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2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

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2021世界の小売業ランキング 上位250社の地域別・商品別動向


 米コンサルティング会社デロイトトーマツグループにより、「世界の小売業ランキング2021」(2019年度実績)が発表されている。今回は、ランキングの概要に加えて、地域別・商品別の動向を見ていきたい。トップ10の特徴はもちろんのこと、上位250位にランクインした日本企業の中でも成長著しい企業、地域別売上高やトップ5の企業、商品セクター別の売上高なども見ていこう。

世界の小売業ランキング売上高トップ10

top10

 米コンサルティング会社デロイトトーマツグループは、今回で24回目となる「世界の小売業ランキング2021」(2020年6月30日までに会計年度を迎える企業が対象)を発表した。これは、Global Powers of Retailingの最新版を日本語訳したレポートで、世界の小売業上位250社を、商品セクター別や地域別、急成長企業50社など、さまざまな視点から分析している。

 概要としては、世界の小売業上位250社全体の総売上高は4兆8,500米ドルで、前年度の4兆7,400億米ドルから1,100億米ドル増加した。対前年度の平均成長率は4.4%となる。平均売上高は194億米ドル、国外事業を行っている割合は64.8%、総売上高に対する国外事業の割合は22.2%、1社当たりの平均事業展開国数は11.1という結果となった。

 ランキングトップ10の顔ぶれは昨年同様ながらも、Amazon.comが前年度から順位をひとつ上げて2位に上昇した点が注目される。トップ10の中でも成長率が13.0%と、ECの好調を反映して唯一2桁を記録したことが順位を押し上げた格好だ。2015年、10位に初ランクインしてから毎年順位を上げている。

 250社中のトップ3は昨年同様ウォルマート(米国)で20年5239.64億米ドル、2位はアマゾン(米国)の1584.39億米ドル、3位はコストコ(米国)の1527.03億米ドルとなっている。上位10社の主な業態は、ハイパーマーケット/スーパーセンターやドラッグストア、ディスカウントストアなどである。

 米国企業7社、ドイツ企業2社、英国企業1社という構成で、米国企業の強さに変わりはない。中でもWalmartが20年トップを独走し続けていることには注目したい。Costcoは中国に初上陸、成長率が7.9%とトップ10の中で3番目に高いものの、為替レートが一部不利に働いたことが影響した。

ランクインした日本企業28社

Background supermarket. Background blur. The concept: consumerism, trade, sale

 ランクインした日本企業は、昨年の29社から1社減の全28社となった。最高位はイオンの14位(前年度13位)で、前年度からランクをひとつ下げている。イオンに続くのは、セブン&アイホールディングス18位(前年度19位)で、上位50位内にランクインしているのはこの2社となっている。

 50~100位にランクインしたのは3社、51位のファーストリテイリング、66位のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスと67位のヤマダホールディングスだ。以下、100~150位までに6社、150~200位までに11社、201~250位までに6社がランクインしている。

 小売業ランキングトップ10同様、ランクインした日本企業28社でも、ハイパーマーケット/スーパーセンターやドラッグストア、ディスカウントストアが多い。それに加えて、大手コンビニや家電専門店、百貨店が名を連ねている。衣料品や家具・インテリアなどを主力商品とする企業も見られる。

 初ランクインしたのは249位のヤオコーだ。埼玉に本社を置き、関東を中心に181店舗を展開する比較的ローカルなスーパーマーケットだが、総菜が人気で、その売上を支える商品政策力が大きく業績に貢献した。

 66位のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスと135位のツルハホールディングスの2社は、売上高ではなく前年度比の成長率でランキングされた急成長企業TOP50にランクインしている。

 パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは、成長率に基づく順位では18位(19.5%)、ドン・キホーテやユニー、長崎屋などを展開する企業だ。大手ドラッグストアのツルハをはじめとして福太郎やレディを傘下に収めているツルハホールティングスは、38位(13.8%)となっている。

上位250社の地域別売上高と成長率

glass globe business. Global Market

 上位250社の地域別売上高(本社所在地にて集計)は、売上規模順に、北米、欧州、アジア太平洋、中南米、アフリカ・中東と続く。

 北米の売上高は2兆2,846億米ドルで前年度比3.6%、企業数は80社。欧州は1兆6,176億米ドルで前年度比4.2%、企業数は87社。アジア太平洋は、7,863億米ドルで前年度比7.1%、企業数は63社。中南米は906億米ドルで前年度比6.2%、企業数は11社。アフリカ・中東は682億米ドルで前年度比3.8%、企業数は9社となっている。

