突然売れ出したデッドストックは、重要なコンテンツかも
サプライズ――。最近では記念日などの演出には欠かせない要素になっています。まったく予想や期待をしていなかったからこそ、その喜びも倍増というところでしょうか。旅行の楽しさも同様かもしれません。
多くの人が今まで体験したことがない景色や味覚を求めて=つまりサプライズの喜びを求めて、お金と時間を使っていると言えるのではないでしょうか。旅行中は小さなトラブルでさえサプライズ。たとえば「帰りの飛行機が欠航してたいへんだったのよ」と嬉しそうに話す人を見かけたことはありませんか(笑)。
そして旅には「お土産」がつきものですが、旅行先のコンビニで買った「売れ筋」のナショナルブランド商品をお土産にする人はいないと思います。ほとんどの人が、その土地に行かなければ買えない「死に筋商品」を選択しているのではないでしょうか。極端な例で言えば、まったく実用性のない記念品などの死に筋商品を選択する場合さえあるのです。
これは、日常の生活圏内ではまず行わない奇妙な購買行動です。少し難しい表現になりますが、この購買行動の要素を分析してみると、ひとつは「(旅行)体験の具象化」、そしてもうひとつは=めずらしさ=小さな発見=サプライズの「喜び」に起因する購買行動ということになるかと思います。
体験の具象化の典型的な例を挙げれば、「ディズニーランド」で(最近ではディズニーリゾートと言うらしいですが、筆者の世代としては、“ランド“と言わなければなりません)買ってしまったミッキーマウスの帽子とか。この帽子をかぶって地元の街を歩くことは「たぶん一生ありえない」と思います。したがって実用性はまったくないと思うのですが、それでも買わせてしまうだけの喜びがあるのでしょう。
ある意味ではネットでの衝動買いも、サプライズの喜びに起因する部分が大きいのかも知れません。ただしこの場合は、あくまで「めずらしさ」の割合が高く、体験の記念=具象化という意味合いはほとんどありませんが。典型的な死に筋商品や、いわゆるデッドストックが急に売れ始めたり(と言っても 全体売上からみればわずかですが)売っているショップのほうが、なぜそんな商品を買うのか不思議がっている例さえあります。
実は、死に筋商品とは、「めずらしいモノ」であり「小さな発見」であり、これを目にした時にある種の喜びを伴う重要なコンテンツなのです。