「お客様をコントロールしようとすると上手くいかない」試行錯誤の末、気づいたこと
川添(メガネスーパー、以下M) 前回、ECや店頭、アプリなど、それぞれだけで完結するのではなく、各チャネルやメディアの特性に応じて、お互いを行き来してもらえることがオムニチャネルの理想の形、というお話を伺いました。ただ、この形にたどり着くまでは試行錯誤の連続だったのではないでしょうか。
越智(ナノ・ユニバース、以下N) アプリリニューアルのお話を前回しましたが、実はその前はキュレーションアプリを作ろうという構想で動いていたんです。
その過程でなにより勉強になったのは、押しつけになってはいけないということです。そのアプリの中のコンテンツが面白いと、お客さんは当然その商品が欲しくなりますよね。でもその時アプリ内では購入することができず、そこからECサイトに飛ぶ仕様になっていました。アプリの中でウェブを読むのってすごく不便じゃないですか。そうなった時点で、どんなにコンテンツが面白くてもダメなんですよね。
川添(M) そこで今回のアプリのリニューアル時には、ネイティブ化することでスムーズに表示できるようにし、さらにアイテムにお気に入りをつけて自分好みのカタログを作ってもらうという、シンプルな形に行き着いたんですね。今オムニチャネルやアプリなど、やらなきゃいけないことが多くなっていますし、売り手側はどうしても機能をてんこ盛りにしがちですが、シンプルにしたほうがユーザーもブランド側もわかりやすい。アプリのお気に入り数の推移と、店舗の商品ディスプレイが連動しているか、しっかり在庫を確保できているかなど、追う指標とアクションも明確になりそうです。
越智(N) ツールありき、テクニカルありきのようになるのは違うのかなと思っています。こちらがおすすめしたい商品にお気に入りを押してほしいからといって、アプリにログインした途端、宣伝のポップアップをたくさん出すとか、そういうことをやり始めたらきっとダメなんですよ。お客様をコントロールしようとするとうまくいかない。あくまでECサイトの中で、お客さんが自然とお気に入りを押したくなるような要素を作っていくのが、僕達の仕事なんだと思います。
指標で今注目しているのは、店舗に設置してあるビーコンとアプリを連動させたチェックイン機能を使って、実際にアプリを見て店頭に来てくれた人の数字です。
そのデータを取り始めた理由のひとつは、この数値がコンテンツを作っているデザイナーの指標になればと考えたからです。ECの売上だけを指標にすると、商品をカートに入れてもらうことが目的になり、味気ないコンテンツが増えてしまう危険性があります。しかし、コンテンツ起点の来店までを成果とすれば、デザイナーの考えるデザインは変わるはずです。自分が作ったページを見てお店に足を運んでくれた人を数で示すことができれば、デザイナーのモチベーションにも繋がるかなと思っています。
もちろんECの売上も大事ですし、将来的には来店したけど購入に至らなかった人にリテンションする、ということもやるつもりではいるんですけどね。