カート内の7割は購入されない カゴ落ち対策の現状とは
――まず、ECサイトにおけるカゴ落ちの現状について教えてください。
ECサイトのカゴ落ちに関しては、カートに商品を入れたお客様のおよそ7割が結果的に購入には至らず、カゴ落ちによる機会損失額は年商の約2倍以上とも言われています。しかし日本のECサイトにおいては、その対策があまり進んでいないのが現状で、対策できているのはわずか7%程というデータもあります。
一方、欧米ではすでに、カゴ落ちに関するソリューションや、その効果を裏付ける調査結果も多く登場してきています。環境や文化の違いはありますが、MAなどのテクノロジーが日本でも広がってきた今、国内のECもいずれ同じような流れになっていくと思います。
――カゴ落ち対策が高い効果につながるのはなぜですか?
カゴ落ちするユーザーは、もともとその商品を購入するつもりだった人たちです。つまり、見込みの確度が非常に高く、購買意欲が高いユーザーに対する訴求なので、成果につながりやすくなります。カゴ落ちの主な理由として挙げられるのは、下記の3つです。
(1)何かの理由で購入が後回しになっている
(2)何かの理由で中断して忘れている
(3)今はもう買う気がない
今は沢山のECサイトがあり、多くのユーザーが比較検討して購入します。とりあえずカートに気になるものを入れておいて、他のショップを見に行く。そのうちに忘れてしまうケースが(1)です。
(2)はたとえば移動中にECサイトを見て、気になったらとりあえずカートに入れるといった、ブックマークのような使い方です。欲しいタイミングが来たらカートを見直して購入するのですが、そのまま忘れられる場合も多いです。
(3)は、「入力フォームがわかりづらい」、「エラーが出る」、「決済方法が少ない」など、購入する意思はあったものの、こういった理由で離脱してしまうケースです。これはカゴ落ち対策というよりも根本の問題ですから、サイト構成の改善や決済方法の充実、フォームの最適化といった対策が必要でしょう。
(1)と(2)については、カゴ落ちメールによる対策が効果的です。人は1日の70%近くの記憶を忘れてしまうとも言われているので、「買い忘れていませんか?」とリマインドを送ることで思い出してもらうことはとても効果的です。
――確度が高い顧客にピンポイントでリマインドをすることができるので、効果があるんですね。
カゴ落ちメールは、通常のメルマガよりもCVRが4〜5倍になるケースもあり、開封率やクリック率もとても高い。となると、新規獲得のための広告コストをかけるよりも成果をあげやすいので、結果としてコスト効率も良くなります。
またカゴ落ちメールは、現在のメールマーケティングの最重要項目のひとつでもある「One to Oneのアプローチ」が可能になることもポイントです。テクノロジーの進化とともに、パーソナライズされたコミュニケーションはマーケティングのトレンドになっています。メールの一斉配信よりも、自分に関係のあるコンテンツのほうが、ユーザーに見てもらえる可能性が高い。そういった時流にも、カゴ落ちメールは合っているのだと思います。
カゴ落ちメールでもっとも大切なのは「タイミング」
――リマインド方法はほかにも方法があると思いますが、それらと比べても、メールが最適なのでしょうか。
LINE@やウェブプッシュ通知、アプリプッシュなどでリマインドする方法もありますが、「リーチできる母数が少ない」、「そもそもアプリをダウンロードしてもらう必要がある」などの理由から、補完的な施策になりがちです。
たとえばLINE@にお客様のIDと個人情報を紐づけようと思ったら、LINE IDからECサイトへ一度ログインが必要です。ウェブプッシュもブラウザごとの対応が必要になりますし、アプリプッシュの場合も導入ユーザーが多く、かつ頻繁に使ってもらえるようなアプリでなければその効果も感じられないでしょう。
一方メールであれば、大多数のユーザーがスマホでもPCでも見ることができるので、アプローチのハードルが低いです。2018年にジャストシステムが行った調査(※)の中には、ECサイトからの通知方法としてはメールがもっとも多く、LINEやアプリ、SNSやDMなどの3倍以上にのぼるという結果もありました。こういったデータからも、まずはメールで施策を打ち、効果が出てきたタイミングで、より施策を充実させるためにLINE@やウェブプッシュ、アプリプッシュを試してみるのが良いのではないでしょうか。
――効果的なカゴ落ちメールを送るためのポイントを教えてください。
もっとも意識するべきは配信のタイミングです。当社が独自に行った調査によれば、カゴ落ちして1時間後に送った場合と、翌日に送ったメールのコンバージョン数を比べると、1時間後のほうが5倍もコンバージョン数が多い結果に。さらに3日後に送ったメールと比較すると、その数は10倍以上に達していました。メールを送るスパンは、なるべく短いほうが効果が高いということが言えるでしょう。
――メールの内容に関して、何か心がけるべきことはありますか?
