futureshop、新CMSでもオムニチャネル機能が万全に
次々と新しいサービスが登場するEC業界だが、多くの事業者はパッケージやASPカートを利用してサイトを構築しているため、プラットフォームが対応するまで待たなくてはチャレンジできないという悩みがつきまとっている。
そんななか、2015年に日本のプラットフォームとしてはじめてAmazon Payを実装したことで注目を浴びたのが、フューチャーショップが提供するECサイト構築プラットフォーム「futureshop」だ。その後もLINE、Googleショッピング、カゴ落ちリカバリーメール、リターゲティング広告、Apple Pay、Instagramショッピング、noteと、EC事業者が使ってみたい!と思うサービスをいち早く実装してきた。
そんな同社が、2018年9月にECサイト構築機能を刷新し、新CMS機能「commerce creator(コマースクリエイター)」をリリース。サービス名も「FutureShop2」から改めて「futureshop」とリブランディング。そして2019年秋、オムニチャネルの必須機能とも言える実店舗在庫表示機能が新CMSにも対応した。フューチャーショップ・安原貴之さんは、「アパレルECで必要な機能はほぼカバーできるようになった」と胸を張る。
稼働する店舗のうち3分の1が中堅アパレル企業ということもあり、同業界のECにも精通するフューチャーショップ。同社が考える「アパレルECのあるべき姿」とは? 話を聞いた。
オムニチャネルからOMOへ アパレル実店舗のデジタル化をフォロー
まず、アパレル企業の目下の課題といえば「オムニチャネル」。フューチャーショップでは、2013年9月の時点ですでに、「O2Oポイント共通化ASPサービス FutureShop2X(with CROSS POINT)」をリリース、現在は「futureshop omni-channel」として提供している。
「オムニチャネルという言葉が日本で聞かれるようになったな、くらいの早い時期にリリースしました。現在では、42のアパレルブランド様にご利用いただき、連携している実店舗は900に上ります」
機能は大きく4つ。「ECサイト構築・運用機能」「実店舗在庫表示機能」「ポイント管理・メールマーケティング」「顧客データ分析」である。なかでもニーズが高いのは、「実店舗在庫表示機能」だ。2019年秋に新CMSにも対応し、futureshop利用者すべてが使えるようになった。
「経営者の方にご提案すると『すぐやろう!』と言っていただけますが、実際にはなかなか動きませんでした。というのも数年前は、中堅アパレル企業様の実店舗でリアルタイムに在庫管理ができているところはそう多くなかったからです。それでも、POSを入れ、基幹システムと連携し……と数年かけて整備していただき、最近は実店舗の在庫を表示するECサイトも増えてきました。アパレル企業様からの、実店舗と連携するためのシステム導入の引き合いはここのところ増加しています」
EC市場が成長するにつれ、EC専業のみならず実店舗を持つクライアントから、機能面でもさまざまな要望が寄せられるようになった。アパレル企業からのニーズを大きく分けると、「実店舗と連動した施策を打ちたい」「SNSを活用したい」のふたつに集約できると言う。
「Instagramが浸透するにつれ、SNS経由の売上が目に見えて伸びていきました。そこで優先したのが、『STAFF START(スタッフスタート)連携』です。すでに3社様で稼働し、10社様が稼働に向けて準備しています」
STAFF STARTは、「企業と販売員と顧客のエンゲージメント向上アプリケーション」と銘打ったサービスで、バニッシュ・スタンダードが提供している。実店舗の販売スタッフのさらなる活用を目的に、有名アパレル企業が続々と導入。SNSとの連携はもちろん、「コーディネート投稿機能」「商品レビュー機能」「バイヤー機能」など、さまざまな機能がある。なかでも、連携した企業から好評なのは「販売スタッフの評価が正しく行えること」だそう。
「コーディネートの投稿などそれぞれの機能自体は、futureshopに実装することも可能ですが、STAFF STARTが優れているのは、ただSNSに投稿できるだけではなく、コーディネート投稿経由のEC売上を管理できるため、販売スタッフの評価が行えること。実店舗で働く販売スタッフの中には、コーディネートのセンスが良く、EC売上に貢献している人も少なくありません。実店舗の売上の数字だけでは見えてこなかった実績が、可視化されるようになったことに喜んでいただけています。
多くのブランドが公式アカウントを運用していますが、ファンは個人につくもの。そしてユーザーは、購入した後にどう活用するかの情報を求めている。だからこそ、販売スタッフ個人アカウントでのコーディネート投稿が、これほど求められるわけです。プラットフォームとしては、そのままだと分断されてしまう個人の力を、仕組み化して大きな力に束ねるお手伝いをしたいと考えています」
Instagramで高まったテンションがECに来たときに下がる問題をどうするか
SNSの影響は、ECのプラットフォームの「世界観」を問うまでになっている。
