自社でスポーツ用品の企画や販売を行う株式会社ヒマラヤは、これまでブランド力を活かした実店舗販売で成長を続けてきた会社です。しかし、近年のEC需要の急激な拡大に伴い、同社でも本格的にECをビジネスに組み込み、運用していくための改革が進みつつあります。
この記事では、株式会社ヒマラヤが取り組もうとしているEC改革の具体的な内容について、詳しく解説します。
株式会社ヒマラヤの企業情報・事業内容の概要
まずは、株式会社ヒマラヤの基本的な企業情報や事業の内容について紹介します。
株式会社ヒマラヤの企業情報
以下は、株式会社ヒマラヤの企業情報をまとめたものです。
社名 | 株式会社ヒマラヤ |
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本社所在地 | 岐阜県岐阜市江添1丁目1番1号 |
設立年 | 1991年 |
代表者名 | 代表取締役会長兼社長 小森 裕作 |
株式公開 | 東証プライムおよび名証プレミア上場 |
資本金 | 25億4,400万円 |
おもなグループ会社 |
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株式会社ヒマラヤの事業内容
株式会社ヒマラヤは、実店舗やECを通じてスポーツ・アウトドア用品の販売を行っています。自社のプライベートブランド運営も手掛けており、他社ブランドの扱いのみならず、オリジナル用品の企画・販売まで幅広く対応します。
最近では自社のECノウハウを活かしたBtoBのECパッケージの開発・提供も進めるなどIT関連事業でも存在感を発揮し、業界全体のニーズに応えるビジネスモデルを構築してきました。
株式会社ヒマラヤの沿革
以下の表は、株式会社ヒマラヤの沿革をまとめたものです。
年 | 沿革 |
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1976年 | 岐阜市美江寺町に有限会社岐阜ヒマラヤを設立。同所に「スキープロショップ岐阜ヒマラヤ」を創業 |
1989年 | 株式会社ゴルフパークヒマラヤを設立。「ゴルフパークヒマラヤ本店」を創業 |
1993年 | 株式会社ゴルフパークヒマラヤを吸収合併。本社を岐阜市江添1丁目1番1号に移転 |
2011年 | 三菱商事株式会社と商品開発における資本業務提携契約を締結 |
2012年 | 株式を東京証券取引所および名古屋証券取引所の各第一部へ上場(各第二部から指定変更) |
2017年 | 子会社コアブレイン株式会社を設立 |
2020年 | 三菱商事との業務提携を解消 |
1976年にスキーショップとして設立されたヒマラヤは、後にゴルフ用品なども扱う総合スポーツ用品店として全国展開を進めていくこととなります。2011年にはプライベートブランドの強化やサプライチェーンの構築に向け、三菱商事株式会社との資本業務提携を締結しますが、2020年にはこれを解消しました。
2012年には東証一部および名証一部に上場し、現在も東証プライム、名証プレミアに上場を続けています。
2017年、自社のITシステムを外部にもサービスとして提供するべく株式会社コアブレインを立ち上げ、事業の多角化が進みました。
株式会社ヒマラヤが中期経営計画で示したEC改革
株式会社ヒマラヤは、数年前に2022年8月期を初年度とする3ヵ年の中期経営計画を発表し、2024年8月期にEC売上高200億円、EC化率25.0%を目指す方針を掲げました。
ここでは、このような目標を達成するために同社が現状で抱えているECの課題や、これを解決するためにどのようなソリューションを実践しているのかについて解説します。
株式会社ヒマラヤが抱える経営課題と改善のポイント
株式会社ヒマラヤは、コロナ禍にある2021年8月期以降、不採算店舗の閉鎖や既存店舗の改装、さらには資源集中による既存店の成長を進めてきました。
EC事業においては物流を強化するとともに、店頭接客を中心に捉えた店舗オペレーションを強化し、ECオペレーションの改善による収益性の改善に取り組んでいます。
スポーツ用品販売事業は需要過多の出店、いわゆるオーバーストアの問題を抱えていたことから、従来のターゲット層としていたスポーツライト層やエントリー層、部活生層などへのアプローチでは、先が見えないという判断を下しました。
今後、同事業ではアフターコロナを見据えて収益を強化するべく、「スポーツ用品」ではなく「スポーツの価値」を売る戦略へと方向転換を決めました。
このコンセプト転換にあわせ、同社ではカテゴリーごとに最適なターゲットの深掘り、そして絞り込みを行っている段階です。
計画達成に向けヒマラヤが目指す「ユニファイド・コマース」とは
デジタル分野において、株式会社ヒマラヤが注目しているのはデジタル技術が世界を席巻し、「オフラインの時間がほぼ存在しない現代社会」のあり方です。
このような環境の中では、顧客にとって好きなときに好きなものを購入してもらえる環境作りがより重要となり、その利便性の確保に向けた情報の統合が必要となります。
そこで同社が掲げているのが、一人一人の顧客に対してパーソナライズされたサービスを、オンライン・オフラインを問わず提供できる「ユニファイド・コマース」の実現です。
中期経営計画においてユニファイド・コマースの実現は大きな軸となっており、従来よりもさらに利便性と付加価値の大きいメンバーシッププログラムの実現や自社サイト・アプリの利便性向上など、さまざまな側面でやるべきことがあると考えています。
