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おさえておきたいEC・通販先進企業

実店舗とECのデジタル施策強化を進めるアルペンのDX戦略とは

 全国で実店舗を展開するスポーツ用品店のアルペンは、近年EC強化などのデジタル施策を展開し、独自のDX戦略を遂行しています。この記事では、実店舗での販売が確立されている同社のEC「Alpen Online Store」やDXへの取り組みについて紹介します。

 愛知県に本拠地を構えるスポーツ用品店の株式会社アルペンは、多角的に事業を展開しつつ、実店舗とECを結ぶデジタル化に力を入れています。実店舗とECの両軸で次世代の小売業を実現するためには、どのようなDX戦略が求められるのでしょうか。

 この記事では、同社の実店舗とECのデジタル施策強化を含めたDX戦略について解説します。

株式会社アルペンの企業情報・事業内容の概要

 まずは、株式会社アルペンの企業情報や事業内容について解説します。

株式会社アルペンの企業情報

 以下の表は、株式会社アルペンの企業情報をまとめたものです。

社名 株式会社アルペン
本社所在地 愛知県名古屋市中区丸の内二丁目9番40号 アルペン丸の内タワー
設立年月 1972年7月
代表者名 代表取締役社長 水野敦之
株式公開 東証プライム市場上場
資本金 151億6,360万円
おもなグループ会社
  • 株式会社アルペンリゾート
  • 株式会社エム・アイ・ゴルフ
  • 株式会社ジャパーナテクニカルセンター

など

株式会社アルペンの事業内容

 株式会社アルペンは、総合スポーツショップの「SPORTS DEPO」や「SPORTS Alpen」、ゴルフ専門店の「ゴルフ5」、アウトドア専門店、オリジナルブランドショップなどのスポーツ用品店事業を主軸としています。店舗数は現在400を超え、北は北海道から南は沖縄まで全国に実店舗と流通網を有している点は、同社の最大の特徴といえるでしょう。

 また、各ブランド商品の販売はもちろん、自社でもプライベートブランドの用品を企画・開発しており、店舗で購入することも可能です。販売経路は従来だと実店舗が主流でしたが、最近ではECでの販売にも力を入れており、販路の拡大に取り組んでいます。

 さらに同社はスポーツ用品販売のみならず、スポーツの機会の提供にも積極的です。リゾート事業ではゴルフ場やスキー場、キャンプ場などの経営、フィットネス事業ではオンラインフィットネスサービスの提供やフィットネスクラブの経営に取り組むなど、スポーツ振興に携わっています。

株式会社アルペンの沿革

 以下の表では、株式会社アルペンの沿革を簡潔にまとめています。

年月 沿革
1972年7月 名古屋市西区にスポーツ用品店 株式会社アルペン設立
1978年2月

プライベート商品の開発を目的として

ジャパーナインターナショナル株式会社(現:株式会社ミズノ・インターナショナル)設立

1983年6月 愛知県春日井市にゴルフ専門店「ゴルフ5」 1号店開店
1992年6月 無錫ジャパーナ体育用品有限公司(現在は連結子会社)設立
2000年7月 インターネット販売サイト開設
2014年6月 株式会社アルペンリゾート(現在は連結子会社)取得
2015年5月 靴とファッションの通販サイト「LOCONDO.jp」を運営する株式会社ロコンドと資本・業務提携

 スポーツ用品店として1972年に創業された株式会社アルペンは、1978年に入るとプライベートブランド商品も扱うようになり、着実に店舗数を増やしていきました。ゴルフ専門店のような専門性の高い店舗展開や海外への拠点を設置する拡大志向は現在も続いており、2000年にECを開設するなど、幅広いチャネルを重視していたことがうかがえます。

 その後も関連企業の吸収合併や子会社の連結を進め、2015年には大手ECサービスとの資本業務提携を結ぶなど、今日まで時代のトレンドに合わせた事業展開を継続してきました。

株式会社アルペンが推進するDX戦略

 株式会社アルペンは、近年のEC需要の高まりに伴い、独自のDX戦略を展開しています。2000年よりECサービスを提供してきた同社ですが、どのようにデジタル施策を強化してきたのか、ここで紹介します。

自社ECの検索機能強化

 アパレル企業におけるEC活用は近年のトレンドといえますが、株式会社アルペンでは他社との差別化の一環として自社ECに力を入れていました。自社ECでの取り組みのひとつが、検索機能の強化です。

 EC売上増加に伴って、従来の手法での商品の拡充やサイト管理が困難になりつつあった同社では、機会損失やサービスの質の低下などが懸念されていました。そこで外部ツールを新たに導入し、データ連携の頻度が高く、できる限りリアルタイムで更新が行われる機能を追加しました。それによって、最新の情報が反映されやすい環境に生まれ変わったとのことです。

 さらに、ツール導入後の商品ランキング詳細ページのPV数は、従来の約3倍にまで増加し、ランキング経由でのCVRも全体平均と比較して、約2倍の数値を記録しました。そのほか売上が200%以上に伸長したことなども鑑みると、同社にとって検索機能の強化がどれだけ重要な施策だったかということを示す取り組みといえるでしょう。

実店舗での接客DXやオムニチャネル化の推進

 株式会社アルペンがデジタル施策を強化したのは、ECだけではなく実店舗においても同様です。全国に数百店舗を有する企業であるだけに、依然として実店舗の価値についても重視し、体験の場としての積極的な活用を提唱しています。