「futureshopでは、『Instagramショッピング機能 (Facebookカタログ連携)』もあり、ご好評いただいていますが、Instagramの集客力が強くなるほど、ランディング先となるECサイトとの世界観の違いが、コンバージョンに大きく影響するようになってきています。いくつかのサイトを比較して安いほうを購入していた時代は終わり、より自身の感覚を重視して購入するようになっていると感じます」
Instagram用のクリエイティブとECサイトのクリエイティブを、きちんと連動できているケースはそう多くない。よって、Instagramで高まったテンションが、世界観の異なるECサイトにたどり着いた瞬間、下がってしまうのだ。商品詳細ページはまだしも、カート以降の決済画面については言わずもがなである。
futureshopが2018年9月にECサイト構築機能を刷新し、新CMS機能「commerce creator」をリリースしたのは、アパレルECとInstagramがより連携していく時代を先取りした決断だったのかもしれない。
切り替えると売上24.31%アップ!新CMS「commerce creator」
「半年間議論に費やし、その後2年かけて開発した」というfutureshopの大掛かりなリニューアル。安原さんいわく、ひとことで表せば「EC事業者様の『それやりたい!』が詰まったもの」になったと言う。
「もっとも重要なのは、EC事業者様が自由にカスタマイズできるフロント部分と、当社が制御する裏側のシステム部分とを、切り分けて作業できるようになったことです。フロント部分は要素を分解してパーツにし、それを組み合わせることで、HTMLタグを書かなくとも自由にページレイアウトができるようになっています。パーツ化することで、バナー変更など日々のサイト運用も簡単になりました。そして、EC事業者様に気軽にデザインを変えていただいても、裏側のシステムには何ら影響はありません。また、当社が裏側のアップデートを行ったとしても、フロントの部分に不具合が起きることもないわけです。拡張性と柔軟性が同居したECプラットフォームだと自負しています」
シーズンごとの新作やセールなど、いかに魅力的で多くのキャンペーンを行えるかが売上を左右する。HTMLなどの知識がそれほどない担当者でも、デザインやパーツを更新できる仕組みは重要だ。一方で、次々に新しいテクノロジーが登場するのもEC業界の特徴であり、システムのアップデートも勝敗を分ける一因だ。まさに、さまざまな機能連携を迅速に行い続けてきた、futureshopならではの仕組みだと言えよう。
「commerce creatorの取り入れかたは2種類あり、デザイン自体をcommerce creator向けに切り替えるパターンと、見た目はそのままで機能だけを使うパターンです。すぐに対応できる後者のパターンを選ばれる企業様が多いのですが、それでも、commerce creatorに切り替えていただくと、売上が24.31%アップしたという結果が出ています(詳細は「コマクリ誕生1周年!スペシャルコンテンツ」にて掲載)。ユーザーがログインしていればカート投入後は2ステップで購入できたり、外出先でスマホ、自宅でPCを使ってサイトを見た時に商品がそのままカートに入っていたり、PCとスマホはレスポンシブ対応しながら、タブレットのデザインだけを変えられるといった細かい改善の積み重ねの結果です。ぜひ、新しいfutureshopでの買い物体験を試していただきたいですね」
自社でどこまでやるか、賢い選択が未来を決める
ZOZOTOWNなどの影響を受け、アパレルECはいつの間にか、日本のECテクノロジーを牽引するようになった。しかしながら、オムニチャネルに成功した企業とそうでない企業の差は大きく開き、いわゆる“ZOZO離れ”もなかなか実現しない。
「日本の中堅EC事業者が抱える大きな課題のひとつは、デジタルマーケティングがまだまだこれからなところだと考えています。これまでも、リアルはショッピングセンター、ECはショッピングモールなど、プラットフォームに出店することで、集客を肩代わりしてもらうやりかたをとってきました。しかしいまや、企業としてデジタルマーケティングに取り組み、個人の力を活用して、全体の売上を向上させていかなくてはならない時代になっています。
一方で、デジタルテクノロジーのアップデートは激しく、1社1社が情報収集し、自社にとって何が必要かを判断することへのハードルは上がり続けています。中堅EC事業者にとっては、エンジニアの雇用という面からも、システムを自社の100%コントロール下に置くのは非現実的だと思います。
futureshopは、日本国内のインターネットを使ってモノを販売する人たちが、市場で戦えるよう支援を行う会社です。今後も、ネットでモノを販売する人たちにとって、『これだ!』と思った機能をいち早くご提供していきます。デジタルの仕組みの部分は当社にお任せいただき、事業者様にしかできない部分に注力していただけたらと考えています」
いち早いAmazon Payの実装後、導入した店舗の売上がアップしたように、LINEやInstagramショッピング連携など、新たな挑戦を続けるfutureshop利用店舗は、今でも売上アップを続けているとのこと。
これからも続くであろう変化に、自分たちが迅速に対応し続けられるプラットフォームを賢く選択すること。それは重要なデジタルリテラシーのひとつであり、いずれ会社の命運を左右する重要なポイントになるのかもしれない。