PKSHA TechnologyおよびPKSHA Communication(以下、併せてPKSHA)は2023年9月6日、三井住友トラスト・ホールディングス(以下、三井住友トラストHD)とともに、大規模言語モデルや機械学習技術を活用した次世代コンタクトセンター構築プロジェクトに着手していると発表。2023年8月に全5領域への開発着手が完了しており、三井住友トラストHDの複数拠点での実装に向けた取り組みを本格始動する。
なお、三井住友トラストHDは、2025年までに全拠点へのAI実装および同年からの営業店での活用開始を目指している。
三井住友トラストHDは、グループ全体で十数拠点のコンタクトセンターを展開している。同社では、デジタル企画部が中心となり、コンタクトセンターでのAI技術を活用した顧客応対品質の向上、オペレーター業務の効率化、コンタクトセンター全体の効率化、データ活用によるサービス改善など、デジタル技術の活用を検討していた。加えて、昨今の対話型AIの進歩やそれを取り巻く技術の変化を受け、多角的な改革が見込めるAI技術の導入が喫緊の課題だった。
こうした状況を受け、同社は、AIソリューションおよびAI SaaSにより企業のDX推進を支援しているPKSHAをAI領域におけるパートナーとし、AI・デジタル技術を駆使したCXのオートメーション実現および拠点を横断した抜本的な改革を目指す「次世代コンタクトセンター構築プロジェクト」に着手した。
2030年を目処に次世代型コンタクトセンターを実現するにあたり、本プロジェクトでは、顧客応答の高度化とコンタクトセンター運営の最適化という観点で、2023年8月までに5拠点を対象に5つのテーマで次の取り組みを開始した。
対話型AIとPKSHA LLMSを活用した顧客応答の高度化
信託業務を専門とし顧客応答を行うコンタクトセンターでは、専門的な知識が求められる上、複雑な問い合わせにも正確かつ適切に回答しなければならない。また、情報セキュリティやプライバシー保護に対する高い意識も必要となる。
これらの応答品質の標準化・高度化および業務効率化を目指し、PKSHAではChatGPTなど対話型AIを活用し、次の3テーマでAI技術支援を実施した。なお、対話型AIの実装には、PKSHA独自のソリューション「PKSHA LLMS」を活用している。
(1)ChatGPTを活用した滑らかな対話体験
通常、顧客の問い合わせにオペレーターは様々な情報を検索しながら応対している。ChatGPTを活用することで、複数のナレッジを横断して検索しながら、文脈を考慮した自然な回答文を生成し表示できる。検索対象とするナレッジは、まず公開FAQから着手。よりリアルタイム性の高いウェブ情報や社内文書など、段階的に拡充を予定している。
(2)ChatGPTを活用しFAQやオペレーターの回答をサポートするナレッジの自動生成
ChatGPTにより規約などのドキュメントや通話テキストといった、独自のデータからナレッジを自動生成。FAQなどの作成・メンテナンスにかかるオペレーターの業務負荷を軽減する。新規に追加されたFAQや優秀なオペレーターの対応ログは、(1)の回答文生成における検索対象として追加される。
(3)生成型音声要約を通じた、受電後の事務作業の効率化
対話内容を自動で書き起こし、要約を行うことで、受電後のオペレーターの情報記録などにかかる業務(アフターコールワーク)を削減する。また、要約する段階で、コンプライアンス観点での確認や情報の整理を実施。会話ログをナレッジ化して、顧客の声(VoC)をサービス改善につなげられる。
コンタクトセンター運営の最適化
PKSHAと三井住友トラストHDは、全センターにおいて顧客対応品質を維持した上での効率的な運営を実現すべく、AIを用いて次の項目の自動化に着手している。
(1)コール量の予測
法律・条令の変更、為替・株価・金利などの外部要因によってコール量の予測がしづらく、オペレーターの配置に過不足が発生する中、AIにより3~6ヵ月先までの入電数を予測することで、応答率の向上や適正配置によるコスト低減、顧客の待ち時間の最小化を実現する。
(2)オペレーターシフトの自動作成
ルールの複雑化によってSV(スーパーバイザー)によるシフト調整・作成にともなう負荷が増加していた。それに対して、AIによりシフトを自動作成することで効率化を目指す。さらにオペレーター希望などを考慮する他、過剰出勤や特定のオペレーターにおけるシフトの偏りをなくし、従業員満足度の向上やコストの低減への寄与、各拠点での管理方法の均一化による、グループ全体での運営の最適化が期待されている。