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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

おさえておきたいEC・通販先進企業

紙とデジタルの両立を実現する通販事業大手ディノスの戦い方


 カタログ通販事業を成功させてきたディノスでは、近年の購買行動の変化にともなって、カタログと自社EC「ディノスオンラインショップ」両者の活用方法の見直しが進められています。この記事では、同社の事業内容やビジネスモデル、近年の動向などを解説します。

 株式会社DINOS CORPORATIONは、カタログ通販事業を長らく手がけてきた通販事業者ですが、最近ではEC需要が高まったことで、ビジネスモデルの改革も進めています。自社EC「ディノスオンラインショップ」への完全な移行ではなく、従来のカタログ通販も併用するなど、独自路線を追求する同社では、どのような狙いや構想を描いているのでしょうか。

 この記事では、同社のビジネスモデルや事業の強み、最近の取り組みなどを解説します。

株式会社DINOS CORPORATIONの企業情報・事業内容

 まずは、株式会社DINOS CORPORATIONの基本情報について確認します。

株式会社DINOS CORPORATIONの企業情報

 株式会社DINOS CORPORATIONの企業情報は、以下の表にまとめています。

社名 株式会社DINOS CORPORATION
本社所在地 東京都中野区本町2丁目46番2号
設立年月 1991年3月25日
代表者名

代表取締役会長 石川 順一

代表取締役社長 宇津 洋一

株式公開 未上場
資本金 1億円
おもなグループ会社

株式会社ディノスコールセンター

イミニ免疫薬粧株式会社

株式会社DINOS CORPORATIONの事業内容

 株式会社DINOS CORPORATIONの事業は、おもに以下の4つに分けられます。

  • 総合通信販売事業
  • リテンションマーケティング事業
  • フラワーネット事業
  • 催事・店舗事業

 総合通信販売事業は、同社を支えてきたコア事業です。テレビ通販の盛況をきっかけに軌道に乗った通販サービスは、その後カタログ通販として多大な人気を集め、近年はEC事業と並行して運営されています。

 メディアミックスと高い付加価値を持った商品展開が特徴で、国内通信販売業において多大な影響力を持つ事業といえるでしょう。

 リテンションマーケティング事業は、これまで培ってきた通販の流通網を活かし、オリジナル化粧品ブランドなどを展開する通販事業です。現代の女性が抱える肌トラブルの解消に貢献するブランド「イミニ」を中心としたラインナップで顧客獲得を推進しています。

 フラワーネット事業は、全国1,800店の優良花店をネットワーク化して、顧客ニーズに応じた花を全国に届ける「フジテレビフラワーネット」を運営する事業です。日々のギフトとしての利用はもちろん、法人向けのフラワーサービスも手がけることで、花に関する幅広い需要に応えています。

 催事・店舗事業は、通販事業で展開している商品の催事販売や、店舗での商品提供を担当する事業です。催事の主体的な開催や劇場におけるグッズ販売など、顧客とのリアルな接点を通じた商品販売に努めています。

株式会社DINOS CORPORATIONの沿革

 以下の表では、株式会社DINOS CORPORATIONの沿革を簡単にまとめています。

沿革
1971年 株式会社ディノス創業
1972年

日本初のテレビショッピング開始

総合カタログ「フジサンケイリビングカタログ」(「ディノスカタログ」「ディノスコレクション」の前身)創刊。

1976年 日本初のカタログショールーム「リビングプラザディノス新宿」オープン
1986年 オンライン受注開始
1995年 パソコン通信による通販開始
2000年 「ディノスオンラインショップ」スタート
2007年 株式会社フジテレビフラワーセンターと合併
2013年 株式会社フジ・ダイレクト・マーケティング、株式会社ディノス及び株式会社セシールが合併し、株式会社ディノス・セシールがスタート
2015年 オリジナルスキンケアブランド「imini」デビュー
2018年 台湾支店設立
2020年 「株式会社ディノスコールセンター」設立
2021年

