セブン&アイ HLDGS.が掲げる、世界最強の「新しいオムニチャネル」
まず鈴木さんは、「小売業を取り巻く世の中の変化」について言及。売り手市場から消費の特徴が「十人十色」の売り手市場、そして「一人十色」の買い手市場第2段階を経て、今また、新たなマーケットの変化が起きようとしていると述べた。
変化は、大きく3つ。
- 高齢化社会による買い物困難者の増加
- 働く女性の増加で、外食・中食への支出が高まり、質の良いものが求められるように
- 単身世帯が今後も上昇し、健康管理や家事サポートのニーズが高まる
これを受け、店舗の減少とネット通販の拡大という形で表れてきた今、小売業に求められるのが「オムニチャネル」である。
セブン&アイ HLDGS.では2013年9月、グループ各社の社長など50名が一斉に米国視察に出かけた。米国オムニチャネルの課題として見えてきたのは、「せっかく来店しても接客ができていないため顧客が帰ってしまうなど、IT技術を磨くのみの企業は業績が上がっていない」ということであった。
また、これまでのオムニチャネルは「単一業態のリアル店舗とネットを融合し、時間と空間の制約を受けないサービス」であり、セブン&アイ HLDGS.では、コンビニ、スーパー、百貨店、レストランなど「複数の業態のリアル店舗とネットを融合する」新しいオムニチャネルに挑戦すると言う。
新しいオムニチャネルの柱となるのは、「売り場」「商品」「接客」の3つだとし、以下のように取り組む。
売り場
国内18,500という店舗数を活かし、ネットで注文した商品を近くのグループ店舗で受け取ることができるようにする。
商品
セブンプレミアムを代表とする質の高いプライベートブランドを活かし、「品揃え」「品質」とものに充実させていくこと。
接客
30万人の販売員をネットでつなげる。店舗では個々の顧客にあった接客をし、来店できない顧客には店員が「御用聞き」に行くなど。
具体的な取り組みとして、すでにさまざまな実験を開始。セブンネットショッピングで買った本をセブン-イレブンで受け取る「街の本屋」など、反響は大きい。
2015年度には「グループすべての商品をすべての店舗で受け取り可能に」、2016年度には「ネットを活用して店舗で便利なお買い物」、2017年度には「店舗をメディア化し、売り場を楽しい空間に」と、リミットも区切られている。
2013年でセブン-イレブンは40周年。式典で鈴木会長は、第2ステージの中核事業として「オムニチャネル」を掲げた。自社の強みを活かし、顧客のためになる「新しいオムニチャネル」で、世界最強のオムニチャネルリテーラーを目指すとして、講演を締めくくった。