デザインにこだわる若年層向けスマホケースが人気
「ディーパークス」
スマホケースなど、アクセサリーの販売を手がける「ディーパークス」は、若年層へ、自社ECを積極的に活用したアプローチを行っている。
スマホケースの場合、大量生産・卸売の形態で取引されるのが一般的です。実際、韓国でも商店街の卸売業者が主な販売先で、彼らから仕入れたスマホケースを販売するEC事業者が多いです。そのため、一からスマホケースのブランディングに取り組む事業者は多くありません。
そんな業界慣行に従わず、スマホケースのECサイトとして成果を上げているのが、朴・スヨンCEO率いるディーパークスです。
朴CEOは、スマホケースのニーズが急増した2010年頃、市場調査を行いました。色が違うだけで特徴がない多くの商品を見て、視覚デザインを専攻した才能を活かした試作品の制作を始めました。
ユニークなデザインの試作品は、流通問題で悩んだりすることも多かったものの、卸売業者からは好評でした。これらの作品を消費者に直接販売することを目指し、2012年に自社ECサイトを開業しました。
リーズナブルな価格設定も魅力
自社ECでユーザーと直接コミュニケーションも
朴CEOによると、起業当初から商品のデザインにこだわる若年層に注目し、自社ECで直接彼らとやり取りを行ったそうです。また、中間流通を通さないため、リーズナブルな価格設定が可能であったことから、商品開発も活発に行いました。
耐久性に関しては、外部に頼らず自社独自のテストを実施。デザインチームでは、SNSでターゲットとなる若年層とコミュニケーションを取りながら戦略を立てたり、全品を手作業で制作したといいます。
このような取り組みから、ネットを中心に口コミが広がり、新規やリピーターからも問い合わせが殺到するようになりました。2015年に韓国のトレンドの発信地「弘大(ホンデ)」に実店舗を開業してから、同社商品を取り扱う店舗は20ヵ所にまで増加しています。
特に明洞(ミョンドン)店では、ECサイトやネットでディーパークスの商品を見た観光客の訪問も増えており、インバウンドの対応にも力を入れています。また、日本バイヤーからの問い合わせも増加したことから、2017年にグローバルECプラットフォーム「cafe24」で日本語のECサイトも開業しました。日本は、iPhoneなど、スマートフォンの利用者が多い有力市場なので、今後も積極的な取り組みを行う予定です。
チャットツール導入 ユーザーからは「返信が早くて満足」の声
ここからは、ディーパークスの朴CEOとの一問一答をお届けします。
―――なぜ、日本で展開を行おうと思ったのですか?
韓国で一定の成果が出た後、国内にとどまらず海外に向けてチャレンジをしたいという気持ちがありました。デザインや品質には自信があったので、海外のユーザーに知ってもらうことで、企業としてもさらなる成長ができる機会だと考えていました。また、日本は参入ハードルが高いと言われていますが、その分、日本のユーザーを満足させることができれば世界で通じるブランドになれると思ったのが、日本市場に参入した理由です。
―――ブランドのコンセプトやこだわりについて教えてください。
弊社は、ユーザーへ多彩なデザインの商品を提供することを目指しています。若年層のデザインに対するニーズに対応するため、新たなデザイン開発に常に取り組んでいます。そのため、ユーザーとコミュニケーションを取ったり、トレンドの分析を通じてユーザーに満足してもらうためのデザインを意識して制作しています。
―――ECサイト上でチャットツールを導入したきっかけは何ですか?導入後の反響や、数字の変化などがあれば教えてください。
チャットツールを使えば、若年層に向けて迅速に対応することができると思い、導入を決めました。導入後の正確な成果などについて確認することは難しいのですが、「問い合わせに対する返信が早くて満足している」とコメントするユーザーが多くなったように思います。
今後は日本やアジアでの実店舗展開も計画中
―――InstagramなどのSNS運用で心がけていること、工夫している点はありますか?
SNS運営の際は、ユーザーとのコミュニケーションを最優先に考えています。ユーザーの反応をリアルタイムで確認することで、商品に対する不満やニーズを素早く把握できるので、商品開発を行う際にも参考にしています。
――韓国の企業が日本でECサイトを展開する時に、大切だと思うことはありますか?
ターゲット層は同じですが、両国のユーザーの特徴を踏まえて事業を展開することが重要だと思います。実際、韓国でヒットしたデザインでも、日本では売れないケースもあり、好みには微妙な違いがあると感じています。たとえば、かわいいキャラクターやイラストを取り入れたデザインを好むのは似ていますが、日本は透明な材質を好むユーザーが多いようです。
海外展開の際は、進出国のユーザーに合わせた商品ラインナップが必要なので、日本の若年層の好みを反映した商品開発を行っています。
――今後行っていきたいことや挑戦していきたいことについて教えてください。
主力商品のスマホケースのみならず、差別化されたデザインの財布、バッグ、ノートなどのカテゴリーを拡大していきたいです。また、引き続きECサイトの展開に力を入れるとともに、日本やアジア市場における実店舗の展開も計画しています。