利用価値の高い各種デジタルサービスと同社の実店舗の融合を進め、OMO化を推進することが、ユニファイド・コマースの実現において大きな足掛かりになるとのことです。
株式会社ヒマラヤの最近の動向
以下では株式会社ヒマラヤが取り組んでいる、具体的なデジタル施策について注目すべきものを詳しく解説します。
株式会社アイリッジがOMO起点となる「ヒマラヤアプリ」の開発を支援
株式会社ヒマラヤは2023年4月、株式会社アイリッジの支援を受け、OMOの起点としての活躍が期待できる自社アプリ「ヒマラヤアプリ」の提供を開始しました。
「ヒマラヤアプリ」は、実店舗とECの両方で便利に買い物をするためのアプリです。デジタル会員証やクーポンを使った買い物ができるのはもちろん、店頭商品のバーコードをスキャンし来店中の店舗やECで在庫確認や注文ができます。また、ECで注文した商品を店頭で受け取ることも可能です。
実店舗とECでのギャップを解消し、顧客体験をシームレスにつなぐことで、顧客体験の価値をさらに高めることが期待できます。
ECの仕組みを基に新発想の店頭注文システムを構築、実店舗のサービス改善に着手
株式会社ヒマラヤは富士通が提供するシステム「SNAPEC-EX」を採用し、ECサイトを展開してきました。
同社ではこのシステムを活用し、独自の接客アイデアを基に店頭注文システム「接客支援ツール」を新たに構築しました。従来は1週間以上だった店頭注文の納期を、ECと同じ最短翌日にまで短縮することに成功しています。
また、EC上で店舗の在庫情報と連動した迅速な在庫確認や、欠品時の代替商品の提案に至るまで、顧客のニーズを中心に据えた柔軟な接客をも可能にしています。
2023年中間期のEC売り上げは21.1%増、SNS強化などが寄与
2022年9月から2023年2月の株式会社ヒマラヤのEC売り上げは、前年同期比21.1%増を達成しました。EC事業単体の売上高は一般公開されていないものの、発表によるとこの増加率は当初の計画を上回る数字だということです。
EC事業の増収の背景には、SNSなどを用いたデジタルマーケティング施策の強化が要因だとしています。また、同社では、ポイントサービスを刷新したこともあり、ポイントの還元率の高さを求めてECで購入するユーザーも増えているとのことです。
スマホサイトも新たに導入したことで、同社のEC売り上げは今後もさらに成長することが期待できるでしょう。
株式会社ヒマラヤの気になるトピックス
そのほか、株式会社ヒマラヤの気になるトピックスについてまとめています。
2023年4月4日:「ヒマラヤアプリ」&「ヒマラヤポイント」誕生
株式会社ヒマラヤは、お客様にヒマラヤの実店舗やオンラインストアを、より気軽に、便利にご利用いただくため、公式アプリケーション「ヒマラヤアプリ」をリリース。これにより先行リリースしておりました自社ポイントサービス「ヒマラヤポイント」も本格稼働、ヒマラヤでのお買い物がぐっとお得になる。
2022年12月2日:<株式会社ヒマラヤ|指定管理事業>大津谷公園キャンプ場の指定管理者に指定されました
岐阜県揖斐郡池田町が実施した「公募型プロポーザル」に応募し所定の審査・手続きを経てHIMARAYAが大津谷公園キャンプ場の指定管理者に指定された。
2022年11月24日:スポーツ用品小売りヒマラヤの本拠地である岐阜市に、国内屈指の体験型スポーツショップエリアが誕生
株式会社ヒマラヤは、体験型設備や機能を強化して「ヒマラヤ本館」をリニューアルオープンする。
2022年10月24日:FC岐阜と株式会社ヒマラヤによる選手のセカンドキャリア支援に関する業務提携のお知らせ
株式会社岐阜フットボールクラブと株式会社ヒマラヤの間でFC岐阜所属選手のセカンドキャリア支援に関して業務提携を行うこととなった。
2022年1月21日:『H.M.R.Y.パフォーマンスメソッド』サービス提供開始のお知らせ
株式会社ヒマラヤは、2022年1月より甲南大学のサッカー部OBチーム「甲南シニアO-40」へ、パーソナルフィットネストレーナーによる『H.M.R.Y.パフォーマンスメソッド』の提供を開始する。
2017年3月13日:スポーツ×ファッションのコンセプトショップ「STYLE & PLAY GREAT YARD 表参道」オープン
AIがモバイル端末の動きから心理分析 最適な情報配信に向けた実験をECにて実施
まとめ
この記事では、株式会社ヒマラヤの事業課題や中期経営計画の中で示されたアプローチ、近年取り組んでいる同社のデジタルソリューションについて解説しました。
同社は半世紀以上スポーツ用品店を経営してきたこともあり、日本国内のスポーツ用品の需要の変化も敏感に捉えています。その変化にも柔軟に対応できるよう、デジタルの積極的な活用は不可欠と考えており、ユニファイド・コマースのような新しい概念の導入も視野に入れているのが特徴です。
中期経営計画の達成に向け、同社ではすでに多くの新たなデジタル施策を投下しており、EC売上高が前年と比較して増加していることを踏まえると、良い方向に改善が進んでいることが分かります。
新たにスマホアプリの立ち上げや店舗サービスの刷新も進んでいることで、株式会社ヒマラヤはオンラインとオフラインを両軸とし、充実度の高い優れたOMO戦略を展開していくことになるでしょう。