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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

ECホットトピックス(AD)

顧客体験はパーソナライズで向上 アバナードとサイトコアで実現するエクスペリエンスeコマースとは

 ECサイトは単なる決済手段ではなく、顧客のニーズや期待に沿ったエクスペリエンスを提供することで長期的な顧客との関係を築く「エクスペリエンスeコマース」であることが求められている。「エクスペリエンスeコマース」の実現を目指し、パートナーシップを組むアバナードとサイトコアは、共催でセミナーを開催。デジタル時代に「変わりゆくモノを売る」の根底にある考えや手法を紹介するとともに、日本のECビジネスの課題と未来を考える機会を提供した。

デジタル=テクノロジーではなくイノベーション

 5月30日、アバナードとサイトコアは「大規模ECには必須となる“顧客体験”というファクター」と題しセミナーを開催した。

 セミナー冒頭、サイトコアの酒井代表は「eコマースや電子マネーの普及が進みモノがあふれる一方で、消費者が利用するショッピングサイトは限定されている」と指摘した。Amazonのようなメガサイトや、特定の製品を購入できる専門サイト、比較して購入できるサイトなどに消費者が集中しているためだ。これらのサイトに消費者を独占されないためにも、企業はより良い顧客体験を提供し続けなければいけない。カスタマーエクスペリエンスの時代でどのようにモノを売るのか。その考えかたや具体例、ソリューションを紹介するのが本セミナーの目的である。

サイトコア株式会社 代表取締役 酒井秀樹氏

 基調講演に登壇したのは、アバナード株式会社でデジタル最高顧問を務め、青山学院大学 地球社会共生学部でも教鞭を執る松永エリック・匡史氏だ。

 講演は「デジタルとは何か」という問いから出発した。アメリカでは既に5,000名を超える在任者がいると言われ、その立場が確立されているCDO(Chief Digital Officer、最高デジタル責任者)。CDO Club Japanの立ち上げに携わった松永氏は、同クラブのトップであるデビッド・マッソンに同じ問いを投げかけた。

 「デビッドは、アメリカで最初にデジタルへ取り組んだ企業としてNapsterとMTVの名前を挙げました。それはなぜか。最新の技術を使っていたという意味ではなく、Napsterは音楽の聴きかたを、MTVは音楽の作りかたを一新し、革命を起こしたからです。デジタルはイノベーションだと彼はきっぱり言いました。このことがわかっていないうちは、日本でCDOは浸透しません」

 イノベーションは消費者の側でも起こっていると言える。デジタルネイティブと呼ばれる若年層に、その変化は顕著だ。物心がついた時からインターネットを中心としたインフラがすべて整っているデジタルネイティブは、今後のECにおける主要な購買層でもある。彼らのことをきちんと理解することが、新しい商売を考えるにあたって重要だと松永氏は語る。

 たとえば、ショッピングにおける行動パターンの違いについて。特定の商品に興味を持ち、購買意欲が高まってアクションを起こすというデジタル普及前のショッピングから、まずは商品を検索し、興味のある商品が見つかったらアクションを起こすというショッピングへと変わってきているが、デジタルネイティブ層のショッピングは検索すらしないと言う。

 「検索もせず、興味も持たず、それでもモノを買う時代になってきています。サブスクリプションというビジネスモデルにその傾向が表れています。今までみなさんは、どこかで聴いたかっこいい音楽を自分で検索したり、レコードショップを漁りに行ったりして音楽を楽しんでいたと思いますが、最近はSpotifyなどのサービスによって、自分が好きな音楽と似た傾向の音楽が自動的に流れてきます。この場合、音楽が勝手に流れているだけでインタレストからアクションがまったく起きていませんが、毎月料金は発生しています。我々は、それが当たり前となったデジタルネイティブ層に対してどのようにモノを売っていくか考えなければなりません」

