前回の記事では、「初回購入時の敷居を高めることが粗利単価を向上させるためのカギになる」という説明をしました。
そしてそのためには、「価格帯が比較的安い買い物ををするためのお店ではない」という印象をお客様に与える必要があり、そのベースとなる考え方としてアンカリング効果について紹介しました。
今回は、粗利単価を実際に向上させることができた施策をいくつか紹介したいと思います。粗利単価について復習したい方は、先にこちらから本連載第1回目の記事をご覧ください。
施策(1) 送料が無料になる購入金額を値上げする
送料が無料になる購入金額を値上げすると、「あと少しの購入で送料が無料になる」と考えるお客様がついで買いをしますので、客単価も粗利単価も上がります。
では、一体どれぐらいの値上げが適切なのでしょうか。
弊社が自社運営しているベビー服ECは、もともと送料が無料になる購入金額が5,000円で、客単価は6,700円前後でした。
この状態から、送料が無料になる購入金額を7,000円、8,000円、10,000円と段階を踏んで値上げをしていったのですが、10,000円にした時に面白い傾向が現れました。
下記の表は、8,000円以上の購入で送料が無料だった2017年5月と、10,000円以上の購入で送料を無料にした2017年6月の客単価を比較したものです。それぞれの客単価帯に何%ずつ注文が分布しているかを表しています。
客単価帯 | 8,000円以上購入 | 10,000円以上購入 | 差 |
---|---|---|---|
20,000円以上 | 1.00% | 0.40% | -0.60% |
18,000円〜20,000円 | 0.90% | 0.10% | -0.80% |
16,000円〜18,000円 | 0.70% | 1.00% | +0.30% |
14,000円~16,000円 | 1.40% | 1.70% | + 0.30% |
12,000円~14,000円 | 2.70% | 3.70% | +1.00% |
10,000円~12,000円 | 7.00% | 15.80% | +8.80% |
9,000円~10,000円 | 7.80% | 7.20% | -0.60% |
8,000円~9,000円 | 16.70% | 3.20% | -13.50% |
7,000円~8,000円 | 9.50% | 5.40% | -4.10% |
6,000円~7,000円 | 6.00% | 8.00% | +2.00% |
5,000円~6,000円 | 8.70% | 11.30% | +2.60% |
4,000円~5,000円 | 12.80% | 14.00% | +1.20% |
3,000円~4,000円 | 14.30% | 17.00% | +2.70% |
2,000円~3,000円 | 7.40% | 7.50% | +0.10% |
2,000円未満 | 3.10% | 3.70% | 0.60% |
この表を見ると、送料が無料になる購入金額を10,000円以上にすると、客単価7,000円以上10,000円未満の注文件数が18.2%(0.6+13.5+4.1)も減少しています。
この結果からわかることは、7,000円〜10,000円ぐらいの買い物をされるお客様が、
- 送料を無料にするために10,000円以上で購入
- 諦めて7,000円未満で購入
という2パターンの反応を示したことにより、7,000円〜10,000円の注文件数が18.2%減少したということです。
7,000円〜10,000円のところで傾向が割れたということは、弊社の自社ECは7,000円〜10,000円ぐらいの注文をするお客様がメインターゲットである、ということになります。
それを受けて、弊社はもともと5,000円以上の購入で送料無料だったルールを、8,000円以上の購入で送料無料に変更しました。
その結果、客単価は7,000円〜7,500円ぐらいで推移するようになり、粗利単価も大きく向上しました。
まだ送料が無料になる購入価格を最適化していない方は、毎月1回ぐらいのペースで値上げをしながらこの表と同じようにデータを記録し、最適な送料無料の購入価格を見つけて下さい。
それだけのことで粗利単価は向上するかと思いますので、ぜひトライしていただければと思います。