残りの対策を打つことができます」

 また、AIによるタグ付けで商品を特徴分類したうえで過去の売り上げデータを分析する、需要予測にも取り組んでいる。出力された統計モデルにこれから発注しようとしている商品の特徴を入力すると、最適な発注数や改善提案を行ってくれるというものだ。BRANDELIとも、同様のアプローチでプライシングの最適化などのPoCを進めている。

 衣服廃棄の問題を提起する一方で、それは「ファッション業界の努力の裏返しでもある」と酒井氏は話した。

「売れるものだけを作っていては多様性が失われ、そこにクリエイションは生まれ得ません。デザイナーやMDがシーズンごとに多様なスタイルを提案し、消費者が手に入れやすいようにとさまざまなチャネルで提供した結果として在庫が残ってしまう。これは業界が生み出している価値の裏返しであり、誰かの悪意がもたらしているものではありません。AIの力で売れる商品・売れにくい商品、それぞれの在庫を適切に持ち、売り切り、利益をしっかり残して次のクリエイションの原資にする。私たちはそういうサイクルを回すお手伝いをしていきたいと考えています」

 #CBK scnnrを導入すれば、月額3万円〜でAIの技術を施策に活用することができる。ニューロープは今後、台湾やタイなどの東南アジアを中心にサービスのグローバル展開を視野に入れており、エンジニア中心の多国籍チームで開発と営業に取り組んでいる。

 酒井氏は「クリエイターをエンパワメントしていきたい」というメッセージを最後に、講演を締めた。

#CBK scnnrに関するお問い合わせはこちら

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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