アバナード株式会社 デジタル最高顧問/青山学院大学 地球社会共生学部 教授 (国際ビジネス) 松永エリック・匡史氏

 デジタルネイティブ層にモノを売る際、必ず押さえておくべきポイントがソーシャルとフリーミアムだ。

 「デジタルネイティブの場合、購買の動機を自分ではなく他者に求める傾向が強いと言えます。自分の好みより他の人がいいね!を押しているかどうかを重視して商品を買ったり、自分が購入した商品に他の人からの強い共感を求めたりするケースは少なくありません。また、幼少時から親のスマホで無料のゲームをダウンロードしプレイしているようなデジタルネイティブ世代は、オンラインでお金を払うという感覚が希薄です。彼らにお金を払ってもらうことがいかにたいへんか、私たちは覚えておく必要があります」

 デジタル時代にモノを売るために必要なこととして、松永氏はこうコメントして講演を締めた。

 「今まではCRMという考えかたのもとお客様の情報を分析していましたが、買っている人だけ分析していても仕方ありません。まだ買っていない人やビジネスパートナーの動向、さらには社内メンバーの反応も分析する必要があります。全方位のニーズを読み取るインフラが整っていなければビジネスが回らない時代になっています」

リテールもメーカーも 多様な成功事例を紹介

 第二部でまず登壇したのは、サイトコアでコマースを担当する梅田まゆみ氏だ。企業のカスタマーエクスペリエンス向上を成功させてきたサイトコアの事例を紹介する。

サイトコア株式会社 コマース シニアセールスマネージャー 梅田まゆみ氏

 サイトコアが目指す「パーソナライズされたエクスペリエンス」の身近な例として、梅田氏は自身の体験を紹介した。

 「ある日、勤務中にPCでFacebookを開くと私が以前購入したことのあるブランドの新しいワンピースが入荷したことを知らせる動画が流れてきました。ひとまずそのワンピースをカートに入れ、翌朝ワンピースの色を決めるためにスマホアプリでカートを開くとクーポン付きのメールが届いたので、そのクーポンを利用してワンピースの購入を完了しました。その直後、街中で同じブランドの靴の広告をデジタルサイネージで見かけた私はその靴が欲しくなり、カスタマーセンターに電話でさきほど注文したワンピースとこの靴を一緒に購入したいと問い合わせました。コールセンターでは私が何を見て何を買ったかが一目瞭然なので、購入処理を行ってくれ、翌々日にはワンピースと靴が同時に手元へ届きました。私はInstagramに購入した商品を投稿します。消費者はこのサイクルをぐるぐる回しています」

 このケースにおいて、もしサイトで半日おきのバッチ処理が行われて翌朝スマホアプリのカート内にワンピースが入っていなければ、カスタマーエクスペリエンスは途切れてしまう。また、もしブランド側がアプリでワンピースを購入した人物と街中で靴のサイネージ広告を見た人物を同じ梅田氏と認識していなければパーソナライズも不可能だ。パーソナライズされたカスタマーエクスペリエンスを届けることのできるツールがサイトコアにはあるという。サイトコアの「エクスペリエンス eコマース」がまさにそれだ。

 まずは顧客のペルソナを設定し、カスタマージャーニーのシナリオを描く。収集したデータをもとに顧客が心地よいと感じるコンテンツをあらゆるタッチポイントに出す。購買が発生した場合は購買履歴や行動履歴のようなデータをエクスペリエンスデータベースに貯め、経営の資産として分析やマーケティングに活用する。これら一連の仕組みをサイトコアは「エクスペリエンス eコマース」として提供している。「エクスペリエンス eコマース」を利用する企業は、食品消費財メーカーからリテールまで多岐にわたる。ここからは実際に「エクスペリエンス eコマース」を導入し成果を上げた企業の事例が紹介された。

 日曜大工大国オーストラリアのホームセンターでは商品点数とそれに付随するコンテンツの数が多く、顧客への展開方法に悩んでいた。「エクスペリエンス eコマース」を導入したところ、見事なコンテンツアンドコマースを実現させることができた。

 「たとえば『キッチン』というテーマを設け、そこにキッチンのリノベーションを得意とする店員のビデオを掲載します。リノベーションの様子をビフォーアフターで見せ、ビデオ内に登場したツールや部品が自動的にカートインする仕組みを設け、さらにその商品に適用できる10%オフクーポンを配布したところ、コンテンツを売り上げに貢献させることができました」

