旭化成とTISは、偽造品問題へのソリューションとなる新しいデジタルプラットフォーム「Akliteia(アクリティア)」を構築し、皮革製品・鞄などのアパレル業界に最適化したサービスを日本国内で開始した。
製品やサービスを最終消費者へ届けるサプライチェーンはさまざまなリスクにさらされている。特に偽造品はアパレル、半導体、医薬品・医療機器、食品に至るあらゆる業界で問題となっている。この問題に対しては、被害実態の定量的把握が難しいことから対症療法的な取り組みに終始せざるを得ず、個社での取り組みに限界を感じている企業も少なくないという。旭化成独自の聞き取り調査においても川上から川下までのEnd to End(E2E)のサプライチェーン可視化を含む、商流全体での取り組みが強く求められている。
この課題解決のために両社は、個社ではなくサプライチェーン全体で偽造品を減らしていくための継続的な仕組みの構築を目指し、偽造品対策をするうえで必要となる偽造品発生状況を定量的に可視化できるデジタルプラットフォーム「Akliteia」を構築した。
「Akliteia」はギリシア語で真実という意味を持つ女神「Aletheia(アリティア)」に、真実を知る“鍵(Key)“を組み合わせた造語。Akliteiaが本物を見極め、偽造品を排除する鍵となり、正しいものだけをユーザーに提供する、という想いが込められているとのこと。
偽造防止デジタルプラットフォーム「Akliteia」について
「Akliteia」は偽造防止ラベル、真贋判定デバイス、ブロックチェーンの3要素で構成されており、「真正性の担保」と「原本性の担保」の両方を実現したプラットフォーム。偽造防止ラベルは旭化成独自の材料と技術を用いて製造された透明なラベルで、サブミクロン解像度の特殊パターン(1ミクロンを下回る細さで描かれた微細なパターン)が印刷いる。
この偽造防止ラベルを対象の製品に実装し、製造工場、物流倉庫、小売店舗/EC倉庫など、サプライチェーンの各拠点で旭化成が提供する真贋判定デバイスによりスキャンすることで、各拠点でその製品が真正品であるかどうかを確認でき(真正性の担保)、偽造品を排除するとともに、真正品の数量を把握することが可能になる。
さらに真贋判定デバイスのスキャン結果は、TISがブロックチェーンプラットフォーム「Corda」を用いて構築したクラウドサービス「Akliteiaネット」に記録される。「Akliteiaネット」は、偽造品の発生状況をサプライチェーン全体で確実に共有する(原本性の担保)ことを可能にし、サプライチェーンのどの段階で偽造品が多く混入されたかなど、被害実態の定量的な把握・可視化が行えるようになる。また、サプライチェーンの変化に応じて情報の共有範囲を柔軟に変更できるため、ビジネスプライバシーも確保可能となっている。
皮革製品・鞄などのアパレル業界向けソリューション
皮革製品・鞄などのアパレル業界においては、ブランドオーナーが継続的な投資を行って育成したブランドが偽造品により脅かされている。偽造品の混入により、偽物を手にしてしまった最終消費者にとっては財産の損失や、ブランドに対する失望につながってシマウ。また一次流通のみならず、中古品の市場である二次流通においてもそのリスクは存在する。世代を超えて製品を受け継いで欲しいブランドオーナーにとっては売上の損失とブランドの毀損となる。
両社は、皮革製品・鞄などのアパレル業界に向けて「Akliteia」の提供を開始。旭化成は製品への偽造防止ラベルの直接実装や下げ札などを用いた実装ができるシステムを提供する。偽造防止ラベルを製品に縫い込むことで、真正品であることを長年にわたり担保できるようになる。
「Akliteia」はサプライチェーン上の個品情報を可視化するプラットフォームとして、まずは偽造品問題に対して皮革製品・鞄などのアパレル製品を対象にサービスを開始し、対象業界を順次拡大していく。また、2023年度には個別の製品の流通状況を把握できるRFID機能付き偽造防止ラベルによる真正品トレースサービスも開始予定となっている。まずは国内で強固なインフラとして育成するとともに、2024年度からは海外でのサービス開始を目指す。