「ZenClerk」の開発の動機
Emotion Intelligenceでは、2014年頃から機械学習エンジンを搭載したクーポン配信システム「ZenClerk(ゼンクラーク)」を開発・提供してきた。音田氏は、共同創業者の1人が、Amazonで本を探している操作を背中越しに見ていた時に、表情や目線を見なくてもマウスやスクロールの動きだけで「この商品を買うだろうな」という購買の意欲を直感的に感じ、それを機械学習エンジンで再現できないかと試してみたのが開発の着想だと話す。
つまり、サイト訪問ユーザーの無意識の動き(購買行動)である、マウスやスクロールの動き方、レビューの閲覧、画像の切り替え。さらに商品の閲覧履歴など「1PV以下の動き」をデータにしてパラメーター化し、それをリアルタイムに解析してユーザーの次の行動を予測するのだ。
その上で機械学習エンジンが「今クーポンを出せば購買への転換率が向上する」と判断した場合に、自動でクーポンを配信する。
音田氏は、ZenClerkを「クーポンを配らないサービス」と表現する。クーポンを出さなくても買う可能性の高いユーザーにはクーポンを配布することなく、クーポンによって行動(購買有無)を変える可能性のあるユーザーにのみ、クーポンを配布する。それがZenClerkの特徴である。
「zenclerk lite」とは
ECサイトは、月間1,000万円程度の売上でも、4人以下でショップを運営している場合も多く、非常に忙しいなかで、新しいツールを導入して効果的に運用するためには大変な労力を必要とする。
「zenclerk lite」は、中小規模のECサイトに対応したサービスで、月間g3,000程度のCV数を必要としていたZenClerkのおいしいところだけを濃縮したサービスだと言う。
ZenClerkはサイトごとに同社のデータサイエンティストがサイト解析・ユーザーの行動解析を行い、クーポンの内容など、いわゆる「キャンペーン」の設計もZenClerkのコンサルタントが行っている。ある種、完全カスタマイズサービスだと言うことができる。
しかし、ユーザー行動解析の精度を高く保つために、ある程度まとまったCV数を必要とする。zenclerk liteはそういったサイトごとの解析を行わない代わりに、同社がZenClerkの運用で培ったユーザーの購買行動の特徴を初期エンジンに搭載し、CV数の少ないサイトでも効果を出せるよう設計されたのである。
音田氏は、「広告やマーケティングなどは自動化されるべきで、ECサイト担当者は商品の仕入れ、商品の開発、あとはお客さんとのつながりの構築に注力すべき」と話す。それだけに、このzenclerk liteは、設定がシンプルで、必要なことは、すべてAIが実行してくれるのである。
zenclerk liteもZenClerkと同様に、ユーザーの行動データが蓄積されるほど、機械学習によるユーザーの行動予測の精度が強化されていく。また、購買につながる最後のひと押しとして自動でクーポンを配信するところまでワンストップで実施されるため、ECサイト担当者の負荷を大きく下げることができる。