数式は「構成要素」をコントロールしてこそ活きる
E=MC²
ご存じのとおり、アインシュタインの相対性理論の数式ですが、我々「素人」はこの数式から、「空間は曲がっている」などの結論がなぜ出てくるのか見当がつきません(笑)。でも、数学者や物理学者などの「玄人」はこの数式から、核エネルギーを取り出す方法を導き出したり、宇宙のしくみを解明するための技術などを生み出したりしています。
数式は原理原則ですので、何度試しても結果は同じという意味では「再現可能」な「不変の黄金律」と言えるかもしれません。ネットショップの運営についてもさまざまな数式がありますが、「結果の数値」を眺めて一喜一憂するのはなく、「玄人」の物理学者のごとく、ネットショップの売上と利益の向上に役立つヒントや行動指針を導き出したいものです。
来訪者数x購買率x平均顧客単価=売上
笹本が長期講座や講演の際にこの数式を使って、それぞれのショップさんに「今何をすべきか?」を導き出してもらうワークを取り入れたのは、かれこれ14~15年前になりますが、時を経てこの式が多くの方々に広まってうれしい限りです。これは誰でも理解できる数式であり、当たり前の話ですが、変化の速いネット業界においても、たぶん永久に通用する「公式」です(笑)
だから、この式の中にも「再現可能な黄金律」が隠れているはずなので、「結果の数値」=売上を見ているだけではもったいない。また、この式を漫然と見ていても何も導き出されないのです。
売上を2倍にするために、どの構成要素なら上げられそうか
前述の数式の「売上」同様に、CPO(コスト・パー・オーダー=受注1件当たりの獲得コスト)などKPI系の数値は「結果の数値」ですが、これら結果の数値を見るときには、必ず「結果の数値の構成要素」を、プレイクダウンして欲しいと思います。
構成要素とは 前述の数式の「来訪者数」や「購買率」に該当するものですが、まずはブレイクダウンしてみることが、ヒントや行動指針を導き出す最初の一歩になります。
たとえば、売上を2倍にしたいという目標を立てたとします。この際、前述の数式の「各構成要素」の数値を変化させてみて、どうすれば「結果の数値」=売上が2倍になるか考えてみてください。
- 来訪者数を2倍にすれば売上は2倍になります。
- 来訪者を3分の1増やして、購買率を5割増しにしても売上は2倍になります。
- 来訪者数が4倍になって、購買率が2分の1になっても売上は2倍になります。
- 来訪者数と購買率と平均顧客単価が、それぞれ26%ずつ増えても、売上は2倍になります
仮に、現在の購買率が0.5%であった場合、これが0.63%になれば、26%の増加となるわけですが、来訪者1,000人当たり、1.3人のお客様にちゃんと買っていただけたら、達成できることになります。ねっ。これぐらいはできそうでしょ(笑)。
あっ、ここで大きな気づきがありました。そうなると、1,000人に1.3人ぐらいしかいない「かなり特殊なご要望」を持つお客様への対応もおろそかにはできませんよね。逆に言えば、競合の他店が「面倒くさい」と思っているお客様を、「ウチの店は実直に対応してゆくだけでも購買率0.63%にはできそうだ」のごとく、行動指針のひとつが見えてきたりするのです。
たとえば、ノートPCを売っているショップで、電源トランスを含めた総重量を記載しているところはほとんどありません。重量の記載は、どこもかしこも本体重量(バッテリー含む)という形なのです。メーカー記載のスペックシートには本体重量しか記載されておらず、当然ながらそのままが商品ページに記載されたのでしょう。
でも笹本の場合、背中にリュックを背負って数日間の出張ということが多いので、電源トランスを含めた重量を知りたいわけです。しかしメーカーのHPを調べても本体重量しか載っていないので、ショップさんに電話をかけて、「トランスを含めた重さを知りたいのですが……」と言うと、大手のショップさんのほとんどが「手元に在庫がないのでわかりません」という回答。そして札幌の小さなPCショップが、「重さを量ってからご連絡します」という返事をくれたので、ネット最安値に比べて300円高かったのですが、この店から購入しました。