2013年合併の「セシール」事業譲渡

商号を「株式会社 DINOS CORPORATION」に変更

 1980年代から通信販売事業を手がけていた同社では、テレビ通販をきっかけに事業を拡大しました。1995年にはECを開始するなど、メディアにとらわれない通販のあり方を模索していたことがわかります。

 2010年代以降はオリジナルブランドの展開や海外進出、事業の見直しなどに取り組み、2021年には現在の株式会社 DINOS CORPORATIONに商号を変更し、「ディノス」創業50周年を迎えました。

株式会社DINOS CORPORATIONの強みや特徴

 ここでは、株式会社 DINOS CORPORATIONのビジネスモデルや事業の強みについて解説します。

ビジネスモデル

 株式会社 DINOS CORPORATIONの特徴は、消費者のニーズを起点に企画を立ち上げるビジネスモデルにあります。世の中の本音に耳を傾け、同社の目利きのバイヤーがそれに応じた商品の厳選と仕入れを担うことで、カタログやECサイトを通じて質の高いコンテンツを消費者に提供できる仕組みです。

 また、商品については顧客からのフィードバックを広く受け付け、同社の仕入れにも色濃く反映させることにより、無駄のない仕入れと確かな売上の両立を実現させています。

事業の強み

 株式会社DINOS CORPORATIONの強みは、紙のカタログを使った通販ビジネスを展開できる点です。

 ECが主役となった近年においても、カタログ媒体は依然として「読まれる」媒体であることがわかっています。紙のカタログは、ハイペースで更新されるECと比較するとスローペースです。

 しかし、ECより紙媒体に慣れている中高年層の顧客にとっては親和性の高い存在です。同社ではECと紙のカタログを効果的に使い分けることで、多様なニーズへの対応ができるよう施策を展開しています。

 また最近では、紙媒体をより有効活用するための手法確立も進んでいます。

 MAツールを使ってより高度な顧客分析を実施し、既存顧客のニーズに合わせたDMの作成と配布をする仕組みを構築したケースがその一例です。顧客のECサイト利用状況を分析し、カゴに入れたまま放置した商品を特定したうえで、商品情報を記載したDMを直接顧客に届けています。

 今後も同社では、リアルとデジタルの融合を独自に展開していくことが期待されます。

近年の株式会社DINOS CORPORATIONの大きな取り組み

 株式会社DINOS CORPORATIONが、近年どのような活動に取り組んできたのかについて確認しておきましょう。

日本で初めてAI電話注文システムを実装

 株式会社DINOS CORPORATIONは、日本で初めてAI電話注文システムを実装したことで注目を集めました。2019年以降、同社では電話応答から商品受注までAIが自動で行う仕組みを実装しています。

 同システムでは高度な音声認識システムを搭載しているため、曖昧な注文でもAIによる受け答えが可能で、現場オペレーターの負担軽減に寄与しているとのことです。

通信販売ブランド「セシール」事業を譲渡

 2020年10月、株式会社DINOS CORPORATIONは通信販売ブランド「セシール」を分社化し、株式会社ニフティに譲渡することを発表しました。

 セシールはインナー類を中心に扱う生活用品通販として顧客からの支持を集めていましたが、競争力の強化やブランド価値向上、そしてより良い商品の提供に向け、同事業の譲渡に至っています。

 譲渡先のニフティ株式会社はネット領域でのノウハウが豊富であるため、今後は同社の強みであるWebを活かした事業拡大が見込まれています。

カタログとアプリを融合して脱Cookie戦略を推進

 インターネットの閲覧履歴を記録できるCookieは便利な反面、プライバシーの観点から現在はその運用が縮小しつつあります。

 そこで株式会社DINOS CORPORATIONでは、このような脱Cookie時代にも対応できるよう、独自のカタログアプリを立ち上げ、紙のカタログの閲覧傾向をCookieなしでデータ化できる体制を整備しています。自社独自の顧客リストを整備し、既存顧客の維持や新規顧客獲得のための分析データ収集にも役立てる予定です。

