東京商工リサーチは、「大手居酒屋チェーン」店舗数調査の結果を発表した。本調査は居酒屋を展開する上場14社の有価証券報告書から、店舗数などを集計したもの。
居酒屋チェーン主要上場14社の店舗数は、2021年9月末(決算期により7月末を含む、以下同)で合計5,958店だった。新型コロナ感染拡大前の2019年12月末は7,200店だったため、コロナ禍で1,242店(17.2%)が閉店したとなった。
2019年12月末の7,200店を起点にすると、1回目の緊急事態宣言が解除された直後の1年3ヵ月前(2020年6月末)にかけ、半年間で554店(7.6%)減少と一気に店舗撤退が進んだ。
その後は、半年前(2021年3月)にかけ、四半期ごとに150~200店のペースで閉店が続いた。ただ、3ヵ月前(89店)、直近(105店)は100店前後の閉店にとどまっている。
コロナ前と比べ減少率が最も大きかったのは、「金の蔵」などを運営するSANKO MARKETING FOODSの49.0%減(108店→55店)。以下、JFLAホールディングス(以下、HD)の43.8%減(843店→473店)、多様なコンセプトの居酒屋を首都圏のターミナル駅周辺で展開するダイヤモンドダイニングの親会社・DDHDの30.3%減(435店→303店)と続く。
14社中、5社がコロナ前(2019年12月)から2割以上店舗が減少している。特に、コロナ以前には首都圏の主要駅前に積極的に出店していた企業で、引き続き撤退を進めるケースが目立つ。
新しい業態の開拓で、今夏以降“増店”に転じる企業も
緊急事態宣言が全面解除された10月1日以降、午後8時までのアルコール飲料の提供が解禁された。その後、10月25日、宴席などを除く少人数に限りアルコール飲料の提供が終日可能となり、居酒屋運営の大手各社でも9月までとは一転し、客足は回復基調にある。
上場各社の月次売上では、前年同期を下回っていた客単価が10月以降、アルコール飲料の提供解禁でテンアライドや鳥貴族HDで増加に転じたほか、9割台まで回復する企業も出てきた。人出の増加とともに客足が次第に回復し、居酒屋の滞在時間や客単価のアップも見込まれている。
ただ、緊急事態宣言が解除されても、各社とも居酒屋業態の新規出店には慎重姿勢を崩していない。店舗数1,500店以上を誇り、「甘太郎」などの居酒屋を展開するレインズインターナショナル(コロワイド子会社)も新規の出店は焼肉「牛角」や、首都圏を中心に出店を加速しているとんかつ店の新規オープンが主だ。また、近年、「鳥メロ」や「ミライザカ」といった居酒屋業態で繁華街やオフィス街に積極出店していたワタミは、2021年3月末、コロナ前の501店から431店まで閉店を加速していた。しかし、その後はブームの唐揚げテイクアウト店の出店や焼肉店への業態転換で店舗数は増勢に転じ、3ヵ月前(同6月末、445店)、直近(同9月末、446店)と増加を見せている。
串カツ田中HDは、コロナ前(273店)から直近(296店)にかけ23店(8.4%)増加している。都心郊外や住宅街など出店立地も多岐に渡り、串カツなどのメニューに特化した業態が他社との差別化にもつながっているようだ。 緊急事態宣言は解除されたが、感染動向をにらみ居酒屋チェーン各社は、まだ新規出店は慎重な姿勢で臨むとみられ、店舗数は一部業態を除き微減傾向で推移するとみられる。
今後の感染状況次第だが、GoToイート再開への期待感から再び、積極出店に転じる企業も現れるとみられ、居酒屋運営各社を取り巻く不透明感は徐々に解消に向かう可能性も出てきた。