メールに商品画像を載せることです。当社でテストをした際にも、商品画像の有無で効果に圧倒的な差が出ました。可能な限りHTML 形式のメールが良いと思います。また画像に加えて、価格や商品詳細ページのURLを掲載したり、直接カートへの動線を作ることなども効果的です。
文面については、セールス色が強すぎるとわずらわしいと感じられてしまうので注意が必要です。たとえば「まだ購入手続きが終わっていません」や「売り切れる前にぜひお買い求めください!」といった表現は敬遠される可能性もあります。「カートに商品が入ったままですがお忘れではないですか?」「何かお困りのことはありますか?」といった、対面での接客を意識したメールのほうがユーザーは違和感なく受け止めることができるでしょう。
※出典:Eコマース&アプリコマース月次定点調査 2018年総集編
まずはカゴ落ちの現状把握から
A/Bテストで自社に合ったタイミングとコンテンツの見極めを
――「Cuenote FC」でも2019年6月からカゴ落ちメールの提供を開始しました。こちらの機能について詳しく教えてください。
Cuenote FCのカゴ落ちメールには、大きく5つの特徴があります。
(1)次世代型HTMLメールエディター搭載
カゴ落ちメールもCuenote FC 同様、次世代型HTMLメールエディターを搭載しています。テンプレート形式で柔軟なレイアウトが組めないサービスも中にはありますが、CuenoteFCの使い勝手の良いエディターは、お客様にご好評いただいています。画像のトリミングなども、すべてエディター上で行うことが可能です。また、HTMLメールが受信できない環境に対しては、テキストメールに変換して送る「マルチパート配信」もあります。
(2)メール内容も柔軟に設定
商品画像ごとに個別にURLを紐づけたり、商品個数も最大5個までメールに掲載できるので、よりユーザー1人ひとりに応じた「One to Oneリマインドメール」の配信ができるようになっています。
(3)在庫と連携した配信抑制
在庫情報と連携することもできるので、在庫がない商品をリマインドメールでプッシュするなどといった、クレームにもつながりかねないミスを防ぐことができます。
(4)受信環境に応じたメール配信が可能
受信環境ごとに最適化したメール配信を行っているため、メールの到達率が高いのも特徴です。厳しいスパム対策がなされている携帯キャリアメール向けにも、各キャリアのルールなどを分析して最適な形で配信するため、確実に届けることができます。
(5)セキュリティ
金融機関など非常に厳しいセキュリティ対策が必要なお客様にも、安心して使っていただけるシステムになっています。また、今回新たに導入されるカゴ落ちメールは、導入が簡単というのも特徴のひとつです。カートにスクリプトを埋め込むだけで、商品の画像などは自動的にCuenote FCのシステムが取りにいくことができます。
――では最後に、こういったCuenote FCの機能をふまえて、カゴ落ちメールを効果的に活用する方法を教えてください。
まずは実際に、カゴ落ちがどれくらい発生しているかを把握することが不可欠です。下記図のように、CuenoteFCでは、売上額、カート放棄された合計額などの数字をもとに、いくらリカバリーできるかを試算することもできます。実際に、ツールを導入するとどれくらいの効果が見込めるのかを最初に確認していただくのが良いと思います。
実際に配信する際は、配信のタイミングと回数の見極めが重要です。カゴ落ちメールは、1回ではなく複数回送ることで、CVRがアップします。メルマガ開封のピークは配信から3時間以内で、3日経過するとほぼ見られなくなり、3週間すぎると効力は0になるとも言われているので、1回目の配信はなるべく早めのタイミングで送るほうが効果的です。
とはいえ、商材などにもよって最適なタイミングは異なります。CuenoteFCではカゴに入れてから最短15分後から配信設定をすることが可能なので、A/Bテスト機能などを駆使しながら、最適な回数とタイミングを見つけていただければと思います。
また、カゴ落ちメールの効果をアップさせるためには、HTMLメールエディターを使ったコンテンツの作りこみも不可欠です。メールの中で5点まで掲載できる商品画像を、どんなサイズで何点掲載するのか。思い切って1点だけを大きく掲載し、ほかの4点はメールに含めないほうが効果があるのか……。メール内のコンテンツについても、こういったA/Bテストを繰り返しながら、どういった見せ方がよいのかを工夫していくことが重要なのではないでしょうか。