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ショールーミングとは?具体的な対策と事例を紹介


 「ショールーミング」とは、ショールームを語源とする顧客の新たな購買行動です。特に実店舗を運営する事業者にとっては、業績に大きな影響を与える要素にもなるため、具体的な仕組みを正しく理解する必要があります。 今回はショールーミングの仕組み対策などを解説します。

 インターネットの発展やスマートフォンの普及によって、消費者の購入行動は変化しています。「ショールーミング」とは、そうしたなかで発展してきた新たな購入行動であり、実店舗のあり方を大きく揺るがす性質を持っています。

 今回は、ショールーミングの基本的な仕組みと想定される課題、具体的な対策のポイントなどついて見ていきましょう。

ショールーミングとは?

店前でスマートフォンを操作する女性

  ショールーミングとは、商品購入において消費者が起こすアクションのひとつです。 ここではまず、ショールーミングとはどのような行為を指すのか、具体的な定義や仕組みについて見ていきましょう。

ショールーミングの定義

 ショールーミングとは、商品を購入する前に消費者が実店舗に足を運んで価格や性能などを確かめたうえで、実際の購入はオンラインで済ませる流れのことを指します。 実店舗を「ショールーム」と捉え、購入ではなく、あくまでも実物を見たり触ったりすることを目的とする点に大きな特徴があります。

 実際の店舗よりもECサイトのほうが安く購入できる、あるいはポイントなどで優遇されるといった場合には、特にショールーミングが行われやすい傾向が生まれます。 また、実店舗を運営する事業者にとっては、実質的な売り上げがECサイトに集約されてしまうという事態につながることもあるでしょう。

ショールーミングが起こる理由

 消費者がショールーミングを行うのには、購入を検討している商品の情報をできるだけ多く集めたいという心理が関係しています。

 スマホの普及により、商品に関するデータは、インターネットを通じて手軽に取得できるようになりました。 しかし、データ上から実際のサイズ感や手触りといった特徴を理解することは難しく、「購入してみたらイメージと違っていた」といった経験をするケースも決して少なくありません。

 そのため、オンラインで情報を得てから店舗に足を運んで実物を確認し、そこで購入するかどうかを決めたり、ほかの商品と比較したりできるショールーミングが重要な役割を担うようになったのです。

 もちろん、ネットショップで安く購入することを目的する場合もありますが、どちらかといえば、購入するかどうかを判断するために実店舗へ向かうといった傾向が強いといえるでしょう。

ウェブルーミングとの違い

 ショールーミングに似ている言葉に「ウェブルーミング」と呼ばれる消費者行動があります。こちらはインターネットで商品に関する情報収集を行い、購入は実店舗で済ませる行動のことであり、ショールーミングとは真逆の意味を持っています。

 いずれにしても、「実店舗で商品を実際に見たり触ったりする機会がある」という点は両者に共通しています。この点において、Web上だけで購入を済ませるオンラインショッピングとは異なる特徴を持っているといえるでしょう。

 ショールーミングもウェブルーミングも消費者と一度は実店舗で接することになるので、オフラインとオンラインを含めた総合的な施策の実行が必要となります。

ショールーミング対策の4つのポイント

ディスプレイした店舗

 ショールーミングの背景には「店舗で購入する必要がない」と考える消費者心理があるため、その点を踏まえて具体的な施策を実行していく必要があります。

1. 実店舗での情報検索をサポートする

 ショールーミングが行われること自体は、個々の店舗や企業による影響ではなく、消費者ニーズの大きな変化による流れともいえます。そのため、ショールーミングそのものを防ぐのではなく、実店舗へ足を運んでもらえる機会を前向きにとらえてみるのも一つです。

 たとえば、実店舗を単に「商品を販売する場所」としてとらえるのではなく、顧客に「情報提供をする場」としてとらえる方法があります。適切な情報を提供することは、店舗での購入につながったり、今後も足を運んでもらえるきっかけになったりすることもあるでしょう。

2. リアルな顧客体験を提供する

 実店舗の強みは、スタッフが直接的に接客を行える点にあります。商品に関するアドバイスやコーディネートといった個別化された顧客体験は、オンラインでは実現できない重要な価値を持っています。

  そのため、ECサイトとの違いを生かすために、顧客体験を充実させるのも有効な方法です。

3. O2Oを展開する

 O2Oとは、「Online to Office」の略語であり、オンラインから実際の店舗(オフライン)へ顧客を誘導する販売促進戦略のことを指します。たとえば、Webサイトから実店舗で使える割引券を発行するなどの方法で、顧客の来店を促すといった具合です。

 また、O2Oには反対にオフラインからオンラインへの誘導も含まれます。こちらは、ショールーミングで店舗に足を運んでもらえる機会を利用して、アプリや企業のWebサイトなどの登録を促すといったパターンが考えられます。

