スマートフォンで「その瞬間」「見つけられる」ことの重要性が増す
ECサイトの必須機能のひとつである「サイト内商品検索」。2017年10月に社名を「ZETA(ゼータ)」に変更した旧ゼロスタートは、2008年からソリューションを展開している老舗である。どんなソリューションも機能によりレイヤーが分けられるが、ZETAが提供する「ZETA SEARCH」は、大規模サイト向けのフルカスタマイズ型で、最上位に属する。
進化の早いIT業界においては、数年の間でまったく別物と言ってよい進化を遂げることもある。この数年間で、サイト内商品検索ソリューションの分野に、どのような変化が起きたのだろうか。
「当社がやっていることは、当初からそれほど変わりませんし、世間の『検索マーケティング』への理解もそれほど進歩していないため、啓蒙を続けています。検索マーケティングの中でも、『サイト内商品検索』への投資は、CRO(Conversion Rate Optimization、コンバージョン率最適化)への投資を意味します。広告宣伝と比較すると理解されにくいのですが、それでも広告の飽和が指摘されるようになるにつれ、CROへの関心は高まってきました。その背景には、スマートフォンの存在があります」(ZETA・山崎さん、以下同)
たとえば、BtoCのアパレルECとして躍進を続ける、ZOZOTOWNを展開するスタートトゥデイの2017年3月期決算発表会資料で「デバイス別出荷率」を見ると、実にスマートフォンが77.5%を占めている。一方で、スマートフォンとPCを比較した場合、スマートフォンのコンバージョンレートがPCより劣るのはよく知られるところだ。
「スマートフォンの普及により、ITやネットへのリテラシーがそれほど高くないユーザーが増え、EC利用者の裾野が広がっています。また、ECで販売される商品が、家電やデジタルコンテンツのようなエッジが立ったものより日用品が主流になり、探しにくくなっているのも要因です。ECでは、見つけてもらえなければ当然ながら買ってもらえない。たまたま見つかった、他社の製品が選ばれてしまう。これまで以上に、『見つけてもらえないとアウト』という状況になってきているのです」
不慣れなユーザーにスマートフォンで、多数の類似の商品の中から選んでもらう。それだけでもハードルが高いが、さらに企業に求められるのは「検索のリアルタイム性」だと山崎さんは言う。Googleも「マイクロモーメント」を提唱しているが、ECサイト内の商品検索に特化したZETA社では、数年前からその重要性を訴えてきた。
「サイト内検索において、キーワードを入力する、ドリルダウンで絞り込む、条件を変更して並び替える瞬間というのは、消費者のニーズをリアルタイムでとらえる最高のチャンスだと考えています。消費者が『商品を見せて!』と訴えかけてくれている、消費者とのコミュニケーションにおいて、非常に重要な瞬間なんです」
こうした背景がありながら、山崎さんが懸念しているのは、冒頭に述べたとおり、「検索マーケティング」への理解がそれほど進んでいないという日本企業の現状だ。
「検索マーケティングと言って、最初に思い浮かべるのはSEOでしょう。そのSEOとCROは、マーチャントサイトへの流入前・後と分けて考えると、わかりやすいと思います。流入前とはすなわち、広告による集客で、検索マーケティングの中では、重要視されお金が動いているところです。一方、流入後のCROは、そうではない。ウェブ接客やマーケティングオートメーションもCROに分類できると思いますが、これほど注目されているにもかかわらず、広告宣伝の予算と比較したら10分の1、100分の1だったりする。
もちろん、最初の流入がなければその後のコンバージョンも発生しないのですが、マーケティング投資の結果、収益を最大化するという視点で見れば、CROにもっとお金をかけてもいいはずです。当社にお声がけいただく企業様は、そうした意識が非常に高くていらっしゃいます。そうした企業様でも、CROはマーケティング投資でなく、システム投資だと認識されてしまう場合が多く、予算の確保に苦労されたりもします。ですから当社としてはまだまだ、サイト内商品検索の重要性を啓蒙する必要があると感じているわけです」
商品検索エンジン選びの基準は「処理速度」 速ければなんでもできる
このように、商品検索ソリューションベンダーとしてトップを走ってきたZETA社。表向きには啓蒙活動などを行いながら、自社のソリューションについては「地道に処理速度を上げてきた」と山崎さん。
「商品検索エンジンは、速度が速ければなんでもできると言っていいと思います。事業者様は、検索した瞬間にパーソナライズする、在庫をリアルタイムで表示するといったアイディアを思いつかれると思いますが、そうしたさまざまなアイディアを、処理速度が速いエンジンであれば実現できます。
当社がハイエンドなサイト内商品検索ソリューションとして、いちばんのシェアを持っているのは、何かしらのキラーファンクションを持っているからではなく、処理速度を地道に上げてきたことに尽きます。たとえばウェブ接客ツールで、ユーザーが離脱しそうになったらクーポンを提示するというアイディアで一時的に爆発的なCVR向上が見えたとしても、すぐに他社に真似され、差別化要因にはならなくなってしまう。一方で、エンジンの処理速度を少しずつ上げ続けるという地道な積み重ねは、一朝一夕には真似ができないことだと自負しています」
このように高機能なサイト内商品検索エンジンのポテンシャルを最大限に活かすには、導入する側の準備も必要になる。
