ECでクーポン施策を行わなかった場合の売上を推定するには
前回の記事では実店舗におけるクーポン施策の評価について、「クーポン施策を行わなかった場合の売上」を知ることで、CPAやROASといった指標で評価できると説明しました。では、ECではどのようにして「クーポン施策を行わなかった場合の売上」を推定すればよいのでしょう。
実店舗においては、複数の地域の実店舗のデータを比較するという形で推定を行いました。 ECサイトは地域ごとに存在しているわけではないので、地域間の比較ということは行えませんが、ここで重要なのは「比較」というキーワードです。
一般的に、ECサイト上で施策の比較を行うにはA/Bテストが用いられます。A/Bテストとはユーザーをふたつの群に分け、別々のコンテンツやデザイン(クリエイティブ)を提示することにより、ユーザーの反応の違いを計測し、より良いウェブサイトを作るのに用いられます。クーポン施策の評価にも、このA/Bテストを活用することができます。
A/Bテストでクーポン施策を正しく評価しよう
通常、A/BテストというとUIやUXの改善に使われるという印象を持たれがちですが、実はクーポン施策の効果測定にも使うことができます。一部のユーザーにはクーポンを見せ、一部のユーザーにはクーポンを見せないことにより、「クーポン施策を行わなかった場合の売上」を直接計測することが可能になります。
例として、とあるECサイトで実施したA/Bテストによるクーポン施策の効果測定を見てみましょう。
- 会員番号の下ひと桁が、奇数か偶数かで送るメールマガジン内容を分ける
- 奇数のグループには、割引クーポンコードを記載する
- 偶数のグループには、通常の新商品情報を付けて送る
- 客単価:1万円
メール送付から3日後、メールマガジン経由のユーザの売上を集計した結果、次のようになりました。
- 奇数グループ:150万円(うち、クーポン利用売上90万円)
- 偶数グループ:100万円
- クーポン施策コスト:20万円
このクーポン施策のCPA、ROASを計算してみましょう。まず、偶数グループの売上(100万円)を、クーポン施策を実施しなかった場合の推定売上とします。つまり、クーポン施策による売上増分は、「150万円-100万円=50万円」となります。客単価は1万円なので、50人を獲得したことがわかります。
ここからROASやCPA、利益(粗利率50%)を計算してみましょう。
CPA | クーポン施策コスト÷獲得人数 | 20万円÷50人=4,000円/人 |
---|---|---|
ROAS | クーポンによる売上増分÷クーポン施策コスト | 50万円÷20万円=250% |
利益 | 粗利-クーポン施策コスト | 50万円×50%-20万円=5万円 |
このようにROASやCPA、利益を算出することで、他の広告施策などと比較しやすくなります。A/Bテストを活用して効果を測定することではじめて、その施策の良し悪しを評価することができるのです。
「クーポンによって発生した売上金額」だけを見てクーポン施策を評価してしまうと、前回の記事に書いたような「売上は増えているけれど実は赤字だった」という状況に陥りかねません。