マイクロモーメントとは?
マイクロモーメントとは、Googleが定義した言葉で、人が何かを「知りたい」「買いたい」などの欲求が湧き上がったときにスマホやパソコンを使う瞬間のことです。スマホの普及により欲求が起きてから購入するまでの過程が短くなり、その瞬間をマーケティングにどう活かすかを考えるための概念です。
ここでは、マイクロモーメントが注目される背景やマイクロモーメントの具体的な内容について紹介します。
マイクロモーメントが注目される背景
マイクロモーメントが注目される背景にあるのは、スマホの急激な普及です。2021年にフィーチャーフォンやスマホの利用者を対象にしたNTTドコモの調査では、スマホを利用している比率は92.8%と9割を超えています(参考:モバイル社会研究所「スマホ比率・端末所有」)。
これまでは、何かを知りたい、購入したいという感情が湧いてもそのまま消えるか、しばらくしてから調べる、購入するなどの行動に移すという経過をたどっていました。
しかし、スマホの普及により欲求はすぐ行動に移され、検索や購入というアクションへとつながっています。外出先や通勤中など、時間や場所を問わず、商品を調べて購入するという行動が常態化しているのです。
4つのモーメントがある
マイクロモーメントとは、人が「知りたい」「行きたい」「したい」「買いたい」という4つのモーメントで構成されています。これら4つのニーズを満たすためにスマホやパソコンなどのデバイスを使う瞬間です。
4つのモーメントごとにどのような行動をするかを分析することで、マーケティングやコンテンツづくりに役立てることができます。
ユーザーが行動を起こす4つのマイクロモーメント
マイクロモーメントを構成するのは、「何かを知りたい」「どこかに行きたい」「何かをしたい」「購入したい」という4つの瞬間に分類されます。
自社商品・サービスのマーケティングでは、どのモーメントに注目するのかが重要なポイントです。ここでは、ユーザーが行動を起こす4つのモーメントについて具体的な内容を紹介します。
何かを知りたい
購入とは関係なく、なんらかの情報を求めたり、新しい知識を得たりするために調べる瞬間のことです。知らない言葉を聞いたとき、テレビで見た情報をさらに詳しく調べたいというときに検索する行動がこれにあたります。
得られた情報により購入につながる場合もあるでしょう。Googleの分析では、スマホユーザーの66%がテレビコマーシャルで得られたことをさらにスマホで検索するという結果が出ています。
どこかに行きたい
美味しい飲食店や目的の商品を販売しているお店、旅行したい場所など、なんらかの場所を探す瞬間のことです。Googleでは周辺の施設情報の検索ができる機能もあり、その利用で周辺地域の情報を調べるのも「行きたい」の瞬間にあたります。
Googleの調査では、周辺地域の情報をスマホで検索する人はスマホユーザーの8割以上という結果が出ています。
何かをしたい
「何かをしたい」場合に、その方法が知りたくてスマホで調べる瞬間です。料理の作り方を知るためにレシピを探す、ヘアメイクの方法を調べるなど、さまざまなニーズに基づいて検索します。
健康や美容で検索されることも多く、悩みを解決するためにスマホが利用されることも少なくありません。
Googleの調べでは、9割以上の人が「何かをしたい」ためにスマホを利用しています。
購入したい
何かを「購入したい」と思ったとき、商品の詳細や入手方法、口コミなどを調べる瞬間のことです。具体的な商品を購入することはある程度決まっていて、どこで購入するか、どのメーカーが良いか、評判はどうかなどを確認しようとします。
スマホを利用することで、よりお得で間違いのない商品選択ができるようになったのです。
マイクロモーメントを活用する方法
マイクロモーメントをマーケティングに有効活用することで、ビジネスの成長を図ることができます。そのためには、ユーザーのマイクロモーメントに対し最適な情報をすばやく提供できるようにしなければなりません。
方法としては、キーワードで検索上位を狙う、ユーザーの動向を見極める、自社サイトの利便性を高めるなどが考えられます。具体的に見ていきましょう。
検索キーワードで上位を狙う
ユーザーのマイクロモーメントを正確に捉えるためには、よく検索されているキーワードを分析することから始めます。それらキーワードを使って検索上位を狙うことで、マイクロモーメントにすばやく応えることが可能です。
マイクロモーメントに応えることは商品の購入につながる可能性が高くなるだけでなく、企業やブランドの認知にも役立ちます。
ユーザーのニーズに応える
