オムニチャネルを横から眺めてみたら見えた姿
米国GMSのシアーズは、ウォルマートにその座を譲るまで世界最大の小売業でした。そのシアーズが通販の会社だったことを、アメリカ人なら誰でも知っています。田舎の通販に、都市の実店舗を加えた業態でした。それでも、百貨店のメイシーズが宣言するまで、オムニチャネル・リテーリングとは認められていません。
オムニチャネル(リテーリング)とは何なのでしょう。「知ったかぶりしてきたけど、本質がまだピンときていない」というのが本音の人は、一緒に別角度から眺めてみましょう。
パンプスで出掛けるか、サンダルで出掛けるかの違いしかない
そもそも、流通量・流通額において、ECはリアルには永遠に勝てないかもしれません。永遠は言い過ぎでも、今後10年の間に日本のECがリアルを上回ることは絶対にありません。
ただし、忘れてはいけないふたつの観点があります。
第一に、ECによる購買率が、数年で単純に2倍くらいには成長します。もしかしたらそれ以上、あるいは何かのブレークスルー(ひとつの鍵となる環境は少子高齢化社会)をもって5倍さえいくかもしれません。なんたって、EC化率がたった3%台の日本ですから。
第二は、統計の単純さに見落としもあるということです。リアルの購買の内の何割かは、今でも「ネット経由」です。ショッピングに行く前に、実店舗の場所を探すことに始まり、比較をしたり、レビューを読んだり。
オンラインの決済や宅配だけの数字を見ていると、買物客の行動を見逃してしまいます。例えば、新譜の予約をネットで行い、コンビニで支払い、コンビニで受け取るのがECで、ネットでレストランを予約して、クレジットカード決済端末を使って支払うのはリアルです。何が違うのでしょう。
あるとしたら、パンプスで出掛けるか、サンダルで出掛けるかの違いだけ。
決済の中身さえ怪しい。ネットで貯めたポイントを使って実店舗でお買い物したら。あるいはその逆。それって、どう解釈したらいいのでしょう。
すでに境目のわからない世の中になっている。オムニチャネルって、そういうことですよね。境目がなくなりました。境目がないことを受容し、トータルで顧客満足や利益を評価・改善させていく。デモもストもありません。それがオムニチャネルです。
ECだけの時代はCVRに固執しがちでした。オムニチャネルの時代はCRO(転換率最適化)で考えなければいけません。