4. オムニチャネルを展開する

 オムニチャネルとは、一言で表すと「どんな販売経路からでも等しくスムーズに商品の購入ができる状態」を指します。

 たとえば、店舗に欲しい商品の在庫がなかった場合、ECサイトから購入してもらえるように情報提供できる状態を「マルチチャネル」と呼びます。オムニチャネルはそこからさらに進展して、ECサイトやSNS、アプリなどで検索した商品の支払いを店舗で行い、受け取りを自宅に指定するなど、購入経路や接点の多彩な組み合わせを用意している状態のことを指します。

 このように、実店舗とオンラインの連携を強めて消費者との接点をできるだけ多く持つことで、販売する機会を増やすのも重要な取り組みのひとつです。

ショールーミング対策の具体的な事例

店前でスマートフォンを操作する女性

  ショールーミングは消費者の自然な心理によって生まれる流れなので、むやみに警戒するのではなく、上手に付き合っていく方法を検討することが大切です。 ここでは、どのような施策を実行できるのか、具体的な企業の事例を紹介します。

ヨドバシカメラ

 大手家電量販店の株式会社ヨドバシカメラでは、店頭商品を使って自社サイトへの呼び込みにつなげるなど、ショールーミングの流れを積極的に販売経路に取り入れています。具体的な施策としては、専用アプリで読み取れる「バーコード値札」が挙げられます。

  バーコード値札を読み取ると、自動的にヨドバシカメラECサイトの該当ページへジャンプし、そちらからでも同様に買い物を進められる仕組みです。特売品などを除けば、店頭とネットで価格は変わらず、ポイントも共通化されているので、混乱せずに購入することができます。

  この取り組みにより、ヨドバシカメラのECサイトは導入した年の売上高が前年比約50%増を達成しました。また、公益社団法人「日本生産性本部」によって調査される顧客満足度調査では、8年連続で「顧客満足度が高いECサイト」第1位にランクインするなど、その後も着実にニーズを拡大しています。

ZARA

 ファッションブランドZARAでは、早くからネットと実店舗連動型のショールーミングストアに関する試みが行われてきました。具体的には専用のアプリを利用することで、さまざまな購入行動が可能になる仕組みです。

  たとえば、気になる商品のバーコードをスキャンしてサイズを選び、試着を予約することができます。試着の予約をすれば、準備ができたタイミングでプッシュ通知が届くため、待ち時間は自由に店内を見て回ることも可能です。

  また、ECサイトへジャンプして、そこから購入手続きを進めることもできるので、手荷物を増やしたくないときにも便利な仕組みとなっています。

THIRD MAGAZINE

 「THIRD MAGAZINE」は、アパレル大手の株式会社メルローズが運営するオンラインショップで、ネット上で気になったアイテムを実際に試着できる場として代官山にショールーミングストアを設けました。

  広くゆったりとした店内では、ソファでくつろいだりお茶を飲んだりしながら、じっくりと試着を楽しむことができます。また、実店舗の強みとして、専用スタッフによるパーソナルコーディネートやアレンジの提案なども受けられるのが魅力です。

  欲しい商品が固まったら、スタッフのサポートを受けながら商品タグのコードを読み取ってオンライン決済を行います。そのため、その日に商品を持ち帰らずに済むのに加えて、迷ったときにはお気に入りリストに入れた状態で帰宅<後に再検討できます。

 また、店内でコードを読み取った商品はすべて送料無料なので、無理に店頭で購入を完了させる必要もありません。

  このように、「実店舗=実物を見てもらう機会」というポイントを突き詰めると、新たな販売戦略を生み出すきっかけが見つかることもあります。

オンラインとオフラインを融合してとらえよう

OMOのイメージ図

 ショールーミングに対する基本的な考え方としては、あくまで顧客目線に立つということが重要になります。実店舗とオンラインとの垣根を取り払いながら両者の連携を強め、顧客の利便性を高めていくことが大切なのです。

  そこで意識しておきたいのが、「OMO」と呼ばれるマーケティング概念です。OMOとは「Online Merges with Offline」の略語であり、「オンラインとオフラインが融合した状態」を意味します。 オンラインを活用したタクシー配車サービスやシェアリング自転車、デリバリーフードビジネス、無人店舗などがOMOの一例です。顧客にとっては、当然ながらサービスの利便性や選択の自由度の高さが大きなメリットとなります。

  「いつでも」「どこからでも」「どんな方法でも」製品やサービスを購入できることは、ユーザーの満足度を高めます。一方、企業側にとっても、「有益な行動データを蓄積できる」「リピーターを育成しやすい」といったさまざまなメリットがあります。

  今後ますますショールーミングが一般化していくのは自然な流れといえるので、OMOの概念を自社の取り組みにも反映させていくことが重要といえるでしょう。

まとめ

 ショールーミングは、「実店舗で商品を見てから購入を検討したい」という消費者の心理によって生まれる購買行動です。事業者からすれば実店舗からECサイトへ売り上げが流れてしまうリスクがあるのは確かですが、一方で「実店舗に顧客が足を運んでくれるチャンス」としてとらえることもできます。

 実店舗ならでは強みを生かしつつ、オンラインとオフラインの連携を強化しながら、効果的に集客や顧客の育成を行いましょう。

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EC研究所(イーシーケンキュウジョ)

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