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「コト消費」の脳機能を可視化 中央大 檀教授が語る、消費者の「情動」を形成するカスタマージャーニー

 中央大学 理工学部 人間総合理工学科 教授 檀一平太氏らの共同研究グループが、「コト消費」の効果の可視化に成功した。本研究により、これからのブランドに求められる体験はどう変わるのだろうか。檀氏に聞いた。

コト消費が消費者の強い感情の動き「情動」を生む

 今回、檀氏らによって行われた研究では、「IKEA効果」に焦点があてられた。IKEA効果とは、自らの手で組み立てた商品の価値を高く評価する消費者の心理現象を指す。これまで、IKEA効果が得られたときの脳の動きまでは、解明されていなかった。

 本研究において檀氏は、簡易な組み立てが必要な商品を計6つ用意。学生30人に、6商品のうち、3商品を組み立てるよう指示した。そして、学生たちに6商品すべての写真を順不同で見せ、それぞれの商品に対して「購入時にいくらの対価を支払うか」と質問した。

 その結果、学生たちは自分が組み立てた商品の値段を、そうでない商品よりも平均で200円高く評価した。

 さらに檀氏は、学生たちが商品の値段を評価するときの脳の動きを測定。左背外側前頭前野および前頭極(図の49)の動きが活発化していることを突き止めた。この脳領域は、強く印象に残った記憶を呼び起こすときに活動する部分だという。

IKEA効果を反映する脳活動
IKEA効果を反映する脳活動

 現段階において、呼び起こされた記憶がポジティブなものかネガティブなものかまでは明らかになっていない。しかし、学生たちが値段を高く評価している点で、商品を組み立てた体験が、商品へ抱く印象にポジティブな影響を与えたといえる。

 この結果について檀氏は、こう結論付けている。

コト消費のカギとなるのは、情動をともなった記憶です。それによって商品への愛着を増すことが、効果の本質でしょう。今回は体を動かす体験で検証しましたが、感動するイメージやストーリーを見聞きすることでも、同様の効果があると考えられます」

中央大学 理工学部 人間総合理工学科 教授 檀一平太氏
中央大学 理工学部 人間総合理工学科 教授 檀一平太氏

 感情の動きをあらわす「情動」。出来事や体験を覚える「エピソード記憶」。この二つが結びついて、「情動をともなうエピソード記憶」になると、人間の脳に強く残る。檀氏は、「消費者の情動の形成まで考慮してカスタマージャーニーを設計すべき」と指摘する。

 ブランドが提供する体験によって、消費者がどのような感情を持つのか。感情レベルまで体験を分解して、購入導線を敷く必要があるというのだ。実は、「接客」がその例として挙げられる。

「商品の良さを一方的に説明するのではなく、接客によって消費者自身が商品の価値に納得できたとき、それもエピソード記憶として残るはずです」

 近年、接客は実店舗だけのものではなくなっている。ウェブ接客やライブコマースなど、オンライン上でも様々な形で接客が取り入れられるようになってきた。eコマースでも、接客の重要性が叫ばれる理由は、コト消費のメカニズムにあるのかもしれない。

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この記事の著者

ECzine編集部 藤井有生(フジイユウキ)

1997年、香川県高松市生まれ。上智大学文学部新聞学科を卒業。人材会社でインハウスのPMをしながら映画記事の執筆なども経験し、2022年10月に翔泳社に入社。現在はウェブマガジン「ECzine」で編集を担当している。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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