創業50周年を機にWebメディアをローンチ

 2021年に創業50周年を迎えた株式会社DINOS CORPORATIONは、新たなWebメディア「Everything Has A Story」を立ち上げました。

 同社のコンセプトである「モノがたりで、くらし、たのしく。」を実現する人々が織りなすストーリーに注目し、年齢や職業、バックグラウンドなどが多様な50人のインタビューや、暮らしを楽しくするための情報発信に努めています。

目を通しておきたい株式会社DINOS CORPORATIONのトピックス

 その他、株式会社DINOS CORPORATIONの目を通しておきたいトピックスを以下にまとめています。

2022年10月6日:ディノスが、台湾でサプリメント事業を開始

DINOS CORPORATIONは、台湾においてオリジナルのサプリメントシリーズ「dinos supplement」の販売を開始した。

2022年7月25日:ディノス、サステナブルな家具をECサイトで新発売…林業にも貢献

DINOS CORPORATIONは、日本の木材不足を救う可能性を秘めた素材として近年注目を集める国産早生広葉樹の「センダン」を使用したサステナブルな家具を、ディノスオンラインショップにて発売開始した。

2022年6月3日:ディノスのファッションブランド『DAMA collection』が、ショールーミング型ポップアップショップを表参道・自由が丘に期間限定オープン ~ブランド初の試み!~

DINOS CORPORATIONは、「ディノス」で展開するファッションブランド『DAMA collection』より新作紹介のポップアップショップを、2022年6月17日(金)から6月19日(日)までGUM表参道にて、6月24日(金)から6月26日(日)まで自由が丘ポップアップスペースにて、それぞれ期間限定でオープンする。

2021年7月13日:DINOS、新品インテリアのレンタルサービス「flect(フレクト)」でゲーミングチェアやラグの取り扱いを開始

DINOS CORPORATIONは、「ディノス」で展開している新品家具・インテリアのレンタルサービス事業「flect」のレンタル対象商品として、2021年7月1日(木)よりゲーミングチェアの取り扱いを、7月6日(火)にラグの取り扱いを開始した。

2021年5月20日:カタログ通販事業を展開するDINOS CORPORATIONが社内回収古紙を環境配慮視点で再生した、R100自社再生紙で紙媒体・社内報を発行

DINOS CORPORATIONは、インターナルコミュニケーションの一環で、社内業務で排出されるコピー用紙など古紙を回収し、セイコーエプソンの製品である乾式オフィス製紙機「PaperLab」で再生した、R100自社再生紙による紙媒体の社内報を今年度発行する。

2020年10月19日:ディノスが、『dinos CLOSET service』をスタート ~自宅の外にも収納スペースを持つ、快適な暮らしのための新整理術~

ディノス・セシールは、「ディノス」において、季節の衣類や思い出の品などすぐには使わない“モノ”を、自分専用の外部倉庫に預けることができる収納保管サービス『dinos CLOSET service』を、2020年10月19日より新たに開始した。

まとめ

 株式会社DINOS CORPORATIONは、TV通販をきっかけにカタログ通販事業で成長を果たした企業ですが、時代や顧客の購買行動の変化にともなって、ビジネスモデルを変化させてきました。

 紙媒体の価値だけでなく、EC通販の利点やデジタルデータ活用の重要性にも注目し、紙とデジタルを併用する事業戦略を通じて、ほかの企業にはない独自の価値創出に努めています。

 新しさと昔ながらの親しみやすさを両立させる施策を展開する同社は、今後も成長を続けていく企業といえるでしょう。

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この記事の著者

EC研究所(イーシーケンキュウジョ)

ECについての情報を調べ、まとめてお届けします。

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