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2024年8月27日(火)10:00~19:15

ECzineニュース

リテールテックの国内市場、2022年は前年比112.6%の2,893億円見込み/富士経済

 富士経済は、小売・サービス業向けのリテールテック関連機器・システムの国内市場を調査した。

リテールテックの国内市場

リテールテックの国内市場

 新型コロナ禍でも事業を維持するために、フルセルフレジや遠隔接客システムなど、非接触対応や少人数のスタッフで業務を行うための投資が進んでいる。従来、データ化できていなかった消費者の属性や店内行動などの可視化、およびデータ利活用に関する品目が伸びている。

 今後は、レジレス決済システムやスマートエントランスなど、次世代ソリューションが伸びるほか、RFIDソリューションや需要予測システムなど、サプライチェーン全体の最適化に関連する品目が伸長することから、2030年の市場は2021年比2.2倍の5,553億円が予測される。

 最も市場規模の大きい決済端末・セルフ操作端末は、非接触決済対応ニーズや少人数での業務対応ニーズが高まり、フルセルフレジやセミセルフレジ、モバイルPOSシステムが伸長している。現在、消費者に新しい購買体験を提供するタブレット端末付きショッピングカートやレジレス決済システムの需要が増加していることもあり、2030年に向けて市場は拡大していくとみられる。

 次世代ファシリティ市場は、ダイナミックプライシングの対応として、電子棚札システムの導入が進んでいる。また、消費者の行動や来店者属性、従業員の行動や商品棚の状況など、幅広い情報をデータ化し、マーケティングに生かす目的として、店舗向け画像解析・可視化ソリューションも普及が進んでいる。

 電子棚札システムは、今後食品スーパーでも導入されて、大きく伸長するとみられる。また、スマートエントランスや次世代サイネージシステム、スマートシェルフなど、小売業者が店舗を活用して広告を配信する次世代ビジネス“リテールメディア”を生み出す品目も大きく伸びるとみられ、2030年の市場は2021年比4.5倍の555億円が予測される。

 次世代オペレーション市場は、新型コロナの影響によって変化した消費者行動を受け、消費者との関係性構築を支援するカスタマーサクセス支援システムが伸長している。また、サプライチェーン全体の最適化を目的に、需要予測システムや自動発注システムの需要が増加しているほか、環境に配慮した事業活動に繋がるエネルギー見える化・省エネ支援システムなど、SDGsや社会課題解決に対応する品目が伸びている。

 今後も、カスタマーエンゲージメントの向上、スタッフとの円滑なコミュニケーションの実現を背景にカスタマーサクセス支援システム、スタッフマネジメントシステムが伸びるほか、環境問題の解決につながるエネルギー見える化・省エネ支援システムなどは大きく伸長し、2030年に向けて市場拡大に寄与すると予想される。

スマートシェルフ【次世代ファシリティ】

スマートシェルフ【次世代ファシリティ】市場推移

 商品を取ると関連する動画が再生され、商品をアピールできる小型ディスプレイやデジタルサイネージを備えた商品棚(シェルフ)、RFIDを商品に付与しデータを在庫情報システムと結び付けて、リアルタイムに在庫情報を把握できる製品を対象としている。

 売り場で得られる消費者の購買行動などのデータを活用して、消費者の属性や行動に合わせた広告やコンテンツの配信を行うことで、ECとの差別化を図ることができるため、2021年はGMS(総合スーパー)や食品スーパー、百貨店など小売店舗での導入が進み、市場は前年比3.0倍となった。

 2025年以降は、スマートシェルフとカメラやAIを連動させ、顧客ごとに商品提案や広告表示、クーポン提示を行い、One to Oneマーケティング(1人ひとに合わせたマーケティング)の要素をより強めることで導入数が増加するとみられ、2030年の市場は2021年比33.3倍の100億円が予測される。

モバイルPOSシステム【決済端末・セルフ操作端末】

モバイルPOSシステム【決済端末・セルフ操作端末】

 専用端末を必要とせず、iPadなどのタブレット端末やスマートフォンなどを使うPOSシステムを対象とする。主に飲食店や小規模な小売店で導入が進んでいる。

 低コストで導入できることや省スペースであること、POS情報がクラウド上にアップロードされ本部がリアルタイムに店舗情報を把握できることなどから、導入店舗が増加し、2021年の市場は大幅に拡大した。

 2022年以降は、通常営業に戻す飲食店や小売店の増加、店舗の新規開店により導入が増えるとみられる。また、チェーン展開を行う大手小売・サービス業者の導入が進むことや、中長期的には駅構内の特設店舗やガソリンスタンドなどマイクロマーケットでの普及も予想されることから、市場は拡大するとみられる。さらに、従来のPOSシステムからの置き換え需要も想定され、2030年の市場は2021年比4.1倍が予測される。

レジレス決済システム【決済端末・セルフ操作端末】

レジレス決済システム【決済端末・セルフ操作端末】

 商品購入時にレジを通過することなく決済が完了するシステムを対象とする。購入者がスマートフォンで自ら商品をスキャンし決済するタイプと、商品棚に設置された重量センサーと天井のカメラなどが購入商品を判断し決済するタイプがある。

 米国で展開する「Amazon Go」に追随する形で、国内大手システムベンダー各社が開発を進めており、大手小売・サービス業者との協業や実証実験を行っている。2021年の市場は大手食品スーパー向けの導入が増えたことから、前年比2.0倍となった。

 このシステムを使用することによって、スタッフの省人化や購買行動分析、情報発信による非計画購買への誘導、マイクロマーケットの創出、新たな顧客体験の提供など、小売・サービス業者は多様なメリットが受けられる。これらのメリットへの認知度が向上することで普及が進み、需要が増加することから、2030年に向けて市場は大きく拡大するとみられる。

カスタマーサクセス支援システム【次世代オペレーション】

カスタマーサクセス支援システム【次世代オペレーション】

 システムベンダーが提供する、One to Oneマーケティングや関係性(カスタマーエンゲージメント)構築・向上のためのシステムを対象とする。消費者ごとにカスタマイズした案内を通知し、省力化とコスト削減を図りながら販促を実現できる。SaaS型の提供が主流である。

 新型コロナウイルス感染症の流行にともなう外出制限やECサイトの利用増加により、小売・サービス業者が消費者とコミュニケーションを図る機会が減少した。そのような状況を受けて、小売・サービス業者が顧客離れ防止や新型コロナ禍でも自社ブランドへのロイヤリティを高めることを目的に導入しており、市場は拡大している。

 現在、エシカル消費(人や社会、環境に配慮した消費行動)など新しい価値観への対応は重要度が増しており、カスタマーエンゲージメントに主眼を置いて販促施策を行う小売・サービス業者は増加している。今後は、小売・サービス業者は、より一層消費者との関係性を重視するようになるとみられ、このシステムの普及が進むことから、2030年の市場は2021年比3.2倍の160億円になると予測される。

調査概要

 本調査では、決済端末・セルフ端末操作11品目、次世代ファシリティ6品目、次世代オペレーション8品目、ロボティクス4品目、ラストワンマイル4品目を対象とした、次世代型ストアを実現するリテールテックの国内市場の現状を明らかにし、将来を展望した。

 また、テクノロジーを駆使し、店舗の位置づけやスタッフの役割を戦略的に変化させることにより、「販売業」から「マーケティング業」への進化を図っている、小売・サービス業の将来像も示している。

調査対象
調査方法

富士経済専門調査員による参入企業および関連企業・団体などへのヒアリングおよび関連文献調査、社内データベースを併用

調査期間

2022年4月~7月

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