コンテンツマーケティングはサイト「流入後」にこそ活かせ
高橋さんはまず、一般的なコンテンツマーケティングの定義を「価値ある適切なコンテンツをユーザーに届けることで、 コンバージョンを最大化させるマーケティング手法」と確認。
現在、この手法がEC事業者を中心に注目されているが、その背景に、従来の広告等の手法で流入数を増やすのが難しくなっている今、商品情報をコンテンツとして発信していくことで、結果的に良質な流入数を増やしたいとのニーズがあるからではないかとした。
「流入数を増やすことも重要ですが、肝心なのは、『購入』とそれを『共有』してもらって別の購入者を連れてきてもらうこと。つまり、『価値ある適切なコンテンツを流入後のユーザーに届けることで、ユーザースループットを最適化し、コンバージョンを最大化させる』という視点で考えるべきです。ユーザースループットとは、ユーザー流入後のサイト滞在率や商品購入率といったKPIを最大化することを意味しています」
ECサイトのコンテンツマーケティングを実現する3つのステップ
コンバージョンを最大化するためのコンテンツマーケティングを実現するには、以下3つのステップが欠かせない。順番に詳しく見ていこう。
- コンテンツの作成
- ナビゲーションの最適化
- One to Oneマーケティングへの対応
1.コンテンツの作成
流入後にユーザーが求めるコンテンツの例として、商品利用シーンの写真等を豊富に掲載しているDIYの用具を扱うECサイトや、コーディネート例を何パターンも大きな写真で見せているアパレルのECサイトを紹介。
しかし、コスト、リソース、仕入れ小売業で他社と差別化しにくいといった要因から「すべてのEC事業者さんが、こういったコンテンツを作れるわけではない」と現状を分析。そうした課題を抱えるECサイトのコンテンツ作りのコツとして、「見せかた」「意味付け」「イベント連携」の3つのポイントをあげ、「価値創出」していくことを提案した。
見せかた
「残りわずか」「再入荷」「新着商品」「売れ筋」「旬」などの表現で価値を創出する。
意味付け
単純な売れ筋等ではなく、独自の切り口でのランキングを作ることで価値を創出する。
イベント連携
「父の日」や「ホワイトデー」などイベントに連動した特集ページを作ることで価値を創出する。
ほかにも、「ユーザー参加型コンテンツ」の活用などの手法もあるとしながら、NGワードを設定する、表示前に必ずチェックする、不適切なコメントはそもそも表示しないなど、運用の注意点も述べた。
2.ナビゲーションの最適化
前述のように既存のコンテンツに価値を創出することに成功したら、次に考えるべきは「ナビゲーションの最適化」だ。
サイト流入後のユーザーがコンテンツにたどり着くには、「サイト内検索」がメインの手法となるが、現状多くのサイトが「探せない」「探しにくい」「提案がない」の3つの課題を抱えていると、高橋さんは言う。
サイト内検索の抱える大きな課題は「精度」と「インターフェース」の2つ。「精度」を向上させるには、「検索対象項目の適正化」「アイテム情報の整備」「類義語登録の整備」「検索アルゴリズムの複合化」などが有効。さらに、「インターフェース」の改善の観点では、以下のような最適化が有効であると説明した。
- 入力間違いを減らすために候補を表示する
- 検索結果を動的に表示する
- ナビゲーションがあり、妥当な検索結果が表示される
3.One to Oneマーケティングへの対応
ナビゲーションを最適化したら、コンテンツマーケティングにも「One to One」を取り入れていきたい。例えば、あるファッションECのサイトの例では、ユーザーごとにパーソナライズされた商品が表示され、それがリアルタイムに変わるという仕組みをとっている。
こうした取り組みにより、「使い勝手がよくなるのはもちろん、提案もできる。さらに、これ自体がリッチなコンテンツになるとも言えます」(高橋さん)。
メールマーケティングにもOne to Oneマーケティングの潮流が来ており、例えばカートに商品を入れながら離脱したユーザーに対して、タイムリーなレコメンドメールを送るといった施策が行われている。
ナビプラス社のツールを導入したECサイトでは、開封率や流入後のコンバージョンの観点で、従来のメールマーケティングの10倍近い成果が出ており、今後はさらに注目されていくであろうとのこと。
同様の考えかたで、サイトから離脱した後も行動履歴等をもとに、アプリ等でプッシュ通知を行うオムニチャネル施策を取り入れる企業も出てきており、ECサイトのOne to Oneマーケティングはさらに加速していきそうだ。
賢いコンテンツマーケティング運用は、既存リソースの有効活用
以上見てきたように、コンテンツマーケティングは早急に取り組むべきテーマではあるが、ハードルが高いと感じる事業者も少なくないだろう。
そうした声に高橋さんは、「既存のリソースを活用すること」でその壁を超えられると言う。既存のリソースとは、ユーザーの行動履歴、属性、商品アイテムといったデータ、ユーザーのレビューなどが当てはまる。
ナビプラスでは、「既存のリソース」を活用してコンテンツマーケティングにつなげていくことができるツールとして「サイト内検索エンジン」「レコメンドエンジン」「レビュー投稿エンジン」などを提供していると紹介し、講演を締めくくった。