Googleで検索の上位に表示されユーザーのマイクロモーメントを捉えても、有益な情報を提供できなければ狙った成果は得られません。日々変化するユーザーのマイクロモーメントに応えるため、適切な情報を提供することが必要です。
そのためには、市場調査を行うなど、ユーザーがどのような情報を求めているかを把握します。ユーザーのニーズを探るのに有効な方法のひとつに「Googleサーベイ」があり、利用してみるのもよいでしょう。
アプリを活用する
スマホアプリを利用する方法もあります。アプリは目的の画面をダイレクトに表示できるため、ウェブサイトよりも早く表示ができ、ユーザーのマイクロモーメントにすばやく応えることができます。アプリを通してすぐに商品の情報や口コミなどユーザーが求めている情報を的確に提供でき、購買の促進につながりやすいのがメリットです。
また、アプリにはプッシュ通知というメッセージを送る機能があり、ユーザーに対し積極的なアクションを起こすこともできます。
サイトの利便性を高める
ユーザーのマイクロモーメントを捉えることができても、サイトの表示が遅い、読みづらい、スマホ対応の画面でないといった事情があるとユーザーは離脱してしまいます。
サイトを最適化し、利便性を高めることも大切です。スピードを高めてわかりやすく、使いやすいサイトにしなければなりません。
一例として、次の点に留意するとよいでしょう。
- 表示速度をあげる
- レスポンシブ対応にする
- 読みやすい文章にする
- 購入ボタンなど操作しやすいように設置する
リターゲティング広告を活用する
サイトを訪れるユーザーは複数回の訪問後に購入するというデータがあり、自社の製品に興味があるユーザーに向けた継続的な広告表示も効果的です。
そのためには、自社サイトに一度でも訪問したことのあるユーザーに表示されるリターゲティング広告を活用するとよいでしょう。サイト訪問歴のあるユーザーをターゲットに、ピンポイントでアプローチできます。
マイクロモーメントの事例
マイクロモーメントを活用した実際の事例は数多くありますが、動画やアプリ、SNSといった媒体に絞り込み、成功を遂げている例も少なくありません。
これら媒体を上手に使いこなし、「何かしたい」「購入したい」といったユーザーのマイクロモーメントを的確に捉えて高い効果を上げています。それぞれの内容について詳しく見ていきましょう。
動画の活用事例
「したい」というマイクロモーメントに対して効果的なのが、実際にやってみせる「ハウツー動画」です。
化粧品ブランドの「RMK」はオンラインや店頭で商品を購入したい人のため、YouTubeに公式チャンネルを立ち上げています。自社製品を使ったメイクアップやスキンケアなどの方法が動画でわかりやすく紹介されていますが、ただ使い方を映すだけではなく、きれいになったモデルの表情を見せるなど「使いたい」と思わせる工夫をしているのが特徴です。
また、タイトルや説明文など、検索結果が上位表示されるようSEO対策も行われています。
アプリ導入事例
美容関連製品の店舗を展開する「セフォラ」では、実店舗の売り場でスマホを利用する顧客が多いことに着目しました。
売り場で手にした商品のレビューを見る、以前購入した商品の色味を確認するという利用がされていることがわかり、店内でのマイクロモーメントを確実に捉えるため、アプリを開発したのです。店頭でバーコードをスキャンすると、アプリを通じて簡単に製品の情報やレビューが読める仕組みになっています。
これにより店舗での販売が促進され、ブランドのロイヤルティや顧客の来店頻度も高まるという成果を獲得しています。
SNSを利用した事例
スポーツ用品メーカーのナイキジャパンは、InstagramやTwitterなどのSNSでマイクロモーメントを活用しています。ナイキはスポーツを通して「理想の自分になる」ことを応援する企業であり、SNSではそのためのブランディングに取り組んでいるのが特徴です。
Instagramではアスリートがチャレンジするワンシーンを切り取った写真を掲載し、「理想の自分になる」というイメージを表現。Twitterでは文字を主体にして、「理想の自分になる」ための応援メッセージを届けています。
マイクロモーメントとは新しい消費行動に関する考えかた
マイクロモーメントとは、何かをしたいと思ったときにスマホなどで検索する瞬間のこと。「知りたい」「行きたい」「したい」「購入したい」の4つに分類される、新しい消費行動に関する考えかたです。
マイクロモーメントは多くの企業がマーケティングに活かしており、顧客の獲得に成功しています。マイクロモーメントの活用に成功するには、ユーザーのニーズを的確に把握するなど、いくつかのポイントを押さえることが大切です。