既存顧客へのCRM施策を強化し、リピートを増やすには
まず山崎さんは、EC事業者を取り巻く環境が、広告等で新規顧客を獲得するのが難しくなっていると指摘。収益アップに取り組むには、既存顧客へのCRM施策を強化し、リピートを増やすことに努めるべきだとした。
リピート顧客を増やすために必要な施策は以下4つだが、その前提となる「顧客分析」にすら大半のEC事業者が手を付けられておらず、メールマーケティングであれば、同じ内容を一斉配信といった施策に甘んじているのではないかと、年間500社に及ぶヒアリングから予想する。
リピート顧客を増やすために必要な施策
- 顧客のタイミングに合わせたアップセル
- 顧客の購買傾向や嗜好に合わせたクロスセル
- 顧客が離れる前に確実に継続
- 重要な顧客は特別扱いして売上アップ
「皆さん、顧客分析やそれに基づく施策の重要性は重々わかっていらっしゃるけれど、日々の仕事に追われて実行に移せていないというところでしょう。しかも、その日々の仕事とは、週・月次のレポート作成、データ抽出、個人情報を扱うことによるメンタル的な負荷といった、『作業』的なものばかりです。
この作業を自動化・効率化し、クリエイティブな仕事に集中していただきたいというのが我々の願いでもあり、そこで注目されているのがマーケティングオートメーションです。BtoB企業のマーケティング施策に利用されている印象が強いですが、私は通販企業こそ、マーケティングオートメーションを取り入れるべきだと考えています」
マーケティングオートメーション導入3つのステップ
山崎さんが所属するプラスアルファ・コンサルティングでは、マーケティング・オートメーションツール「カスタマーリングス」を提供。健康食品やアパレルECなどをはじめ、約250社が利用していると言う。
カスタマーリングスの導入により、それまで一斉配信だったメールマーケティングを、顧客ごとに最適化して出し分ける取り組みをしたことで、メール経由の売上額が150%アップしたアパレルECサイトや、レポート作成作業にかかっていた時間を92%削減することに成功した美容サービス会社などの成功事例を紹介した。
このようにマーケティング・オートメーションツールを導入し、成果につなげるには、具体的に以下3つのステップで進めていく必要がある。
- データ統合と自由なセグメンテーション
- 顧客に合わせた最適なシナリオ&オートメーションによる仕組化と改善
- 効果測定による最適化
次ページから、それぞれの項目ごとに詳しく見ていこう。
1.データ統合と自由なセグメンテーション
最初のステップとして、基幹システムにある「顧客情報」やECサイトの「購買履歴」、キャンペーンやアンケートで取得したデータなど、各所にそれぞれ保管されているものを、カスタマーリングスのデータベースで統合し、「顧客単位」で管理できるように整えていく。
そして、性別、年齢、エリア、ランクなどでセグメントしていくのだが、その都度システム部に依頼する、プログラムを書くといった具合では、EC担当者の作業は軽減されない。カスタマーリングスでは、ボタンをクリックするような直感的な操作でそれができると、デモ画面を示した。
「担当者のスキルに依存せず、誰でもセグメントしやすいインターフェースになっています。例えば『購買履歴』をクリックすると、初回購入日、購入金額、購入商品と数量などを、それぞれの顧客ごとに紐付いて見ることができる。これを元に、例えば直近1年間で2万円以上買った方だけという条件を設定すると、すぐにそのリストが出来上がります」
2.顧客に合わせた最適なシナリオ&オートメーションによる仕組化と改善
セグメントを作ったら、その顧客に合わせた施策を打つのだが、カスタマーリングスでは、データを見ることで最適なシナリオを作り、オートメーションで仕組み化していくことが可能だ。
健康食品を扱うECサイトのステップメールなら、やはり「起点日」を基準とし、サンプル購入後から◯日後、◯◯日後、◯◯◯日後、といった具合に異なる内容のメールを打つシナリオが考えられるだろう。
当然、それぞれのメールで顧客が様々なアクションを行うので、都度、それを踏まえた次のアクションを考えていく必要があるが、顧客に紐付いたデータを見ることで仕組み化し、効率的に運営できるのだ。
同様の仕組みで、カートに入れたものの購入しなかった「カゴ落ち」に対しても、経過日数ごとにレコメンドメールを自動的に送るシナリオを実行していける。
3.効果測定による最適化
当然、施策を打ったら効果測定を行う必要があるが、それが自動で行えるのがマーケティングオートメーションの特徴だ。カスタマーリングスでは、以下のような効果測定機能を備えている。
- A/Bテスト自動最適化機能
- メルマガモニタリング分析
- 配信メール効果分析
例えば「A/Bテスト自動最適化機能」なら、クリック率のより高いパターンに送信数の比率を寄せていくことで、自動的にメルマガを最適化することができるわけだ。
「顧客の見える化」を実現する分析機能
EC事業者は、これまで見てきたようなメールマーケティングを中心としたCRMの施策を自動化していくほか、日々データをモニタリングし、以下のような改善を行っていくべきだと山崎さんは言う。
- 新規獲得(サンプル/本品)から定期購入への引き上げ
- 新規獲得にかける広告媒体効果分析(CPR、CPO)
- リピート顧客の継続率分析とLTV分析により継続施策評価
- 多品種(ブランド、アイテムに加え、サイズ、色など)の場合、商品の賞味期限が短いという特性に合わせたリアルタイムな販売動向分析
通常ならデータ収集、レポート作成、分析、その後の意思決定となり負荷が重い仕事だが、カスタマーリングスが備える「顧客の見える化を実現する分析機能」を使えば、煩雑な作業は大幅に減り、意思決定を高速化できる。
売り上げ推移、顧客ランクシェア、売れ筋商品、注文単価といった、日常的に集計するデータはダッシュボード登録ができ、毎日モニタリングすることができるようになっているのだ。
「ECサイトのカルテのように使っていただきたい」と山崎さん。
「アクションに対するレスポンスが見える化されると、アイデアが浮かぶようになります。それこそがEC担当者、経営者がやるべきクリエイティブな仕事です」
まとめ
通販は、いつでもどこでも自由にショッピングができる「社会貢献度が高い」ビジネスである反面、それを支える現場はアナログな作業が多く、厳しい状況に置かれているという。
「収益をアップしていくには、付加価値を生み出す必要があり、それは人間でないとできない仕事です。『作業』は機械が得意としている分野ですから、ツールを導入するなどして任せてしまいましょう。当社は、EC事業者の皆さんが新しいものを生み出す、成長を生み出す原動力でありたいと考えています」