検索、SEOを専門としたWebマーケティング支援を手がけるFaber Company(ファベルカンパニー)。「Faber」はラテン語で「職人」を意味している。職人=プロフェッショナルのノウハウなどを最新技術で再現し、広くWeb担当者に活用してもらうことをテーマに、「職人とテクノロジーの融合」を標榜する企業だ。
テクノロジーとしては、2015年3月に国立大学との産学共同研究でAI技術を活用した、コンテンツ&SEOプラットフォーム「MIERUCA(ミエルカ)」をリリース。現在750社以上に導入されている。 “日本発、海外”を目指しており、英語版リリースも控えているという。
コンテンツを重視した検索エンジン対策の必要性
講演のテーマは「コンテンツマーケティング」。月岡さんはコンテンツに強みがあるECサイトの例を紹介しながら、ECサイトにおいて「コンテンツ」が今後重要になってくると説明する。
その裏付けとして、検索エンジン利用に関するデータを紹介。購買ファネルの上流から下流まで、検索エンジンがより多く利用されていることから、「検索」の重要性を強調した。
また、検索キーワード(=クエリ)には3つのタイプがあることも説明。そのひとつが情報収集型の「インフォメーショナルクエリ」で、これが検索全体の8割を占める。これを「コンテンツクエリ」と位置づけた。
残り2割は、取引型の「トランザクショナルクエリ」と案内型の「ナビゲーショナルクエリ」。トランザクショナルクエリは購入などのコンバージョンに近い意図があるもの。ナビゲーショナルクエリは、ブランド名や商品名の「指名検索」などが代表的で、ある程度コンバージョンにも近い。2つを合わせて「コマースクエリ」とした。
「この買いにくる検索=コマースクエリは、リスティング広告で取るべきです。いくら広告費をかければいくらコンバージョンするか見えるので、費用対効果がわかりやすい。一方、情報収集のための検索=コンテンツクエリは、明確に商品がほしいわけではありません。そんなユーザーに『買ってください』と言って広告を出したとしても費用対効果は合いません。この8割のユーザーに広告費をかけずにリーチするには、やはり『検索』で来てもらうことになります。そこで重要なのが『コンテンツ』です」
コンテンツクエリで検索する潜在顧客にリーチするためには、ユーザーの「"検索意図"を把握した」コンテンツが必要なのだという。
検索意図の把握とは何か
ユーザーの検索意図を把握するには? まずはプラットフォームであるGoogleのアルゴリズムの進化を理解する必要がある。Googleアルゴリズム「ハミングバード」は、検索される言葉の意味や、意図を理解したうえで検索結果を最適化するものだ。
たとえば「掃除機 壊れた」と検索した時の、とある上位サイトには、掃除機の不調を故障かどうか見極めるためのコンテンツがある。ただ「掃除機 壊れた」の文言は、サイト内のどこにも入っていない。それでも上位表示しているということは、「掃除機 壊れた」で検索するユーザーは「掃除機は壊れてしまっているのか、その見極め方法を知りたい」のだとGoogleは解釈し、このような検索結果を返していると言える。
「単純にキーワードが入っているから、検索にヒットするという時代はすでに終わっています。ユーザーがなぜその検索しているのかをきちんと考えて、コンテンツ設計しなければならないということです」
コンテンツマーケティングとは、自社の商品やサービスのよさをアピールすることではなく、ユーザーが知りたい・求める=「検索意図」に沿った情報を提供すること。では、どのように検索意図を把握してコンテンツを企画すればいいのか。続いて、実践的な3つのステップを紹介した。
コンテンツ企画の3ステップ
検索意図を把握したコンテンツ企画を進めるためには、大きく3つのステップがあるという。
1.サジェストキーワードを取得し、整理する
まずは、自社ビジネスに関係するキーワードを起点とした「サジェストキーワード」を取得する。「サジェストキーワード」とは、検索エンジンの検索窓に表示される候補キーワード群のこと。主にユーザーが検索する頻度において表示されているという。無料のWebサービスでも一括で取得できる。
ユーザーが実際に「検索するキーワード」をユーザーが知りたい内容ごとに整理すれば、どんなコンテンツ展開をすればいいかがわかってくる。これがコンテンツ企画の第一歩だと月岡さんは語る。
「よく『コンテンツを書き続けられるか心配だ』という相談もありますが、サジェストキーワードを参考にすれば、かなりアイデアは出てきます。当分の間はネタに困ることはないでしょう」
2.検索上位表示サイトでユーザーニーズを知る
