CRM先進企業が実施している、LTV向上のためのアクション
まず鈴村さんは、競争が激化するEC市場において、「既存顧客を優良顧客に育て、LTVを最大化するか」が重要なテーマになっていると述べた。先進企業では、すでにいくつかのアクションが実行に移されており、成功に結びついている。たとえば、以下のような施策だ。
顧客属性をベースにしたセグメント・シナリオ
- ユーザー属性ごとにメールの出しわけ(性別・年代/エリア/新規・リピーター離反など)
- プロパー(定価購入)客とセール(値引き購入)客ごとに施策を変える
過去購入履歴をベースにしたセグメント・シナリオ
- 初回購入顧客引上げのため、出荷日起点のステップメールを配信する
- メールへの顧客別レコメンド商品情報の自動挿入(併売、売れ筋、おすすめ商品などから購入商品は除く)→レコメンドメール
行動履歴(メルマガ送信・アクセスログなど)をベースにしたセグメント・シナリオ
- 特定の方に一定期間に一定以上のメルマガがいかないようプレッシャーをコントロール
- アクセスログデータからサイト訪問ユーザーへのターゲティングメール(カテゴリ、ブランド、エリアなど)
- カートに入っている商品が購入されていない顧客へのフォローメール(かご落ちフォロー施策)
起点日をベースにしたセグメント・シナリオ
- 休眠掘り起し施策:ご無沙汰メール(最終購入から180日以上注文のない顧客への施策)
- 初回購入顧客引上げ施策、出荷日起点のステップメール(出荷日から2、3、5、10、15、20、30、40日後……)
鈴村さんは具体的な成功事例として、大手スポーツアパレルメーカーを取り上げた。
「購入履歴ベースのセグメントによるメルマガ施策により、メルマガ経由の売上が前年同月比200%となりました。ご存じのとおり、メルマガは新しい技術ではありません。しかし、この大手スポーツアパレルメーカー様では、既存顧客とコミュニケーションをとるために、魂を込めてメルマガ施策に取り組み、成果に結びつけているわけです」
セグメントメール、やりたくてもできないのはシステムのせい
こうした先進企業の成功事例がある一方で、「95%の通販企業様が、いまだにメールの全配信を行っている」と指摘。だが、メールの全配信を行っている企業でも、上記のようなCRM施策に取り組みたいという要望は持っているとのこと。
それらを実際のアクションに移せていないのは、本来、ITで効率化できるはずの業務を人が手で回しており、新しいことに取り組める環境にないからだ。さらに、既存のCRMシステムにも課題があるからだと言う。
「これまでのCRMツールは、1つひとつの性能は良いのですが、効率よくつながっていないことがわかってきました。それらをつなぐために、結局は人が動いており、ツールを入れたにもかかわらず、効率化ができていません。システムを効率よくつないでもらおうとすれば、すぐに『カスタマイズだ』ということになり、費用や時間がかかるため断念してしまうわけです」
これを解決するために生まれたのが、同社の「カスタマーリングス」だ。ユーザー企業から「単純作業から解放されて、よりクリエイティブな仕事ができるようになった」との感想も出ているという同ツール、既存のCRMシステムとはどこが違うのだろうか。
データ統合からメール配信まで数クリック!これぞ自動化
既存のCRMツールの課題を受け、新たに開発された「カスタマーリングス」は、わかりやすく言えば、流行りのマーケティング・オートメーションツールだ。昨今、バズワードでもある「マーケティング・オートメーション」だが、鈴村さんは以下の3つの機能を持ち、それぞれが途切れず、一連の流れでできてこその自動化だと言う。カスタマーリングスでは、その実現にこだわった。
実際にイベント会場では、データ統合から顧客分析、シナリオ作成、そしてアクションまでカスタマーリングス上で行えることが、デモンストレーションで示された。操作も数クリックで済み、ITリテラシーを問わないユーザービリティになっている。
「さらにカスタマーリングスの良いところは、すべてのデータに人が紐付いているところです。たとえば優良顧客のフォルダから、ある顧客をクリックすると、初回の購入日、購入商品、購入金額、朝型か夜型か、年齢、性別、誕生日といった情報がすべて見られるようになっています。
ECはデータが重要ですが、数字だけを見ていると、顧客の顔が見えなくなります。EC事業者さんは『商売』をやられているので、それではいけない。ぜひ定期的に、自社のお客様がどういう方なのか、見直す機会を作ってください」
顧客を見える化する、カスタマーリングスの分析機能
顧客を見える化するには、分析が重要であり、以下4つの機能はとくに有効だと鈴村さんは紹介していく。
1.流入チャネル別施策/広告効果分析
オン・オフ問わず、どのチャネルから購入されているかがひとめでわかり、広告費を入力すれば自動的にCPAを算出する。
2.リピート購入、継続施策分析
どのタイミングで購入したユーザーが継続率が高いかを分析することにより、過去に打った施策の効果や、追加で引き上げ施策を行うべき顧客グループがわかる。
3.顧客の購買傾向から施策を考えるRFM分析
各企業の定義で顧客をランク分け、「優良顧客」「休眠顧客」などの一覧表に。ランク分けした顧客のリストはワンクリックで取得でき、メール等の施策を容易に行える。実施した施策の成果は、同じ画面で分析可能。
4.キャンペーン反応分析
マーケティング施策を主軸に、顧客ランクごとの効果測定が可能に。「マスからターゲティング戦略へ」を実現するための重要な指標のひとつとなる。
自動化し、数字が見えればCRM施策アイディアが浮かぶ
これらの分析機能を用い、顧客を見える化することが、新たなCRM施策につながると鈴村さんは言う。
「数字やレスポンスを見ることができれば、皆さん、施策のアイディアは浮かんでくるはずです。これまでは、その数字を出すまでの作業に追われていて、本来の『考える』業務に時間を避けていなかった。カスタマーリングスでは一連の作業を自動化できます。PDCAのがんばりどころを間違えてはいけません」
さらに、すべてのリアクション・結果は次の施策へのステップであり、施策を回しながらブラッシュアップしていくことが重要だと述べ、講演を締めくくった。