 平均成長率は4.4%だが、アジア太平洋と中南米はそれぞれ7.1%、6.2%という伸びを見せた。2014~2019年度の年平均成長率(GAGR)の場合、平均成長率は5.0%となるものの、アフリカ・中東の9.3%、中南米の8.8%が突出している格好で、アジア太平洋も6.0%と平均を上回っている。

 平均純利益率は3.1%だが、もっとも低いのは、アフリカ・中東の-3.3%で、このマイナスを除いた4地域の中でもっとも低いのはアジア太平洋の2.7%、もっとも高いのは北米の3.6%となっている。

 アジア太平洋地域の63社中、日本企業は28社、中国・香港は14社、韓国は8社、オーストラリアは4社で、残る9社はその他のアジア太平洋地域に属する国だ。

 売上高はオーストラリアの225.46億米ドル、中国・香港の163.32億米ドル、日本の116.40億米ドル、韓国の79.03億米ドル、その他の87.07億米ドルと続き、企業数と比例していないことが分かる。

  アジア太平洋地域の売上高上位5企業が全体に占める割合は36.1%で、JD.com(中国・香港)の9.4%を筆頭に、イオン(日本)9.2%、セブン&アイホールディングス(日本)7.4%、Woolworths(オーストラリア)5.3%、Suning.com(中国・香港)4.7%と続いている。

4つの商品セクター別売上高と成長率

Abstract, Businessman drawing global structure networking connection on growth graph documents, Business strategy and planning concept.

 商品セクターには4つの分類があり、「衣料品・服飾品」と「日用消費財」「ハードライン(家電・日用品等)およびレジャー商品」「その他の商品」に分けられる。

 商品セクター別の売上高は、衣料品・服飾品が4,673米億ドル、日用消費財が3兆1,983億米ドル、ハードライン(家電・日用品等)およびレジャー商品が9,341億米ドル、その他の商品が2,475億米ドルとなっている。上位250社に占める割合はそれぞれ、10%、66%、19%、5%だ。

衣料品・服飾品 日用消費財 ハードライン・レジャー用品 その他の商品
小売り売上高(2019年度) 4,637億米ドル 3兆1,983億米ドル 9,341億米ドル 2,475億米ドル
上位250社に占める割合(2019年度) 10% 66% 19% 5%
企業数 39 135 55 21

 企業数は、衣料品・服飾品が39社、日用消費財が135社、ハードライン(家電・日用品等)およびレジャー商品が55社、その他の商品が21社となっている。

 企業数をさらに5地域に分けて見ていくと、北米では衣料品・服飾品が46.2%、ハードライン(家電・日用品等)・レジャー用品が43.6%と高く、欧州では日用消費財が40.0%、アジア太平洋地域ではその他の商品が47.6%ともっとも高い。

 上位250社での総売上高が高いのは日用消費財だが、平均成長率で見るとその他の商品が6.8%、ハードライン(家電・日用品等)・レジャー用品が6.5%と、上位250社平均の4.4%に2ポイント以上の差をつけている。

 対前年度ではなく、2014~2019年度の年平均成長率(GAGR)となると、ハードライン(家電・日用品等)・レジャー用品が8.7%、衣料品・服飾品が6.2%と250社平均の5.0%を上回る。

 純利益率では、衣料品・服飾品が6.9%、ハードライン(家電・日用品等)・レジャー用品が4.4%と250社平均の3.1%を上回り、衣料品・服飾品の純利益率の高さが際立つ結果となった。

 対前年度で、もっとも成長した商品セクターはその他の商品だが、約5年間の推移を見るとハードライン(家電・日用品等)・レジャー用品の成長率が著しく、売上高も利益率も高いのが衣料品・服飾品ということが読み取れる。

まとめ

Shopping cart on a blue background

 コロナ禍の影響が懸念された小売業だが、「世界の小売業ランキング2021」によると小売業の総売上高は約5兆米ドル、対前年度比平均成長率も4.4%と大きな伸びを見せた。

 同じ小売業でも、衣料品・服飾品や化粧品、生活必需品ではない、ぜいたく品の需要が落ち込む一方で、食料品や日用品、自宅でできる美容・健康用品、自宅で楽しめるエンターテインメントなどは好調さを維持している。

 今回のレポートは、ECや配達・配送サービスの拡充など、コロナ禍による消費者の行動の変化を迅速に捉えた企業が大きく業績を伸ばしたことが分かるものとなった。

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