前述のとおり、Googleアルゴリズムはユーザーの意図を理解した検索結果を表示している。つまり、いま検索で上位表示しているサイトのコンテンツを読みこめば、「ユーザーが知りたいこと」を網羅できる可能性が高まる。ステップ2は、実際に決まったキーワードで検索して上位表示サイトを読み込むのだという。
「時間がない場合は、検索結果の<タイトル>を読むだけでも参考になります。ユーザーの置かれている状況、なぜ悩んでいるのか、その原因は何か、またその解決策は…などを調査していきます」
3.Q&Aサイトでニーズをさらに深掘りする
ステップ3として、「Q&Aサイト」の活用を挙げた。Q&Aサイトにはユーザーのリアルな悩みがたくさん集まっている。検索エンジン上では拾いきれなかった細かなニーズに気づくことができる。
「Q&Aサイトは『宝の山』です。Q&Aサイトの質問文をチェックして、Webの検索結果では得られなかった気づきをメモします。質問は100個ぐらい見るといいのではないでしょうか」
すでに多くのコンテンツが溢れるなか、当たり障りのない一般論を書いても意味がないと言う。Q&Aサイトの情報は、自社ならではの切り口、解決策、意見など、「プラスα」を探す糸口になると語った。
これら3ステップで得られた内容をもとに、コンテンツ構成案に落とし込んでいく。キーワードを意識したタイトル設定、検索結果に表示されるディスクリプションの内容、文章の論理構成なども重要だ。
最後に、構成案を元にして執筆する。コンテンツはなるべく社内で書くほうがよいが、リソースが割けない場合は外部ライターへの発注となる。ここでは社内の「発注スキルの向上」も必要だという。
「キーワードだけ決めて『こんな感じで書いて』と曖昧な依頼をしても、よいコンテンツは絶対に出来上がりません。さらに、はじめからよいコンテンツを書けるライターさんは少なく、出会えても100人に1人くらいの確率。依頼の精度を高める必要があるし、ちょっとくらい文章が上手くなくても、そのライターさんと一緒に成長するくらいのイメージでやったほうがいい」
講演の後半では、この3ステップを効率化できるツールの紹介を行った。Faber Companyが提供する「MIERUCA(ミエルカ)」だ。
ミエルカは、サジェストキーワード一括取得のほか、AI技術も活用して検索上位サイトなどの分析も行い、そのコンテンツにおける重要なテーマ・トピックを抽出してくれる。コンテンツ企画やSEOを効率的に、効果的に進めるソリューションだ。
コンテンツのリフォーム(改善)で集客が大幅アップ
そのミエルカを活用して同社が手がけたある事例では、「検索意図」を考慮してコンテンツを見直した結果、ターゲットキーワードでの検索順位が大幅に上昇。コンテンツリフォームの前後3か月を比較すると、アクセス数が10倍になった。その後も検索上位をキープし続け、ついには検索1位に。その時のアクセスは、リフォーム前の40倍にまで増加したという。
検索1位の場合、クリック率は約30%。この検索と同じだけの流入を広告出稿で獲得するとなると、かなりの広告費がかかる。広告費をかけずに多くのユーザーに訪問してもらえるコンテンツ施策には、集客効果以上の大きな価値がある。
「広告は出稿を止めたら露出ゼロですが、良いコンテンツは検索上位に留まり、流入を稼ぎ続けてくれます。広告は経費ですが、コンテンツは資産、投資です」
また、コンテンツマーケティングには、集客後のシナリオ=「出口戦略」も重要だと付け加えた。
「ECで『購入』しかコンバージョンがないとなると、購入から少し遠いコンテンツマーケティングは評価しづらい。その手前の指標として『中間コンバージョン』を作るのが大事。例えば、無料モニター登録やダウンロードコンテンツ配布で、メールアドレスなどの情報を取得できる仕掛けをしておく。そうすると、メルマガなどでユーザーと長期的な関係を築くキッカケになります」
最後に、「検索意図」把握のための3ステップを振り返りながら、時間がない場合は1ステップだけでもチェックしてほしいと語った月岡さん。ミエルカを活用すれば3ステップを効果的、効率的にできること。施策後の振り返りで重要な分析として、ヒートマップ機能やGoogle AnalyticsとGoogle Search Console連携によるサイト改善機能も充実していることを紹介して、講演を締めくくった。
「皆さんのサイトに良いコンテンツが増えれば、そのコンテンツを閲覧するユーザーもハッピーになります。潜在的なニーズを持つ、多くのユーザーに出会える皆さんもハッピー。そういうコンテンツがたくさん生まれると良いなと思っています。ご清聴ありがとうございました」(了)