 Oreoを製造販売しているモンデリーズ社の課題は、消費者とのエンゲージメントの弱さだった。サイトコアがサポートに入り、OREO Music Boxというプロモーションをオンラインで実施した。Oreoクッキーをレコード盤に見立て、一度かじって置くと流れる音楽が変わるという仕掛けを盛り込み、Amazon、中国のマーケットプレイス、自社のオンラインストアで販売した。

 これにより、消費者とエンゲージするためのタッチポイントをばらまくことができただけでなく、Oreoクッキーがただのお菓子としてだけでなくガジェットとしても売れるようになり、ミレニアル世代を惹きつけた。この取り組みから得たフィードバックを製造チームや小売店にも還元することで、新商品の開発や店舗でのプロモーションにも活用することができた。

 パーソナライゼーションで顧客とのエンゲージメントを高めた好事例として紹介されたのは、オーストラリアのオーガニック化粧品メーカーの取り組みだ。サイトコアが構築したサイトはCookieによって訪問者を特定の個人として認識することができる。初回訪問者には企業紹介を行い、同じ人が別の日にサイトへ戻って来た際にこの紹介が繰り返されるのではなく、商品の紹介を行う。この仕掛けによってこの化粧品メーカーは、オンラインのエンゲージメントを5%向上させることに成功した。

パーソナライズされた顧客体験はいかにして実現可能か

 事例紹介の後は、サイトコアでセールスを担当する原水氏にバトンタッチ。「エクスペリエンス eコマース」の具体的な機能を、デモを交えながら紹介した。

セールス グループ シニアプリセールスマネージャー 原水真一氏

 サイトコアの強みは、Cookieベースでユーザーをトラッキングできる点にある。たとえば、検索サイトでホームシアターの広告をクリックしたユーザーがいたとする。「エクスペリエンス eコマース」を使えば、このユーザーが自社サイトを訪れた際、トップページのローテーションバナーにホームシアター関連のバナーを表示させることができる。

 さらに、ユーザーのページ閲覧履歴をもとに興味関心のプロファイルを作成することも可能だ。たとえば、健康食品のサイトばかり見ているユーザーに対して「新規登録は初月1,000円、それ以降は月々2,000円」といった定期購入キャンペーンのバナーを出すことができる。

 加えて、匿名状態のユーザーとログイン状態のユーザーの情報を統合できるというから驚きだ。あるユーザーが匿名でカートに入れた商品と、サインインしてカートに入れた商品をマージすることができる。

 これは、サイトコアのエクスペリエンスエディターという見たまま編集のツールだ。たとえば、注文完了ページにバナーや動画を入れたい場合、コンテナーという部品を使えばドラッグアンドドロップでコンテンツを簡単に挿入することができる。コンテンツの出し分けも設定可能だ。通常は非表示にしておき、IPアドレスをもとに「東京在住の購入者にだけ東京のショールームのプロモーション動画を表示させる」というようなルールを作成することができる。

 通常、このような取り組みを行いたい場合は自社のシステム開発部門に依頼する流れが一般的だが、CMSと一体化した「エクスペリエンス eコマース」ならコンテンツとルールさえセッティングすれば簡単に出し分けを実行することができる。

 中断しているカートに対してメールでリマインドを行うMAツールの仕組みもサイトコアは提供している。メールアドレスを保有していない匿名ユーザーの場合、中断された商品として匿名プロファイルに記録される。

 カートイン/アウトのデータも残るため、カゴ落ちしやすい商品も一目瞭然だ。データをもとにその商品を買いやすくなるプロモーションを仕掛けたり、価格を見直したりすることが可能だ。

 サイトコアがデジタルマーケティングの世界で提供してきたさまざまな機能は、今やEコマースにも展開されている。カスタマーエクスペリエンスの改善を叶えるテクノロジーとして「エクスペリエンス eコマース」の果たす役割は大きい。(了)

 本セミナーの2セッションの講演資料をダウンロードいただだけます。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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