 2022年4月、同社は都内最大級のスポーツ用品店「Alpen TOKYO」を新宿に開業しました。同店舗は、地下2階から8階までの10フロアで構成されています。

 近年のデジタルシフトとは逆行する店舗形態を採用しているようにも見えますが、従来店舗よりもデジタル化が進み、大型のサイネージを使ってEC上のレビューや在庫状況の確認などができる設備が整っています。また、スタッフによる接客もデジタルサイネージを使うことで、サービス向上と省力化が進んでいる点も特徴です。

 スタッフがバックヤードで在庫を確認する手間を省いたり、購入手続きをサイネージ上で完結したりすることで、スタッフにとっても来店者にとっても負担の少ない店舗を実現しています。

株式会社アルペンの近年の動向

 続いて、株式会社アルペンの近年の動向について確認しましょう。

アルペンEC、改革後に会員数が10倍に

 株式会社アルペンは、2018年の自社EC開設以降、約3年で会員数を約10倍に増やすことに成功しました。

 会員数が増加した背景として、同社EC事業部長はユーザビリティに優れたサイトづくりに努めたことが功を奏したと語っています。実店舗のような感覚で、サイト来訪者が迅速に自分の求めている商品のページにたどり着けるような動線を心がけたことで、サイト滞在時間や閲覧数の増加につながったとのことです。

 現在、EC売上は1年で5割増しのペースで成長しており、今後もさらなるユーザーの増加が期待されます。

AI物流ロボット追加採用で国内トップレベルの作業生産性を実現

 株式会社アルペンは、2021年12月に物流倉庫における自動配送ロボットを追加採用しました。現在、千葉にある同社の物流倉庫では、約7,000坪にものぼるエリアを自動搬送ロボット専用エリアへと刷新し、効率的な運用体制を整えています。

 自動搬送ロボット216台、ロボ棚数3,207台、ステーション数19台を有する同倉庫では、ロボットに適合する商品をロボットセンターで、不適合商品を非ロボットセンターで保管する2拠点体制へと移行しています。

 この結果、保管能力は従来の約2倍、出庫能力も約3倍に進化しており、配送リードタイムの短縮など、充実したサービスをEC利用者に提供できる仕組みを実現しました。

最適な洋服のサイズを提案するサービスをECに導入

 2021年6月、株式会社アルペンはECにおける不透明なサイズ感を解消すべく、自動で最適なサイズを提案してくれるサービス「unisize(ユニサイズ)」を公式ECサイトに導入しました。

 ユーザーはまるで実店舗のように正確なサイズを把握できるため、サイズ間違いを懸念することなくECでアパレル商品を購入することができます。また、ユーザーによる返品手続きに伴うコスト削減にもつながるなど、両者にとってメリットの大きい取り組みです。

株式会社アルペンの気になるトピックス

 そのほか、株式会社アルペンの気になるトピックスを以下でまとめています。

2022年11月16日:〜この冬、「アルペンが本気の冬」を展開する。〜 Z世代に向けたウインタースポーツの体験プログラムを開始。さらに、"冬の女王”広瀬香美さんとのコラボも決定!

 アルペンは、ひとりでも多くの方にウインタースポーツの楽しさを知っていただくため、まだウインタースポーツを経験したことない、Z世代に向けたウインタースポーツの体験プログラムを展開する。

2022年7月8日:スポーツの力で環境を変えていく アルペングループ、「スポーツが溢れる未来」に向けて2027年までの新サステイナビリティ目標を設定

 2020年4月に「2025年までに達成を目指す10のサステイナビリティ目標」を設定してから2年が経過。これまでの目標を引き継ぎ発展させた、4つのターゲットと2027年までの5つの達成目標に刷新した。

2022年4月25日:ローコードツール「キントーン」で社内システム内製化

 サイボウズは4月25日、ローコードツール「kintone(キントーン)」が、アルペンのシステム内製化を推進する業務プラットフォームとして導入されたと発表した。

2022年2月8日:アルペン、史上最大の新旗艦店「Alpen TOKYO」のフロア構成を公開 新宿のヤマダ LABI東口館跡地に

 スポーツ用品販売のアルペンが今年春に開業を予定している、グループ史上最大の旗艦店舗「Alpen TOKYO」(東京都新宿区)の概要を発表した。

2021年6月27日:CoCo壱番屋とコラボ キャンプ用カレーで「アウトドアの裾野広げる」

2020年12月7日:アルペンの自社ブランド「TIGORA」 KAKUCHOのwebAR技術を採用した仮想店舗をオープン

 アルペンは、「カレーハウスCoCo壱番屋」を運営する壱番屋とコラボレーションし、キャンプ用のレトルトカレーを7月1日に発売する。異業種とのコラボにより、コロナ禍でも好業績のアウトドア分野の裾野を広げる。

まとめ

 この記事では、株式会社アルペンが実店舗とECを両立させるうえで、どのようなデジタル施策を強化しているのかについて解説しました。

 デジタルシフトが進む昨今、店舗力が強みのアルペンではEC強化に努めつつ、実店舗の価値についても依然として重視しており、バランスの取れた両立を実現しています。

 店舗の活かしかたやECとの両立に悩んでいる場合、同社の取り組みは参考になる点が多いのではないでしょうか。

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この記事の著者

EC研究所(イーシーケンキュウジョ)

ECについての情報を調べ、まとめてお届けします。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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