「お客様に導入していただく際に、プロジェクトの6~7割の時間を『データ構造の決定』に割いています。とくに大手企業様の場合は、業務系のシステムもかかわってきます。在庫情報は基幹のサーバーに、売上ランキングは外部パートナーのレポートを見ている、といった具合にデータの持ちかたがバラバラなことが多い。昨今、データフィードに注目が集まっていますが、デジタル発の企業の対応が早く、アナログビジネスをやってきた企業が遅れがちなのは、データの整備に時間がかかるからなんです」
おそらく、部署を越えての連携も必要になるだろう。そうした手間を覚悟してまで、「ZETA SEARCH」のようなハイエンドなサイト内検索エンジンの導入に踏み切るのは、それ以前に利用していたソリューションに限界を感じているからだと言う。
「EC構築パッケージの付属機能で済ませていたけれど、それではアイディアが実現できないというお声を聞きます。アイディアとは、AさんとBさんで最適な検索結果を出し分ける、在庫状況を即時反映するといったことです。そもそもパッケージの付属機能や安価なソリューションは、すでに用意されているシナリオしか動かせなかったりします。一方、当社の『ZETA SEARCH』では、企業様が実現したいアイディアを、レシピとして1つひとつ追加するというやりかたをとっています。よって、実現できないアイディアはないと言っても過言ではないと思います」
検索結果のパーソナライズや在庫のリアルタイム反映など、高度な施策を実施したいとなれば、それなりの投資が必要になるわけだが、覚悟が求められるのはソリューションを提供するベンダー側も同様だ。象徴的なのは、2017年3月、Googleが提供する有料のサイト内検索エンジン「Google Site Search」の2018年4月1日での提供終了が発表されたこと。
「そもそも、サイト内検索と商品検索は違うソリューションですが……、実はGoogleは、『Google Commerce Search』というハイエンドな商品検索エンジンを持っていましたが、何年か前に撤退しています。今回の発表は、『ついにサイト内検索(有料版)も撤退か』というふうに受け止めました。商品検索は、サイト内検索が対応している文字や画像、アクセス数といったシンプルなデータだけでなく、商品の価格帯、売れ筋のランキング、SKUも含めた在庫情報など、かなり複雑な条件でドリルダウンできる技術力が求められます。Googleが撤退した順序も、難しい順と解釈できます。
商品検索は、高い技術力が求められるわりに投資する企業が少ないので、ビジネスとしてなかなか採算があわないのではないでしょうか。Googleだけでなくほかのベンダーも、より簡単で安価なソリューションにし、ユーザーの裾野を広げる方向に向かうか、商品検索をやめてサイト内検索サービスだけを提供したりしている。ハイエンドな商品検索ソリューションを提供する企業として、当社は、最後の砦のようになっているかもしれません」
ユーザーからの客観的な情報「レビュー」も加えさらなるCROへ
商品検索と「補完しあう関係」にあると考え、ZETA社が力を入れているのが「レビュー」だ。
「日本でもAmazonの脅威が言われて久しいですが、米国はECシェア4割をAmazonが占め、寡占状態にあると言えます。米Amazonの強さの秘訣が、商品レビューの多さです。何か買おうと思ったら、GoogleでなくAmazonで検索し、その商品について書かれているレビューを読んで判断するという消費行動になっている。日本ではレビューというと、ネガティブなコメントが書かれる印象のほうが強いのか、とくに独自サイトではそれほど力が入っていません。しかし、米Amazonに倣い、Amazon.co.jpも力を入れてくるでしょうから、2年ほどで日本のレビューの存在感も変わるのではないでしょうか」
消費者がレビューを求める背景には、インターネットの特徴のひとつであるインタラクティブ性の浸透にあると山崎さんは言う。スマートフォンの普及、SNSの利用が進むに連れ、企業が一方的に発信する、企業側にとって都合が良い情報だけでは、消費者が納得しなくなっているのだ。
「日本では、Amazonの配送スピードに衝撃を受け、楽天市場に出店している店舗、独自サイトに注力している事業者ともに、配送のクオリティを上げてきました。一方で、物流問題が社会問題化したこともあり、消費者がそれほどスピードを求めなくなってきている。結果的に、日本のECはAmazonの寡占状態にはならず、個々の事業者も戦える余地があるのではないかと考えています。
しかしながら、いったんは消費者がAmazonの配送スピードを求めたように、Amazonの豊富なレビューが便利となれば、他のサイトにも求める可能性がある。自分が消費者の立場に立ったとき、『レビューが0件の商品はちょっと不安だな』と感じませんか? となると、レビューはすでにコンバージョンに影響しているわけです。CROの視点からも、今後数年で、レビューの重要性はさらに増していくと考えられます」
そうした状況が到来してから、あわてて消費者のレビューを無理矢理集めるような行動に出ても、消費者が見破ってしまう。今から地道に、厳しい評価も含めて集めていく覚悟が必要だ。
「事業者側は、クチコミを書くことに対するインセンティブをどう与えていくかに知恵を絞るべきだと思います。たとえば『クチコミを書いていただいたら、次回のご来店時に◯%オフのサービスをします』というお店があったら、悪いことを書こうとする人ってあまりいないと思いませんか? 自分が、今後も買い物を続けたいと、ファンになっているお店なら、なおさらですよね。消費者のメリットに貢献するという姿勢が重要だと考えています」
今回記事に登場したZETAのソリューションはこちら!
ユーザーの欲しいに応えて「接客」するサイト内検索エンジン「ZETA SEARCH」